はじめに 映像制作業はとにかく持ち物が多い職業です。もちろんラップトップのみで全てを完結することは可能ではあるものの、巨大なセットとクレーンを使って作ることも、野菜とピンセットを使って作ることも同様に出来てしまう。出力物に対しての制作手段が無数にあるという映像の特性が、我々の仕事部屋を常に狭くします。それゆえに持ち物が少ない仕事のスタイルには常に憧れがあります。今回珍しく文章を書くことを仕事として依頼されたのでこれは身軽に仕事をする絶好の機会と思い引き受けました。 この連載の目的 この連載の大きな目的のうちのひとつは、制作というプロセスに過度な神秘を見出すことを止めることです。作る道具の進歩や作り方の情報共有の広がりによって、作ることへの障壁は日に日に低くなっています。これによって制作側の人口が増え、制作者の希少性は日々逓減します。一方で、制作プロセスに触れることによって初めて理解できる他