複数の実行中のプログラム(プロセス)が関わる処理では,必ず排他制御が問題になる. 複数のプロセスがあらかじめ許容された同時アクセス数を越えて共有資源を使おうとすれば, どのプロセスにアクセスを許し,どれに許さないかを,決めなくてはならない. これを mutual exclusion problem 日本語では相互排除問題という. この相互排除問題について,最近岩波書店より 「相互排除問題」(以下「本書」とする) というそのものズバリの本が先月2011年4月に出版された. 著者は土居範久先生.日本におけるこの分野の第一人者である. 本書の参考文献リストを見ると,ほとんどの文献が 1990年以前に書かれている.しかし,内容はいささかも古いものではなく, 現在のマルチコア環境,あるいは分散ネットワーク環境において課題となっている 同期と相互排除に関する問題のほとんどを網羅している. 言い換えれば