本書を読んで私がまっさきに思い浮かべたのは、某有名CDショップが使う「NO MUSIC, NO LIFE」(音楽なしじゃ生きていけない)というキャッチフレーズだった。調べてみると、この宣伝文句が使われはじめたのは、もう20年も前の話だという。 私は当初、この文言を「音楽大好き!」「音楽最高!」というメッセージを大げさに強調したものだと考えていた。でも本書を読むと、このキャッチフレーズが文字通りの意味だとわかってくる。つまり、「音楽がなければ、人間は生存できない」という意味だと。音楽が人間の生存にとっていかに不可欠なものか、なぜ私たちは音楽を愛するのか、という謎を本書は見事に解き明かしてくれる。 著者のジョン・パウエルは、イギリスで物理学と音楽音響学を教える大学教授である。この経歴だけを聞くと、いかにも小難しそうな作品だと予想す