岡田希雄 歴史と國文學 26(6): 9-21 (1942) 字鏡集は、部首類辭書としては、慶長の刊本倭玉篇までのものゝ中では最も大部のものであり、字鏡集以前の辭書たる新撰字鏡、世尊字本眞本字鏡、類聚名義抄に比しては最も日本化したものである。しかも異體の字を註記し、韻を示すなどの點では、古本和玉篇や刊本倭玉篇などよりも高級である。其の部首を天象部・地儀部・植物部・動物部・人倫部などゝ云ふ樣に意義分類して居るが、これは無秩序に部首を並べたのでは、某と云ふ部首が何の册に存するかを知るに苦しみ不便であるのを考慮して、檢索に便利であるやうに意義分類したのであつて、字彙・正字通・康熈字典の如き畫數順に並べるのに比べては劣るが、説文式に漫然と並べてあるのに優る事は云ふまでも無い。尤も其の説文でもところ〴〵に意義の似た部首を並べて居る事が指摘できる。だが漢土の部首分類辭書で意義分類せられて居るものとして