私は総務省の情報通信白書でアドバイザリー・ボード(編集委員)を長く務めていますが、毎年のように話題になるテーマとして「なぜ日本はデジタル化がうまく進まないのか」という問いがあります。AIなどの先端情報テクノロジーに対する産業界の取り組みも、電子マネーやシェアリングサービスなどに対する国民の姿勢も、かなり後ろ向き。白書が行っている各国との比較調査などでも明らかです。 なぜ日本は他国よりもデジタル化が遅れているのか これに対する明快な結論は出ていないのですが、いくつかの要因は白書アドバイザリー・ボードの会議でも専門家たちから指摘されています。たとえば、日本人は1950〜60年代の高度経済成長での成功体験があまりにも強かったということ。この時代には公害など環境悪化も起き、「過度な経済成長は人間らしさを失わせる」というような論調がメディアで生まれ、これが低成長時代になっても引き継がれてしまいました