作家、阿部智里。2012年、『烏に単は似合わない』で、阿部智里は松本清張賞を受賞した。史上最年少の20歳での快挙だった。「八咫烏シリーズ」は累積155万部のベストセラー。阿部の描く世界は、和風ファンタジーとしてファンに支持される。子どものころから、想像力豊かだった。今でも、その空想は健在。登場人物と脳内会議をしながら、作品を描き出す。 * * * 高校生の娘を持つ友人からこんな話を聞いた。娘が風呂に入ろうと服を脱いだところ、近くにあった本に気づき手に取った。すると娘はあられもない姿で立ったまま、微動だにせず読み耽っている。数時間後、パタンと本を閉じると愉悦の笑みを浮かべ、バスルームに向かった。友人は半ば呆れながらその本を手にしてみると、阿部智里著「八咫烏(やたがらす)シリーズ」の一冊だったという。 思春期の女性から羞恥心を奪い、寒さを感じさせないほど夢中にさせるストーリーテラーの阿部智