一口に「嗜好品」と言っても、土地や文化が違えば、そのあり方は大きく変わる。 わかりやすい例を挙げれば、日本では煎茶や抹茶が親しまれてきた一方、近代以降のイギリスやインドでは紅茶が主流。飲み方も、国や地域によって大きく異なっている。 なぜ嗜好品のあり方は、こうまでも多様なのだろうか。 「嗜好品は、人間が生を営んでいくうえで大事にしている、目に見えないものとつながっている」 そう語るのは、神話学/芸術人類学を研究する、石倉敏明さんだ。 石倉さんはインド・ネパールや日本の東北地方を中心に、国内外の各地をフィールドワークしながら、「山の神」研究をはじめとした神話学を研究してきた。 さらには、アーティストとの共同制作などを通じて芸術を実践しながら、自然と文化の垣根を越えて「人間とはなにか」を研究する芸術人類学にも取り組んでおり、2019年の第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館では美術家