新たな競合の登場は、いつでも波風を立てるものだ。最近タクシー業界に参入した米ウーバー(Ubar)。この会社の面白いところは、ライバルのタクシー運転手を怒らせているのと同じくらい、一部の顧客を苛立たせているらしいという点だ。問題となっているのはウーバーの割増し課金システム。週末や祝日には乗車料金が通常の数倍になることもある。これに対して、こんな詐欺まがいの商法をしていては、いずれ顧客が離れ、事業は傾くだろうという批判が出ている。 だがミクロ経済学の観点から言うと、ウーバーの事業モデルには欠点こそあるものの、そのダイナミックな料金設定は歓迎されるべきものである。タクシー業界には長年、刷新が必要だった。理論の上では、この市場に参入するのは簡単だ。車両と運転免許さえあればいい。そして新人運転手たちは原価ぎりぎりに料金を設定する――。だが多くの都市において、タクシー業界の現状は競合上の理想とはほど遠