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ブックマーク / book.asahi.com (87)

  • イスラエルはどうしてあんなにひどいことができるの? 早尾貴紀——後編|じんぶん堂

    記事:平凡社 パレスチナ・イスラエル問題に関するオンラインセミナー「パレスチナ連続講座」に登壇する東京経済大学教授の早尾貴紀さん 書籍情報はこちら 《前編はこちらから》 ホロコーストを経験したユダヤ人とイスラエル 「ホロコーストを経験したユダヤ人が、どうしてジェノサイドをする側になるのか」という質問をよく受けます。そのことについて、2023年に日でも公開された『6月0日 アイヒマンが処刑された日』という映画を例にお話しします。ナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンは1960年に逮捕され、62年にイスラエルで処刑されました。映画ではその死体を焼却する炉を作る過程が描かれます。映画に登場する鉄工所の社長、作業員、臨時に雇われた少年工は、それぞれ、「イスラエル国民」を構成する3階層のユダヤ人グループに属しています。 1つめのグループは、イスラエルの建国運動を中心的に担った人たちです。ヨーロッパ出身で

    イスラエルはどうしてあんなにひどいことができるの? 早尾貴紀——後編|じんぶん堂
  • 林芙美子文学賞・大原鉄平さん 26年間で1万枚書いてきた47歳が掴んだ〈小説家のなり方 中年編〉 連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」#12|好書好日

    林芙美子文学賞・大原鉄平さん 26年間で1万枚書いてきた47歳が掴んだ〈小説家のなり方 中年編〉 連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」#12 大原鉄平さん=撮影・武藤奈緒美 第10回林芙美子文学賞 受賞作「森は盗む」 工務店に勤める「私」こと上湖(うえこ)は、施主の家庭を想像してはパソコン上で設計プランを練っている。工務店には先代棟梁の息子であり、腕利きの大工であるよっちゃんと、工務店の社長、毎日手の込んだ弁当を作ってくる事務の小林さんがいる。よっちゃんは子どもの頃、森の中に建つ「家」に入れられていたという。上湖もまた、子ども時代、周りとは違うお弁当をべていた。上湖はいつしか、建築プランの中によっちゃんや小林さん、自分を登場させるようになる――。 小説は僕の松葉づえ 大阪在住の大原さんは飛行機に乗ってやってきた。恥ずかしそうに差し出した名刺には「小説家 大原鉄平」とあった

    林芙美子文学賞・大原鉄平さん 26年間で1万枚書いてきた47歳が掴んだ〈小説家のなり方 中年編〉 連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」#12|好書好日
  • 【特別版】芥川賞・九段理江さん「芥川賞を獲るコツ、わかりました」 小説家になりたい人が、芥川賞作家になった人に聞いてみた。|好書好日

    九段理江さん=撮影・武藤奈緒美 第170回 芥川龍之介賞受賞作「東京都同情塔」 舞台は、ザハ・ハディドによる国立競技場が世論に翻弄されることなく完成した、もう一つの東京。犯罪者を同情されるべき人々=「ホモ・ミゼラビリス」として手厚く扱うべきという社会学論が一世を風靡し、まるでタワマンのような刑務所「シンパシータワートーキョー」が建てられることに。建築家・牧名沙羅は、それが当に建てられるべきなのか、生成AIやナンパした美しい青年・拓人と言葉を交わしながら自身の考えを構築しようとするが――。 読むより先に書いていた 「私、よく人間ぽくないって言われるんですよ。小さい時から親にも、りえちゃんは人間じゃないからねって言われてました」 そう言って逆光のなか悠然と微笑む九段さんは、たしかにVRのようだ。 受賞歴も常人離れしている。2017年、18年と2年連続で文學界新人賞の最終候補に。2021年で見

    【特別版】芥川賞・九段理江さん「芥川賞を獲るコツ、わかりました」 小説家になりたい人が、芥川賞作家になった人に聞いてみた。|好書好日
  • 「評伝クリスチャン・ラッセン」/「とるにたらない美術」 美術に見下された者たちの逆襲 朝日新聞書評から |好書好日

    とるにたらない美術 ラッセン、心霊写真、レンダリング・ポルノ 著者:原田 裕規 出版社:ケンエレブックス ジャンル:芸術・アート 「評伝クリスチャン・ラッセン」 [著]原田裕規/「とるにたらない美術」 [著]原田裕規 ラッセン、と切り出して今どれだけの読者が具体的なイメージを持つのだろう。イルカたちが楽園のような海で自由に泳ぐ様を描いた画家、と書いても知らない人にはわからないかもしれない。けれども、ひと頃の日でラッセンの絵が一世を風靡(ふうび)したのは紛れもない事実だ。 だからこそ意外に思う人がいるかもしれないけれども、日の美術界でラッセンは長く不評を買ってきた。しかも専門的な美術関係者ほどそうだった。一時、問題視された強引とも受け取られかねないセールス手法に限らない。絵の内容そのものがはなから評価に値しないというのだ。 なぜ?と感じる人もいるだろう。多くの人が見てハッピーになる絵のど

    「評伝クリスチャン・ラッセン」/「とるにたらない美術」 美術に見下された者たちの逆襲 朝日新聞書評から |好書好日
  • 世界17ヵ国で翻訳・出版の話題のバンド・デシネ『LA BOMBE 原爆』著者インタビュー【前篇】——広島への原爆投下までを克明に描く|じんぶん堂

    じんぶん堂TOP 歴史・社会 世界17ヵ国で翻訳・出版の話題のバンド・デシネ『LA BOMBE 原爆』著者インタビュー【前篇】——広島への原爆投下までを克明に描く 記事:平凡社 1945年8月6日、広島に原子爆弾が投下された。原爆ドーム(当時は広島県産業奨励館)が激しく燃え上がる。 書籍情報はこちら 『LA BOMBE 原爆』(上下巻、脚=ディディエ・アルカント、L.-F.ボレ、絵=ドゥニ・ロディエ、翻訳=大西愛子・平凡社) 日で刊行されるという意味 写真左より、脚を担当したディディエ・アルカント、L.-F.ボレ、絵を担当したドゥニ・ロディエ。 ボレの写真のみ© Fab Jouss ——この7月、日で『LA BOMBE 原爆』(上下巻)が刊行されます。日は世界で唯一の被爆国です。日で刊行されるにあたり、現在、どのようなお気持ちでしょうか。 ディディエ・アルカント(以下、アルカン

    世界17ヵ国で翻訳・出版の話題のバンド・デシネ『LA BOMBE 原爆』著者インタビュー【前篇】——広島への原爆投下までを克明に描く|じんぶん堂
  • 第二次世界大戦下の女性たちの労働を描いた《大東亜戦皇国婦女皆働之図》が伝えること——『女性画家たちと戦争』著者インタビュー(前篇)|じんぶん堂

    じんぶん堂TOP 文化・芸術 第二次世界大戦下の女性たちの労働を描いた《大東亜戦皇国婦女皆働之図》が伝えること——『女性画家たちと戦争』著者インタビュー(前篇) 記事:平凡社 『女性画家たちと戦争』の著者、吉良智子氏(写真:平凡社編集部) 書籍情報はこちら 『女性画家たちと戦争』吉良智子著、平凡社 「戦争画」と「ジェンダー」。“厄介者”を研究対象に ——毎年、数多くの美術関連書籍が刊行されておりますが、戦争画をテーマとした書籍は数少ないですよね。女性画家のだとさらにその数は少なくなります。そういう状況でも「戦争画」と「女性画家」を研究しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。 吉良智子:今から30年ほど前のことです。私は大学2年生でした。授業の予定を立てているときに、たまたま木曜日の2限が空いていたんです。その時間を埋めるために何か面白い授業はないかなと、シラバスをパラパラと見ていて

    第二次世界大戦下の女性たちの労働を描いた《大東亜戦皇国婦女皆働之図》が伝えること——『女性画家たちと戦争』著者インタビュー(前篇)|じんぶん堂
  • 綾辻行人さん×FF14・FF16吉田直樹プロデューサー対談 ミステリもゲームも「驚き」が命|好書好日

    綾辻行人さん(左)と吉田直樹さん=吉村智樹撮影 ミステリ小説で知った「驚き」 ――吉田さんは綾辻さんが書く小説の影響を強く受けていると聞きました。 吉田直樹(以下、吉田): そうなんです。中学時代に図書館で綾辻さんの『十角館の殺人』を借りて読ませていただいたのが始まりです。とにかく、「こんなに緻密なミステリが書けるものなのか……」と驚きました。常識をひっくり返されるというか、展開は予想するものの、結末に近づくにつれことごとくその予想が「気持ちよく」外れていく。あのときに受けた衝撃とカタルシスはいまだに忘れられないです。僕もゲームの脚を書いたり校正を行ったりしますが、プレイヤーに与えたいのは「驚き」です。そこは綾辻さんから受けた影響がめちゃくちゃ大きいのです。 綾辻行人(以下、綾辻):思わぬところで、自分が書いてきた作品がいろんなクリエイターさんたちに影響を与えている、と知る機会が増えまし

    綾辻行人さん×FF14・FF16吉田直樹プロデューサー対談 ミステリもゲームも「驚き」が命|好書好日
  • 重版未定本の復刊を実現、売り切った書店員の情熱:書泉グランデ・大内学さん|じんぶん堂

    記事:じんぶん堂企画室 「書泉グランデ」書店員・大内学さん 書籍情報はこちら 『中世への旅 騎士と城 』の魅力 の街・神保町に店を構える「書泉グランデ」は、1948年(昭和23年)創業の老舗書店。鉄道、アイドル、格闘技をはじめとした趣味人向けの専門性の高い書籍を網羅的に取り揃えている。 今回、重版されたのは『中世への旅 騎士と城 』(白水uブックス)(著者:ハインリヒ プレティヒャ、翻訳:平尾浩三)。中世ヨーロッパの騎士たちの日常生活などを、豊富なエピソードをまじえてわかりやすく解説している。日では1982年に翻訳刊行され、2010年に白水uブックスで復刊された。大内さんが同書に出会ったのは、中学生時代だったという。当時、初めて読んだ感想を次のように語る。 「ゲームライトノベルの多くが中世ヨーロッパの世界を下敷きにしていました。例えば、友達同士で会話しながら遊ぶボードゲーム・テーブル

    重版未定本の復刊を実現、売り切った書店員の情熱:書泉グランデ・大内学さん|じんぶん堂
  • 最密最速の天才 津村記久子さんが出会った岡田あーみん「こいつら100%伝説」|好書好日

    先日の地震で、友人が深く関係している大阪北部の施設について、断水などは大丈夫か、不便などはないかと連絡すると、返信の件名が「フフフのフ」だった。最近建て替えをしたらしく、無事だったらしい。それまでは真面目なやりとりをしていて、メールの内容もしっかりしたものだったが、どうしても件名で『こいつら100%伝説』のゲストキャラクターである、日系2世の霊媒医師発禁スレスーレさんの名台詞である「フフフのフ」を言わなければいけない友人の業のようなものを感じた。 それほどまでに、わたしたちの世代の一部の人間には、岡田あーみんの作品は影響がある。「魂に刻まれた」としか言いようがないほどに。準拠集団の表明や見返りを抜きにした、こちらが信仰だけをひたすら捧げる神と言える表現者がいるのだとしたら、わたしと友人には岡田あーみんだ。わたしたちはおばあちゃんが般若心経を暗記していたように「フフフのフ」とか「マカペー」と

    最密最速の天才 津村記久子さんが出会った岡田あーみん「こいつら100%伝説」|好書好日
  • 「君たちはどう生きるか」宮崎駿監督が、新作映画について語っていたこと。そして吉野源三郎のこと|好書好日

    宮崎駿監督の新作「君たちはどう生きるか」ポスター=スタジオジブリのTwitterより 「私自身、訳が分からない」 「おそらく、訳が分からなかったことでしょう。私自身、訳が分からないところがありました」。 2023年2月下旬、東京都内のスタジオで上映された、「君たちはどう生きるか」の初号試写。米津玄師の歌うピアノバラードが流れ、エンドロールが終わった瞬間、灯りが点き、宮崎駿監督のコメントが読み上げられた。 客席から軽い笑い声が漏れた。私もその一人だった。あまりの展開の速さと、盛り込むだけ盛り込まれた情報を消化しきれず、茫然と座り込んでいたが、その言葉で我に返った。 これは「宮崎アニメ」の集大成なのか、吉野源三郎の著書『君たちはどう生きるか』の再解釈なのか。とにかく、1回見ただけではとても全容を把握できなかった。 「自分のことをやるしかない」 今回の作品は、公開前のプロモーションも、メディア関

    「君たちはどう生きるか」宮崎駿監督が、新作映画について語っていたこと。そして吉野源三郎のこと|好書好日
  • 差別や偏見を含んだ古典、新訳やリメイクが与える新たな視点 鴻巣友季子の文学潮流(第3回)|好書好日

    先日、演劇界のアカデミー賞と言われるトニー賞が発表されたが、ミュージカル作品賞に禁酒時代のシカゴを舞台にした「お熱いのがお好き」が候補入りしていて驚いた。あのマリリン・モンロー演じる白人の、ブロンドの、美女の、セックス・シンボルが旋風を巻き起こしたコメディ映画(1959年、ビリー・ワイルダー監督)の舞台化。しかもギャングに追われた主役のバンドマン2人が女装して女性だけの楽団に入団する。いろいろな意味で差別と偏見(とみなされうるもの)の地雷原みたいな内容なのである。 まだ観劇できていないが、当世のブロードウェイらしいリメイクに仕上がっているようだ。モンローの演じたシュガーには黒人の女優が、バンドマンのジェリーにはノンバイナリーの俳優が配され、同性婚の描き方を含め、ジェンダーとセクシュアリティの揺らぎが表現されているらしい。 いまアメリカを真っ二つにしている論点というと、ジェンダーや妊娠中絶を

    差別や偏見を含んだ古典、新訳やリメイクが与える新たな視点 鴻巣友季子の文学潮流(第3回)|好書好日
  • 爪切男さんインタビュー 私小説の新星がさらけだす、屈折した恋と愛の記憶|好書好日

    文:土佐有明 写真:家老芳美 爪切男(つめ・きりお) 1979年、香川県生まれ。文学フリマでの同人誌制作や自身の個人ブログが雑誌編集者の目に留まり、『日刊SPA!』で連載を開始。自身の恋愛体験をもとにした私小説『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で格的に作家デビュー、連続テレビドラマ化もされた。『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、『働きアリに花束を』(扶桑社)が発売中。4月26日には『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)を刊行予定。 「妄想力」が鍛えた表現力 ――同人誌即売会「文学フリマ」で『夫のちんぽが入らない』のこだまさんらとユニットを組んで活動していて、頒布した同人誌『なし水』やブログは、行列をなすほどの人気ぶりだったそうですね。 きっかけはTwitterだったんですよ。元々名前は知っていたこだまさん、乗代雄介さん、たかたけしさん(漫画家)も同じ時期にTwitte

    爪切男さんインタビュー 私小説の新星がさらけだす、屈折した恋と愛の記憶|好書好日
  • 文學界新人賞・市川沙央さん 「なにか職業が欲しかった」ままならぬ体と応募生活20年の果てに 「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」#1|好書好日

    第128回文學界新人賞 受賞作品「ハンチバック」 親が遺したグループホームで裕福に暮らす重度障害者の井沢釈華。Webライター・Buddhaとして風俗体験記を書いては、その収益を恵まれない家庭へ寄付し、Twitterの裏垢では「普通の人間の女のように子どもを宿して中絶するのが私の夢」と吐きだす。ある日、ヘルパーの田中に裏垢を特定された釈華は、1億5500万円で彼との性交によって妊娠する契約を結ぶ――。 療養生活という名の引きこもり 取材は市川さんが両親と暮らす自宅で行われた。お母さんに案内された部屋で、市川さんと目が合った瞬間、その射貫くような眼差しに気圧された。市川さんは筋疾患先天性ミオパチーという難病により、人工呼吸器を使用しているため、発話に大変な体力を使い、リスクもある。そのため取材も、あらかじめメールで回答をもらい、補足のみ、最小限お話いただく形をとった。 目力の強さはそれが市川さ

    文學界新人賞・市川沙央さん 「なにか職業が欲しかった」ままならぬ体と応募生活20年の果てに 「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」#1|好書好日
  • 特別公開:坂本龍一さん3万字インタビュー後編「この日本という国では『やめる』という決定を誰もできない。撤退ができない国なんです」|じんぶん堂

    記事:平凡社 坂龍一さん(2013年5月撮影) 撮影:榎佳嗣 書籍情報はこちら 【前編はこちらから】特別公開:坂龍一さん3万字インタビュー前編「音楽の大きなテーマは、亡くなった者を悼むということ」 震災のことは、一日も忘れたことはない ――東日大震災からすこし時間が経って(インタビュー時は2013年)、社会が平熱に戻った感じがします。被災地では、被災地だからこそ「ようやく震災や原発のことは考えず穏やかに過ごせる時間が増えた」という方もいるようですね。 坂:うーん……。僕は、忘れるという感じはまったくありません。 ――時間が経つにつれて、ふだんの暮らしと「変えていかなくちゃ」という気持ちとをどう両立させていくのかが大切なテーマだと考えるようになってきました。安倍政権に代わってから「原発を動かそう」というムードが強まっていますよね。けれど「どんなふうに暮らしていけば、おなじことを二度

    特別公開:坂本龍一さん3万字インタビュー後編「この日本という国では『やめる』という決定を誰もできない。撤退ができない国なんです」|じんぶん堂
  • 特別公開:坂本龍一さん3万字インタビュー前編「音楽の大きなテーマは、亡くなった者を悼むということ」|じんぶん堂

    記事:平凡社 坂龍一さん(2013年5月撮影) 撮影:榎佳嗣 書籍情報はこちら バッハの「マタイ受難曲」を聴くと、まさに「音楽に救われる」という感じがする ――東日大震災と原発事故はだれしもにとってたいへんショッキングなできごとだったと思います。坂さんはどうお過ごしでしたか。 坂龍一:うーん……、直後はやっぱり、音楽を聴く気になれませんでした。 ――音楽家の方でも、音楽が聴けなくなるんですか。 坂:ええ、(音楽家には)きっとそういう人は多いと思いますよ。それで、ずいぶんと経ってから……、ひと月ほど経ってからかな、やっと聴いてみようかなと思ったのは。 ――そのときに、慰めや励ましになったもの、あらためて立ちかえったものってありますか。 坂:それは、やっぱりどうしてもバッハの「マタイ受難曲」です。僕のまわりの音楽好きでも同じようにいう人は多いけれど、やっぱり特別な曲ですね。「また

    特別公開:坂本龍一さん3万字インタビュー前編「音楽の大きなテーマは、亡くなった者を悼むということ」|じんぶん堂
  • 長谷敏司さん「プロトコル・オブ・ヒューマニティ」 AI義足とロボットのダンスが問う「人間性とは」|好書好日

    AI(人工知能)とロボットによるダンスで、観客に人間性を伝えることはできるのか。人間性とはいったい何なのか――。作家、長谷敏司(さとし)さんの『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』(早川書房)は、そうした問いに正面から向き合うSF長編だ。2050年代の未来を舞台に、誰も見たことがないダンスの可能性を突き詰める。その先に見えたのは、生身の肉体と人生の重さだった。 物語は、コンテンポラリーダンスの気鋭として活躍が期待されていた主人公の護堂恒明(ごどうつねあき)が交通事故で右足を失い、絶望するところから始まる。彼は友人の提案でAI制御の義足を身につけ、ロボットと人間が共演する新たなダンスカンパニーの旗揚げに加わることで再起をはかろうとするが――。 執筆のきっかけは、16年に実際にあったダンス公演だった。「大橋可也(かくや)&ダンサーズ」とのコラボレーション企画で舞台にあわせて小説を書いたが、「どう

    長谷敏司さん「プロトコル・オブ・ヒューマニティ」 AI義足とロボットのダンスが問う「人間性とは」|好書好日
  • 「誰も望まなかった戦争」が、なぜ起きたのか?[後篇] フレデリック・テイラーさん(英国の歴史家)|じんぶん堂

    記事:白水社 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が進む今、多大な示唆に富む書。フレデリック・テイラー著『一九三九年 誰も望まなかった戦争』(白水社刊)は、第二次世界大戦の開戦前夜1年間に注目し、英独の「普通の人びと」の日常生活と心情、その変化を活写する。【口絵16頁】 書籍情報はこちら [前篇はこちら] 1939年8月の第3週の終わり、ヒトラーはこれまでで最も鮮やかで予想外の、そして混乱をもたらす芸当をうまくやってのけた。8月22日の『フライブルク新聞』の夕刊では、第1面に全段抜きの大見出しを掲げて、次のように宣言した。「大ドイツの外交、国際社会に一大センセーションを巻き起こす世界史的重要な事件」と。 ドイツとソ連のあいだに不可侵条約が締結されたことは、確かに世界的なセンセーションであった。だが、大多数のドイツ人は、この発表を聞いてそれ以上に衝撃を受けた。彼らは6年半ものあいだ、モスクワこ

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  • 基地のある風景――小泉悠さん・評『世界の基地問題と沖縄』|じんぶん堂

    記事:明石書店 千葉県松戸市六実(むつみ) 書籍情報はこちら のっけから私事で恐縮であるが、評者は千葉県松戸市のはずれにある六実(むつみ)地区で生まれた。海上自衛隊下総航空基地と陸上自衛隊松戸駐屯地のちょうど真ん中に位置し、頭上にはいつもP-3C哨戒機やAH-1S対戦車ヘリコプターが飛んでいるという土地である。さらに南東部には陸上自衛隊習志野駐屯地があり、晴れた日には空挺団のパラシュートが輸送機からパラパラと蒔かれていく様子が小学校の窓からよく見えた。 こうした環境で育った筆者にとって、基地というのはごく普通に存在するもの――日常と非日常で言えば「日常側」の風景であって、そこに何か特別なものを感じたことはあまりない。おそらく多くの六実住人たちにとってもこれは同じであったのだろう。基地が何らかの政治的問題として扱われることはまずなかったし、その存在が意識されること自体があまりなかったように思

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    laislanopira
    laislanopira 2022/09/08
    戦争に行かない我が軍である自衛隊基地の存在の薄さ / もし米軍基地が沖縄に集約されず、日本本土や首都近辺に我が物顔で広がっていたら、日本人の日米同盟観や地位協定ももっと違ったものになったかもしれない
  • tofubeatsの知を拡張する愛読書 知らないより知ってたほうが、面白い確率が高い|好書好日

    tofubeatsさん tofubeats(とーふびーつ) 1990年生まれ神戸出身のラッパー/プロデューサー。中学時代から音楽活動を開始し、高校3年生で国内最大のテクノイベント「WIRE」に最年少で出演。代表曲は「朝が来るまで終わる事の無いダンスを」「水星 feat. オノマトペ大臣」など多数。2022年には中村佳穂らが参加した4年ぶりのフルアルバム「REFLECTION」、初の著書『トーフビーツの難聴日記』を発表する。 目標とするECDと小西康陽 ――アルバム「REFLECTION」と同日に出版される『トーフビーツの難聴日記』のゲラを読ませていただきました。tofubeatsさんは2015年にご自身の会社・HIHATT(ハイハット)を立ち上げましたが、創作以外にも、サンプリングのクリアランスや楽曲の権利処理、契約書の内容を弁護士さんに相談したりといろんな実務を並行されているん

    tofubeatsの知を拡張する愛読書 知らないより知ってたほうが、面白い確率が高い|好書好日
  • 福井県立図書館「100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集」インタビュー レファレンスサービスは、なんでも聞いていいんです!|好書好日

    宮川陽子さん福井県立図書館 司書 1998年から福井県立図書館で司書として勤務。現在の担当分類は、建築や機械工学、家政学などを扱う「5類 技術」(日十進分類法)。読書バリアフリーサービスや寄贈図書の管理なども行なっている。同館の「覚え違いタイトル集」の発案者でもある。 福井県立図書館「覚え違いタイトル集」 レファレンスサービスの認知向上のために ――「覚え違いタイトル集」は、どういった経緯で生まれたのですか。 そもそもの始まりは大学時代の後輩が久世番子さんの漫画『暴れん坊屋さん』を勧めてくれたのがきっかけかもしれません。久世さんが書店でバイトをしていたときのことを描いた漫画で、お客さんが覚え違えているタイトルから「これですね」と正しいタイトルのを渡すシーンがあったんですよね。それを見て図書館のカウンターでも似たようなことがあるという話から、エクセル表で覚え違いの事例を集めていくことに

    福井県立図書館「100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集」インタビュー レファレンスサービスは、なんでも聞いていいんです!|好書好日