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ブックマーク / book.asahi.com (93)

  • 「エヴァ」でも注目、「死海文書」に世界はなぜ驚かされるのか? 日本語版刊行開始|好書好日

    文・北林のぶお 「死海文書」は、確かに存在している。旧約聖書の写を含む約2000年前の古文書が、「世紀の大発見」と言われてから約70年。解読作業の遅れから、オカルト的な興味の対象になったり、真偽そのものを疑う声も一部で上がった。ようやく現存する文書の公刊がほぼ終わり、日でも全12冊の刊行が始まった。ぷねうま舎の社長で編集を担当した中川和夫氏は、聖書を新たに読み解く試みについて「長年の夢を実現できた」と、静かに語る。 ――まず「死海文書とは何か」というところからお聞かせください。 1946年から47年にかけて、現在のヨルダン川西岸地区にある死海のほとりの洞くつ群から、ベドウィンの羊飼いの少年が偶然にも巻物を収めた壺を見つけた、という逸話が伝えられています。巻物は後に20世紀最大の考古学的発見と言われるのですが、ベドウィンから古物商、さらにはシリア正教会の大司教の手に渡り、数奇な運命をたど

    「エヴァ」でも注目、「死海文書」に世界はなぜ驚かされるのか? 日本語版刊行開始|好書好日
    laislanopira
    laislanopira 2018/08/01
    エヴァあまり関係ない
  • 真藤順丈「宝島」書評 占領期の沖縄 若者たちの疾走|好書好日

    宝島 [著]真藤順丈 戦果アギヤー。米軍の倉庫や基地から物資を奪う者たちのことである。 そうでもしなけりゃ生きられなかった時代。医薬品や料や建築資材を強奪しコザの人々に配る20歳のオンちゃんは戦果アギヤーの英雄だった。だが、1952年のある日、仲間とキャンプ・カデナを襲撃したオンちゃんは、米兵に撃たれた後に姿を消した。 後に残されたのは、実弟のレイ(17歳)、親友のグスク(19歳)、恋人のヤマコ(18歳)。真藤順丈『宝島』はここからはじまる、土復帰前の沖縄の若者たちの、20年にわたるめくるめく流転の物語である。540ページの厚さだが、あっという間に読んでしまったさ。だってね、厚いだけじゃなく熱いんだ。 あの襲撃事件で3年の実刑をらい、刑務所では待遇改善を求めて獄内闘争を起こし、出所後は「ごろつき」になった血の気の多いレイ。やはり1年半の実刑になるも戦後のすったもんだに助けられ、琉球警

    真藤順丈「宝島」書評 占領期の沖縄 若者たちの疾走|好書好日
  • 書評・最新書評 : 絵画の歴史―洞窟壁画からiPadまで [著]デイヴィッド・ホックニー、マーティン・ゲイフォード - 椹木野衣(美術批評家・多摩美術大学教授) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■画像の進歩から人の心に迫る これほど画像が日常にあふれている時代もない。人は自分がどこにいるのか、誰と一緒か、これから何をべようとしているかを刻々と撮影し、ソーシャルメディアを通じ、たった今この時も公開し続けている。しかも画像はどんどん鮮明になり、静止画と動画の区別さえ、もはや意味を失った。その総量はいったいどれほどの規模になるのか、見当もつかない。 だからと言って、絵画までもがなくなってしまうわけではない。それどころか、こうした画像の氾濫(はんらん)を糧にして、絵画は新しい姿に刷新されるに違いない。楽観視だろうか。いや、歴史を振り返れば、そうでないことがわかるはずだ。実際、印刷の発明、写真の登場、映画の隆盛は、どれも世界を写し取ろうとする絵画にとって致命的にも思えた。しかし絵画は滅びるどころか、かえってそこからより多くを吸収してきた。 だが、その理解のためには、絵画ばかりに焦点をあて

    書評・最新書評 : 絵画の歴史―洞窟壁画からiPadまで [著]デイヴィッド・ホックニー、マーティン・ゲイフォード - 椹木野衣(美術批評家・多摩美術大学教授) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
  • 書評・最新書評 : 芸術の言語 [著]ネルソン・グッドマン - 椹木野衣(美術批評家・多摩美術大学教授) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■美学と科学の距離を縮める試み 20世紀の英米を中心とする美学の世界に書が与えた影響には、衝撃的なものがあった。なにせ、序論から「美学の文献の大半に共通する諸見解を片っ端から否定する」とある。しかも、否定される最大のものが、美学を他の分野から独立した学問の一領域として扱うことなのだから。作品への美的な価値判断を行う美術批評からも、冷ややかな距離を取る。「芸術作品は競走馬とはちがって、勝者を決めることが第一目的ではない」というのだ。批評家を名乗る私にとっても穏やかではいられない。 だが、この引用文ひとつとってもわかるように、書は、たんに学術的に厳格なだけではない。随所でウィットに富み、ときに毒舌でさえある。それはおそらく、書が大学で開かれた講義をもとに書かれていることによるのだろう。その叙述は、およそ体系的というよりは、学生という他者を前に教室で自問自答を繰り返す、ソクラテスのような哲

    書評・最新書評 : 芸術の言語 [著]ネルソン・グッドマン - 椹木野衣(美術批評家・多摩美術大学教授) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
  • 「兵士とセックス―第二次世界大戦下のフランスで米兵は何をしたのか?」書評 戦争が誘発する性暴力とは|好書好日

    兵士とセックス 第二次世界大戦下のフランスで米兵は何をしたのか? 著者:メアリー・ルイーズ・ロバーツ 出版社:明石書店 ジャンル:社会・時事・政治・行政 兵士とセックス―第二次世界大戦下のフランスで米兵は何をしたのか? [著]メアリー・ルイーズ・ロバーツ 1944年夏、フランスのノルマンディー。ここで米軍が行った上陸作戦は、しばしば軍事的側面からのみ取り上げられる。その後のフランスで、米兵がどのような生活を営んでいたのかについては、ほとんど焦点があたらない。書は、性という観点から、第二次大戦下の米仏関係を読み解く一冊。三部構成で、一部では「恋愛」を、二部では「売買春」を、三部では「レイプ」を取り扱っている。 ノルマンディー作戦は、ナチスからフランスの女の子たちを救い出し、キスの嵐で迎えられるといったジェンダー表現でたびたび受容された。この物語はフランスに対する支配意識とも結びつき、兵士た

    「兵士とセックス―第二次世界大戦下のフランスで米兵は何をしたのか?」書評 戦争が誘発する性暴力とは|好書好日
  • 「江戸日本の転換点」書評 列島改造!! 成長の限界に直面|好書好日

    江戸日の転換点 水田の激増は何をもたらしたか (NHKブックス) 著者:武井 弘一 出版社:NHK出版 ジャンル:新書・選書・ブックレット 江戸日の転換点―水田の激増は何をもたらしたか [著] 武井弘一 明治以後、江戸時代の社会は、概して否定的に見られてきた。それが参照すべきものとして見られるようになったのは、むしろ近年である。それは、戦後日で、「日列島改造」と呼ばれた経済の高度成長があったあと、成長の停滞とともに、環境問題など、さまざまな矛盾が露呈してきたことと関連している。そのため、江戸時代に、低成長で持続可能な経済のモデルが見いだされるようになった。 書が覆すのは、江戸時代にそのように静的な社会があったという見方である。実は、17世紀に日中で、新田開発が進められた。見渡すかぎり広がるような水田の風景が生まれたのはこの時期である。それまで水田は主として山地にあった。これこそ

    「江戸日本の転換点」書評 列島改造!! 成長の限界に直面|好書好日
    laislanopira
    laislanopira 2015/05/27
    江戸時代は低成長の安定したユートピアなどではなかった
  • コラム別に読む : 魔女の世界史 女神信仰からアニメまで [著]海野弘 - 青木るえか | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■レディー・ガガも魔女だった!? 魔女といえば、童話の魔法使いや中世の魔女狩りのことが思い出されるが、書にはそういうことはほぼ書いていない。 「魔女」の定義が違っている。19世紀末に、「明るく広く、まっすぐな表通り」に対する「暗く、細く、曲がりくねった裏通り」の“魅力”のようなものが見いだされた。その「暗く曲がりくねった世界」のものとしての「魔女」だ。宗教的、政治的な抗争によって魔女の地位に追いやられるのではなく、文化的、芸術的、風俗的な現象として現れる魔女。 いる、いる。19世紀末から発生した、「イカス」ところである「魔女」。歴代のそういう「魔女」の皆さんの傾向を固有名詞をあげて紹介されている。フィクションの世界の有名魔女から、ホンマもんの芸術的な魔女までずらりと並びます。濃い! 美しい写真つきで「シモーヌ・ド・ボーヴォワール」を魔女の一員と紹介されると、わけもなく「魔女様!」とひれふ

    コラム別に読む : 魔女の世界史 女神信仰からアニメまで [著]海野弘 - 青木るえか | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
  • 本の記事 : 筑豊の炭鉱が繁栄支えた時代を写真集に 「BOTA」 - 大矢雅弘 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    アジア各地の民衆の生活を写しとった「ぼくのアジア地図」などの著書がある飯塚市の写真家、岡友幸さん(62)が国内最大の産炭地だった筑豊の炭鉱を主題にした写真集「BOTA」(発行・写真公園林)を出した。写真集はエネルギー源が石炭から石油へ、そして原子力へと移り変わってきた時代と、そこに生きた人々を映し出す。 岡さんが炭鉱を記録した写真集を出すのは初めて。写真集の題名は、採掘した石炭の選炭後に出る岩石や粗悪な石炭を指す「ボタ」からとった。投棄されたボタが野積みされたものがボタ山だ。炭鉱の最盛期、筑豊には500近いボタ山があったといわれる。 ボタ山はまさに日の近代化と戦後復興を支えた象徴ともいえる。筑豊のそうした歴史が忘れ去られつつある。数えきれないほどの無名の労働者たちが繁栄を支えた、一つの時代があったという記録を残したいという思いで編集にあたったという。写真集には1972年から3年前までの写

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  • スティーヴン・キング「11/22/63」書評 過去を変えれば幸せになるのか|好書好日

    11/22/63(上・下) [著]スティーヴン・キング わかりにくい題名だが、つまり一九六三年十一月二十二日という意味だ。この日(日時間で二十三日祝日)、私は確かにテレビでケネディ暗殺のシーンを見た。親戚の家を訪問中で、その部屋の様子まで鮮明に覚えている。暗殺は日の未明だから、その後のニュースだったのだろう。このニュース番組は、日米間初の衛星中継試験放送だった。私は当時十一歳。後の九・一一や三・一一とともに、「あのとき私は」を記憶するような出来事だった。一九四七年生まれの著者のキングは十六歳であった。 主人公ジェイクは二〇一一年のアメリカ北東部メーン州アンドロスコッギン郡リスボンフォールズ(実在の町)に住むリスボン・ハイスクールの教師で、作文の添削や演劇の指導をしている。その作文の中に、社会人学生の書いた、父親の家族殺人が綴(つづ)られた一篇(ぺん)があった。このことが物語の伏線になる

    スティーヴン・キング「11/22/63」書評 過去を変えれば幸せになるのか|好書好日
  • 「猿まわし 被差別の民俗学」書評 あがめられ差別された祈る人々|好書好日

    猿まわし 被差別の民俗学 [著]筒井功 人と猿の関係を解く書物は今までにもあった。猿とは何かを民俗学的に解説する書物も存在する。むろん、芸能民としての猿まわしや猿引きについても、民俗芸能のテーマとして、あるいは差別の問題として書かれてきた。 書がそれらと何が異なるかというと、一つは猿まわしが担ってきた「隠密」、つまりスパイとしての役割をはっきり書いたことである。そしてもうひとつは、猿まわしが牛馬の祈祷(きとう)に特化したシャーマンであったことを、明らかにしたことである。 江戸時代の浅草には、弾左衛門(だんざえもん)屋敷を中心とする特別な町があった。ここには死牛馬の皮を扱う職人を中心に、木綿を売る店、質屋、湯屋、髪結い、公事宿(くじやど)などがあり、猿飼の家も十数軒あったという。 しかしそれは猿が芸を見せてお金をもらう芸人とは異なる役割をもっていた。将軍家、御三家、旗、大名屋敷などに出向

    「猿まわし 被差別の民俗学」書評 あがめられ差別された祈る人々|好書好日
  • 森達也『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』書評 当事者の代弁に隠れている欺瞞|好書好日

    「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい 正義という共同幻想がもたらす当の危機 著者:森 達也 出版社:ダイヤモンド社 ジャンル:社会・時事・政治・行政 「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい―正義という共同幻想がもたらす当の危機 [著]森達也 とても長い、しかも問いかけの形を採った題名。その言葉の響きは挑発的でさえある。では、いったい何を問おうというのか。BS放送の対談番組で死刑廃止論を展開した際に(森氏の死刑論は『死刑』に詳しい)一部の視聴者から寄せられた批判の多くが、「死刑制度がある理由は被害者遺族のため」という論調であったことに対して、著者はこう問う。「もしも遺族がまったくいない天涯孤独な人が殺されたとき、その犯人が受ける罰は、軽くなってよいのですか」。詭弁(きべん)のように聞こえるかもしれないが、続けて読んでいくと、著者が

    森達也『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』書評 当事者の代弁に隠れている欺瞞|好書好日
    laislanopira
    laislanopira 2013/10/08
    "「被害者遺族の思いを想像することは大切だ。でももっと大切なことは、自分の想像など遺族の思いには絶対に及ばないと気づくことだ」"
  • 「忘却のしかた、記憶のしかた」書評 日本学者として日、米、世界見直す|好書好日

    忘却のしかた、記憶のしかた 日アメリカ戦争 著者:ジョン・W.ダワー 出版社:岩波書店 ジャンル:歴史・地理・民俗 忘却のしかた、記憶のしかた―日アメリカ戦争 [著]ジョン・W・ダワー 書は、著者の主要な仕事のエッセンスを、自身による解題を付して、年代順に配列したものである。「ダワー入門」と呼んでもよいだ。内容的にいえば、マッカーシズムの時期に自殺に追い込まれたカナダの日学者E・H・ノーマンについての論考から始まり、イラク戦争に際して米国当局が、かつて“成功”した日占領の体験をモデルにしようとしたことに対する痛烈な批判にいたる。 著者の『敗北を抱きしめて』は、占領下の日社会について包括的に書かれた最良の書である。このは米国でピュリツァー賞を受けたが、イラク戦争で日占領経験を引き合いに出した当局がこれを読んだはずがない。著者の考えでは、イラクは日と似ていない。むし

    「忘却のしかた、記憶のしかた」書評 日本学者として日、米、世界見直す|好書好日
  • asahi.com(朝日新聞社):差別用語は追放すべきか ハックルベリー新版めぐり論争 - ひと・流行・話題 - BOOK

    差別用語は追放すべきか ハックルベリー新版めぐり論争2011年2月17日ニューヨーク州にあるマーク・トウェイン資料館に保存されているマーク・トウェインの代表作「ハックルベリー・フィンの冒険」の初版=AP著者:マーク トウェイン  出版社:岩波書店 価格:¥ 588 【ニューヨーク=田中光】米国の作家マーク・トウェインの代表作「ハックルベリー・フィンの冒険」で、文中に出てくる黒人に対する差別用語「ニガー」を、中立的な「奴隷(slave)」という表現に言い換えた新版が今月、出版された。差別用語は追放するべきか、それとも原文を尊重するべきか、論争の的になっている。 1885年に発表された「ハックルベリー」は、米国で奴隷制度が残る南北戦争以前の南部が舞台。逃亡した奴隷ジムと、家を飛び出した白人のハック少年が、自由を求めてミシシッピ川をいかだで下っていく物語。現代まで100を超える版を重ね、米国を

  • 「ふたごと教育」書評 遺伝と「個の確立」を問う研究|好書好日

    ふたごと教育 双生児研究から見える個性 著者:東京大学教育学部附属中等教育学校 出版社:東京大学出版会 ジャンル:教育・学習参考書 ふたごと教育 [編]東京大学教育学部付属中等教育学校 東京大学教育学部付属中等教育学校は「ふたごの学校」として知られる。中高一貫の課程に「ふたご枠」があり、60年間で900組が学んだ。 ふたごの研究は世界的に注目されている。「双生児法」という手法では、遺伝的にほぼ完全に等しい一卵性双生児と平均的に50%等しい二卵性双生児を比較することで、人間の性格や能力などに遺伝と環境がどんな割合で影響するか調べる。身長体重などの身体的特徴は8割、学業成績など知的能力は5割前後が遺伝で説明できるという。 最近では、特定の遺伝子と特定の気質が対応づけられた例もあり「この遺伝子を持つ人はこう」と決めつけられる未来を想像してしまう。当にそうなのか。今、我々は新たな知識を受け入れる

    「ふたごと教育」書評 遺伝と「個の確立」を問う研究|好書好日
  • 「モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん」書評 名画を修復する驚きの「秘法」|好書好日

    モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん 修復家・岩井希久子の仕事 著者:岩井 希久子 出版社:美術出版社 ジャンル:芸術・アート モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん―修復家・岩井希久子の仕事 [著]岩井希久子 名画を修復する職業があることを、大抵のかたがご存じないのでは? 肝心の修復家が仕事の内容や生活を、発言しないせいもある。もっともわが国では美術館に修復部門が、ほとんど無い。従ってこの道に携わる人は少ない。 書の著者はイギリスで技術を学び、モネやゴッホの修復を手がけた。新しい絵画の保存方法も考案した。若い人たちに仕事の魅力を伝えたくて、独自の技法を惜しげもなく披露したという書は、一般の読者にも興味つきない。 修復の第一歩は絵の表面の汚れを取ることで、それには唾(つば)を用いる。綿棒や筆の先に唾液(だえき)をつけ、転がしたりなでたりする。また消しゴムも用いる。固形の消

    「モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん」書評 名画を修復する驚きの「秘法」|好書好日
  • 「人口減少社会という希望」書評 比重増すローカルで内的な生|好書好日

    人口減少社会という希望 コミュニティ経済の生成と地球倫理 (朝日選書) 著者:広井 良典 出版社:朝日新聞出版 ジャンル:新書・選書・ブックレット 人口減少社会という希望―コミュニティ経済の生成と地球倫理 [著]広井良典 成長至上主義者は書を読んで、どう反論するだろうか。これまで幾度となく成長戦略が打ち出されてきたものの「失われた20年」は、なぜかいまだに終わらない。書が指摘するように、そもそも経済成長が「信仰のようなもの」だったのだと考えれば合点がいく。官僚や財界にやる気があるとかないということに問題があるのではない。 書は斬新な「資主義論」を語る経済書であるばかりでなく哲学書、宗教書であり、科学史、人類史をも扱っており、近年稀(まれ)にみるスケールの大きな書である。そして、現在日が直面している諸問題が、数撃ちゃ当たる式の経済成長策で解決できるほど生易しいものではないことがよく

    「人口減少社会という希望」書評 比重増すローカルで内的な生|好書好日
  • 「プライドの社会学―自己をデザインする夢」書評 所属の不安定化で源泉がゆらぐ|好書好日

    プライドの社会学 自己をデザインする夢 (筑摩選書) 著者:奥井 智之 出版社:筑摩書房 ジャンル:新書・選書・ブックレット プライドの社会学―自己をデザインする夢 [著]奥井智之 プライドとは、個人的な満足によるものなのだろうか。それとも、社会的な評価を要するものなのだろうか。たとえば、尊敬される地位、高い学歴、美しい容姿……等々は、個人的な資源でありつつも、社会の中で他人にその価値を共有されねば評価されない。自分や自分が属すものへの評価体系。書はそれをプライド・システムと呼び、一般には心理的な問題とされているプライドを、社会学的に問い直すことを眼目としている。 なるほどプライドとは、誠に魅力的で厄介な代物だ。たとえば、ジェーン・オースティン『高慢と偏見』の、「高慢」の原語はまさに「プライド」。「高慢」ならば悪徳だが、「自負」ならばどうだろうか。むしろ向上心の表れではないのか。この両義

    「プライドの社会学―自己をデザインする夢」書評 所属の不安定化で源泉がゆらぐ|好書好日
  • 「海を渡った人類の遥かな歴史」書評 冒険性を否定する、人と海との親密さ|好書好日

    海を渡った人類の遙かな歴史 古代海洋民の航海 (河出文庫) 著者:B.フェイガン 出版社:河出書房新社 ジャンル:一般 海を渡った人類の遥かな歴史―名もなき古代の海洋民はいかに航海したのか [著]ブライアン・フェイガン 人間の住む世界から遠く離れた北極の氷の中や太平洋に浮かぶ孤島を訪ねた時、いつも考えることがあった。はるか昔、何千、何万年という昔に、海図も六分儀もないのに、ここまで来た人たちがいたのだ。水平線のはるか向こうを目指した古代の人たちの胸の内に思いをはせた時、私はいつも心が震えるような思いがした。 陸地を離れて海へ出る。人類がアフリカを出て世界へ拡散していく歴史の中で、それは確かに最も想像力を刺激する一歩だった。書はそのことについて書かれただ。歴史の教科書に太字で記される華々しい海戦や探検家の航海について触れたものではない。天体を見て遠洋に漕(こ)ぎ出したポリネシア人や、大三

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  • 「おかしなジパング図版帖」書評 こんなお辞儀見たことないよ|好書好日

    おかしなジパング図版帖 モンタヌスが描いた驚異の王国 著者:宮田 珠己 出版社:パイインターナショナル ジャンル:芸術・アート おかしなジパング図版帖―モンタヌスが描いた驚異の王国 [著]宮田珠己 図版がたくさんの楽しい。なんの絵が載っているかというと、主に、「1669年にオランダ人モンタヌスが著した『日誌』の挿絵」だ。 当時のヨーロッパでは、未知の国の文化や風俗への関心が高まっていた。そこでモンタヌスは、挿絵をふんだんに使ったを出版し、好奇心旺盛な読者に「日」の情報を伝えようとしたのだった。 問題は、モンタヌスには来日経験がなかったことだ。文献を収集し、実際に日を見たことのあるひとに話を聞き、と精いっぱいの努力はしたのだが、できあがったの挿絵はどうしたってヘンテコになった。いま見ると、これらの絵が爆笑の不可思議日を形成しているのである。 海外のひとにとっては、「お辞儀」が奇

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  • 白井聡「永続敗戦論」書評 対米従属を続けたい人だらけ|好書好日

    永続敗戦論―戦後日の核心 [著]白井聡 書名以上に、書の内容は刺激的である。読んだあと、顔面に強烈なパンチを見舞われ、あっけなくマットに仰向けに倒れこむ心境になった。こんな読後感は初めてだ。 書にいう「永続敗戦」とは、「敗戦を否認しているがゆえに、際限のない対米従属を続けなければならず、深い対米従属を続けている限り、敗戦を否認し続けることができる」状況を指す。書の目的は「永続敗戦」としての「戦後」継続を「認識の上で終わらせること」にある。 現実には、「永続敗戦」の構造が政官財学、そしてメディアを中心に執拗(しつよう)に維持されている。官邸に陣取る外交アドバイザーが米日関係を「騎士と馬」に擬(なぞら)えていたり、3・11による原発事故に際して日気象学会のトップがその主体性において屍(しかばね)と化した発言をしたり、財界のトップにいたっては原発の建屋爆発後に「千年に一度の津波に耐えて

    白井聡「永続敗戦論」書評 対米従属を続けたい人だらけ|好書好日
    laislanopira
    laislanopira 2013/06/18
    " 本書にいう「永続敗戦」とは、「敗戦を否認しているがゆえに、際限のない対米従属を続けなければならず、深い対米従属を続けている限り、敗戦を否認し続けることができる」状況を指す"