安倍首相には、いつも祖父、岸信介の影がつきまとう。安倍氏のいう「戦後レジームからの脱却」も、占領軍に押しつけられた憲法を改正しようという岸の路線への回帰だと思われるが、ここにはパラドックスがある。戦後レジームをつくったのは、他ならぬ岸だからである。 岸のキャリアを決定的に決めたのは、満州国である。彼は1936年に、国務院実業部総務司長として満州国に赴任し、東条英機や松岡洋右などとともに、国家統制のもとに重化学工業を中心とするコンツェルンをつくって工業化を進めた。このときの計画経済的な手法の成功体験が、のちの国家総動員法にも生かされる。 岸が思想的にもっとも強い影響を受けたのは、北一輝の国家社会主義であり、「私有財産制には疑問を持っていた」とみずから語っている。彼の建設した満州国の「五族協和」の思想も、大川周明の大アジア主義の影響であり、これが大東亜共栄圏の思想的骨格となった。要するに、
2006年9月9日付の米紙「ロサンゼルス・タイムズ」に同紙のスタッフライターであるマーク・マグナイヤー記者の「犬のジョークを抹消する」という表題のコラムが掲載されていた。コラムの内容は、中国の村人たちが“侮辱的な連想を抱かせる姓”から、“敬われる姓”に変えることに成功したというもので、興味を覚えた筆者は全文を読んだ。だが、残念ながら英文では漢字の味わいが表現できず、面白みがいま一つというのが偽らざる感覚だった。 そこで、早速記事の発信地として記載されていた“Shimengou, China”をヒントに場所の特定を行い、それが陝西省商絡市沙河子鎮石門溝村(石門溝=Shimengou)であることを突き止め、マグナイヤー記者が取材した事の顛末を確認することができた。 「敬」から「苟」にせよ! 中国の歴史で「五代十国」時代は、唐末に起こった「黄巣の乱」に乗じて反乱軍から唐に寝返った朱全忠が唐を滅ぼ
小泉政権がもうすぐ終りますね。いろいろな政策が実行されてきましたが、僕にとって一番許せなかったのは、2003年のイラク特措法です。これのために、僕的には戦後最悪の政権だったという位置付けです。 イラク戦争は、改めて言うまでもなく戦争そのものです。 次に、「自衛隊」がそのような名前になっているのは「自衛目的である」ことを強調するためであって、軍隊であることは明白ですよね。間違って したがって、戦争が続いているイラクに日本は軍隊を送り込んだ、と僕は認識しています。 まあ、極端な意見だと言う人もいるかもしれませんが、ごまかさずに考えたらこうなるしかないんじゃないかな、と僕は思うわけです。 人道復興支援と言っていましたが、米軍の輸送を支援しておいて「戦闘に与していない」などと、人を馬鹿にするにもほどがあります。戦闘が続いているにも関わらず「非戦闘地域」がイラクにある、などというごまかしも、忘れるわ
「田中角栄と毛沢東―日中外交暗闘の30年(青木直人)」(参照)という本がまさに題名の問題にとってどれほど重要な情報を提供しているのかよくわからないが、この問題について近年扱った書籍としては類書がないようだ。小学館あたりから出版されているならSAPIOみたいなものかと思うがちょっと左がかった講談社から出ている。が、それほどイデオロギー臭がするわけでもない。読書人なり歴史に関心を持つ人に特にお勧めというほどの本ではないものの、今朝の朝日新聞社説”歴史認識 政治家が語れぬとは ”(参照)を読みながらこの本のことを思い出した。話のきっかけは日中国交正常化について触れた朝日新聞社説のこのくだりである。 外交とは、水面には見えない交渉が下支えしている。国交正常化の際、中国側はこの理屈で、まだ反日感情の強く残る国民を納得させ、賠償を放棄した。日本はそれに乗って国交回復を実現させた。 朝日新聞はさも日本人
いろいろとネタにされている「オマニー*1」。 編集長vs岡田有花の戦いを見物していて、偶然「自虐史観」の種を見つけた。編集長vs岡田有花は大体以下の流れ ブログでも2chでもない「市民新聞」とは――オーマイニュース鳥越編集長に聞く - ITmedia ニュース 「批判があれば記事を書いてほしい」オーマイニュース鳥越編集長 - ITmedia ニュース どの情報を信じますか? - ITmedia ニュース 問題の箇所は、この一番先のインタビューの中の以下の一文だ。 ――2ちゃんねる(2ch)やブログなど、発言の場はたくさんあるが。 2chはどちらかというと、ネガティブ情報の方が多い。人間の負の部分のはけ口だから、ゴミためとしてあっても仕方ない。オーマイニュースはゴミためでは困る。日本の社会を良くしたい。日本を変えるための1つの場にしたいという気持ちがある。 オーマイニュースも、基本的にはブロ
このエントリへのGl17さんのコメントより。 戦争犯罪への国家寄りの異説に反駁するのは、民主主義の理念を守りたいという思いが主です。 相手が外国人であれ、「自国が」人権侵害について隠蔽あるいは正当化を行うというのは許容できません。 (中略) 自国の政府*1であるから、シビリアンコントロールの観点から監視・抑制を欲するのです。 他国の人権侵害であれば、他人事で済まなくはないですが、日本ならば自分の話ですから。 これは非常に重要な観点だと思う。国家は自分にとって都合の悪いことを隠蔽する傾向をもつ。被害者が自国民であろうと*2、他国民であろうと。いや、本当に「国家」にとって都合の悪いことを隠蔽するのであればまだいい。正確には「国家」を僭称する特定の政権政党だったり、官僚機構だったり、特定の人脈が自分たちにとって都合の悪いことを隠蔽するのである。沖縄返還にあたって日米政府間に「密約」があったことを
もう少し靖国問題で。しかし今日とりあげるのは、靖国神社に限られるわけではない、国民国家ならばどの国家も行いうる(実際に行っている)メソッドの問題である。 今日の安倍晋三氏の発言をみると、戦死者に対して「尊崇」という言葉が使われていた。 http://www.asahi.com/politics/update/0904/006.html 安倍氏と谷垣財務相、麻生外相の討論の司会を務めた田勢康弘早大大学院教授が、靖国参拝の有無を明らかにしない安倍氏に「首相日程を秘密にするのはまず不可能だ」と指摘。安倍氏は「日本のために戦い、亡くなった方々のために尊崇の念を表する気持ちは持ち続けたいし、持ち続けるべきだ」と応じたうえで、「今宣言する必要はない」と語った。 先月の小泉首相の参拝に対する、政府見解(「靖国神社参拝に関する政府の基本的立場」)。 「敬意と感謝」という言葉が使われている。 http://
■ フランスAFP通信から取材を受けた。『産経』に八月十五日付で載せた原稿に引き付けて、「日本人と皇室」について所見を示してほしいとの趣旨である。「フランスの通信社とは、意外なところから引き合いがきたものだ…」と思う。 ■ 昨日、安倍晋三氏が自民党総裁選挙に立候補を表明した。「時化た選挙」の体裁が整ったことになる。 雪斎の観測は、安倍氏が新宰相になった場合、その執政は、小泉総理に比肩する長期のものになるか、それとも意外に短期のものとして失速するかの極端に割れるであろうというものである。前にも書いた通り、安倍氏に期待されているのは、「小泉が吹かせた風を止めないこと」なのであるけれども、「小泉が吹かせた風」と「安倍に吹いている風」は、似ているようで、かなり違うものであると思われる。その点を安倍氏周辺がきちんと認識しているかが、問題である。 最近、オットー・フォン・ビスマルクの評伝『ビスマルク伝
今年の夏は小泉総理の靖国参拝を巡ってA級戦犯の話題をよく見かけた。A級戦犯について私は関心ないとまでは言わないのだが私の関心は昨今の騒ぎとは若干ズレたところにあり、またそのズレについて説明するのも億劫な気がしていた。日本と限らないのだろうが文化戦争(参照)的な状況においては議論は二極化し是非だけが問われがちになる。というより現時点では文化戦争的な枠組みでのA級戦犯議論にあまり意義を感じない。 A級戦犯についてウィキペディアの同項目(参照)を覗いてみると、当然というべきかあまり情報はない。冒頭はとりあえずは適切な説明であろうと思うが。 A級戦犯(えいきゅうせんぱん)とは、第二次世界大戦の敗戦国日本を戦勝国が裁いた極東国際軍事裁判において「平和に対する罪」について有罪判決を受けた戦争犯罪人をさす。起訴された被疑者や名乗り出たものを含む場合もある。刑の重さによってアルファベットによってランク付け
遊就館に行ってみたんです。ええ。すごかった…これほどまでとは…予想以上です。ちなみに拝殿は見に行きましたがお参りはしませんでした。神社仏閣には機会があれば行くようにしてるし、普通は必ずお参りするんですけど、ちょっと複雑な気分になってしまいましてね。 あと、つい自分が行ったことのある古い神社(出雲とか住吉とか)と比べてしまうのですが、ずいぶん雰囲気が違うものですね。なんというか「ゆがみ」がなさすぎるっていうか。ま、モダンなんでしょうね。そういや明治神宮も行ったことないや。新しい神社ってこういうのが多いのかな?いやまあ、神社はさておき。 遊就館の話でした。 古代〜近世で紹介される人の人選が興味深いですね…源義家かぁ。後三年の合戦で敵の舌抜いて吊してそいつの主人の頭を踏ませた悪趣味な人なんだけど…いやまあ別にいいけど…平氏はスルーなんだね、とか。 明治維新を経て、さあ近代の対外戦争がメインですよ
僕は全然そういう記憶はないんですよね。たしかに先の大戦では日本が他国を侵略した、というふうに教わったと思うけど、でも原爆だって空襲だって悪いことだし、それまでの列強の植民地支配だって悪かった、と教わったように思います。文化大革命だって無茶だったし、スターリンは粛清しまくったし、ベトナムもひどかった、と教えてもらいました。普通そうなんじゃない? 「サヨク(もしくは日教組)は自虐史観で洗脳しつづけてきた。日本だけが一方的に悪かったと教えられた子供は自国に誇りが持てない」 というのが、歴史修正主義的ストーリーの枕になることが多いですよね。でも本当にそんな教育が行なわれてきたんでしょうか…。僕には実感が持てません。もし本当にそうであれば、歴史教育には反省すべき点もありましょう。だがどうなのか?…ちなみに自分が使ってた歴史教科書は、それなりにバランスがとれていたと感じます。たいていの教科書はそうでし
「岸信介」(原彬久・岩波新書赤368)(参照)は一九九五年に小冊子ふうの岩波新書として出たものなので、その後の研究を含めてバランス良く、かつ研究者以外が読んでも理解できる他の岸信介論もあるのかもしれない。なお本書には「極東ブログ: 下山事件的なものの懸念」(参照)で少しだけ触れたハリー・カーンへの言及は明確にはないようだ。 とはいえ同書に優る岸信介論を私は知らない。著者原彬久は「岸信介証言録」(参照)の著者でもあり生前の岸に直接触れていただけあってその人間的な洞察は岩波新書にも反映されている。 岩波新書「岸信介」は岸の生い立ちから青春期、戦前の満州時代、戦中、戦後とバランスよく描かれている。ただ、今日的な課題からすれば、安倍晋三の祖父というだけではなく、安倍晋三がどのように祖父の意思を継いでいるかが問われるところだろう。 話を端折るが岸が設立に関わる自由民主党が元来どういう党是の政党なのか
■ …僕は「…僕は十二月八日、大東亜戦争勃発の時に持った感じを忘れることはできない。私は愛国者として、これで臣節を全うしたといえるか、もっと戦争を避けるために努力しなければならなかったのではないかと一日中煩悶した。米国の戦力と、世界の情勢を知っていたからだ」といった。 -昭和18年7月9日 清沢洌著『暗黒日記1』(ちくま学芸文庫) 雪斎にとって、清沢洌の言論は、「鑑」の一つである。 清沢が一貫して批判を加えたのが、昭和初期に、『米国怖るるに足らず』『宿命の日米戦争』といった著作を書いて一世を風靡していた池崎忠孝である。池崎は、満州事変以後の日米関係の悪化に乗じて、数々の「日米戦争論」を書いた。池崎は、近い将来の日米戦争が宿命であり、それに備える覚悟を持つことが大事だと論じた。これに対して、清沢は、「自然災害じゃあるまいし…。避けられないものではあるまい」という趣旨の批判をしたのである。 因
安倍晋三政権がほぼ確実という流れになってきた。私は安倍晋三は評価しない。父っつあんの晋太郎みたいにきちんと外交の仕事とかしてきたわけでもないのにというのが理由。つまり評価しようがないというのがより正確。経歴を見るにあまり頭もよさそうでもないが、それを言うなら森喜朗とか鈴木善幸とか指三本とかなので特に言うまい。この間の官房長官としての仕事はというとそう悪くもなかった。経済面での発言などを聞くに、ブレーンの説明を理解しているようではある。うまく人を使える人なのかもしれないが、そのあたりは蓋を開けてみないとわからないところはある。 個人的に気になるのは、祖父岸の亡霊が出てくるってことはないのかというあたりだ。先日安倍晋三が統一教会に祝電したと左翼っぽい感じの人たちが一部騒いでいたが、率直に言って君たちそんなことも知らないでこれがネタだと思っているのとか驚いた。昭和の歴史が忘れられて久しい光景なの
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