探偵小説「黒蜥蜴(くろとかげ)」は、宝石など美しいものを狙う美貌の女賊・黒蜥蜴と、名探偵・明智小五郎が対決する物語で、江戸川乱歩が1934年に発表した長編小説家だ。 1962年にそれを華麗な恐怖恋愛劇の戯曲にして発表したのが三島由紀夫である。 戯曲化するにあたって三島は、黒蜥蜴と明智小五郎との恋愛を主軸にして、歌舞伎の手法を取り入れてデカダンスを強調した。初代の水谷八重子が黒蜥蜴、芥川比呂志が明智小五郎役に扮して、3月には舞台化された。 それから6年後の1968年4月、三島の強い希望が叶って丸山(現・美輪)明宏を主演に迎えて『黒蜥蜴』が再演されると、これが大ヒットを記録する。 すぐに映画化の企画が持ち上がり、深作欣二監督による映画『黒蜥蜴』が早くも8月に公開されて、これもヒットしたのだ。しかし多くの観客が劇場に足を運んだにもかかわらず、マスコミや評論家からまったくといっていいほど無視される