中世のペスト流行を見るような気持ち この数ヶ月のあいだ、私は不思議な感覚でいた。筆者は感染症予防の歴史を専門とする研究者だが、パソコンのモニターに映り日々更新されていく「新型コロナウイルス」がつくりだす光景は、まるで中世のペストの流行を見るかのようだったからだ。いくつか例を挙げよう。 とくに驚いたのはイタリアの大規模な地域封鎖と、日本の「ダイヤモンド・プリンセス号」の隔離だ。こうした措置はもともとペスト対策としてつくられたもので、19世紀には使われなくなっていた。というのも19世紀に流行したコレラには封鎖や隔離が有効ではなかったし、それ以上に、人々の自由を制限しすぎて問題が大きいと考えられたからだった。今回は、19世紀に一度否定された方法が復活したというわけだ。 一方で、デマや人種差別が横行し、商品が買い占められるといった光景はパンデミックによく見られ、歴史にも容易に類例を見つけられる。