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ブックマーク / wedge.ismedia.jp (70)

  • 処理水問題で「まがいものの正しさ」にどう向き合うべきか

    8月24日、東京電力は福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を開始した。今回は約7800トンの処理水を海水で薄めて、原発の沖合約1キロメートルの地点で放出し、作業は9月11日に終了した。 放出後、原発から3キロメートル以内の10地点で採取した海水のトリチウム濃度は通常の海水と変わりがないことが確認され、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長もまた、海洋放出が安全基準を満たしているとの見解を示した。次回の放出は9月末の予定であり、今年度中に4回に分けて約3万トンを流す計画という。 最も重要なのは風評被害対策 処理水の海洋放出には漁業者からの強い反対がある。その理由はただ一つ、風評被害だ。原発事故後、福島が経験した風評、デマ、差別の地獄のような実態と、これを引き起こしたのが利益のために「まがいものの正しさ」を撒き散らすメディア、野党、活動家であり、これに積極的に対応しようとしない行政があ

    処理水問題で「まがいものの正しさ」にどう向き合うべきか
  • G7議長国はまだ続く 日本は「復興」で指導力示せ

    「これだけウクライナに注目いただき、特にウクライナの主権、領土の一体性、ウクライナの人たちに対する支持を表明していただいた。一生忘れることはない」 今年5月、広島で開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)に対面参加したゼレンスキー大統領は、岸田文雄首相にこう謝意を伝えた。ロシアから現在進行形で侵攻を受ける国の大統領が、遠く離れた広島の地に降り立ったことで世界の注目が集まった。 事後のさまざまな報道を総合すると、日政府は当初、ゼレンスキー大統領の対面参加には必ずしも前向きでなかったようである。しかし、日はこのサミットに参加したインドや韓国、インドネシアなどの非G7の「招待国」とウクライナとをつなぐ役割も果たした。結果として、今回のG7サミットは議長国日の〝磁力〟ともいうべき力を示すことができ、想定された以上の成功を収めたといえる。 他方で、G7サミットを巡っては否定的な報道も散見さ

    G7議長国はまだ続く 日本は「復興」で指導力示せ
  • 甘味料アスパルテーム〝発がん性〟報道の真の意味

    7月14日7時半(中央ヨーロッパ時間では14日0時半)、世界保健機関(WHO)の傘下にある「国際がん研究機関(IARC)」と「WHO/国連糧農業機関(FAO)合同品添加物専門家会議(JECFA)」が、ノンシュガー甘味料、昔でいうところの〝人工甘味料〟である「アスパルテーム(Aspartame)」の健康影響について公表しました。 IARCは、アスパルテームを「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」というグループ2Bに分類しました。JECFAは、アスパルテームの許容一日摂取量(ADI)を変更せず、40ミリグラム(mg)/キログラム( kg)体重/日のままとする、と明らかにしました。 IARCについては公式発表前の6月、ロイターがその内容をスクープ。日語のロイター電は「人工甘味料アスパルテーム、WHO機関が初めて発がん可能性リスト掲載へ=関係者」と流しました。これを受けて、ほかのメディア

    甘味料アスパルテーム〝発がん性〟報道の真の意味
  • 中国の経済的威圧をはねのけた豪州から学ぶべきこと

    5月23日付の英エコノミスト誌が「豪州は中国の貿易禁止に対決し、より強くなった。幸運な国は中国いじめに耐える能力があるユニークな国かも知れない」との解説記事を掲載している。 2020年、中国が豪州に対し経済的威圧を始めた。中国は、材木から石炭、ロブスター、大麦とワインまで、豪州からの輸入に大幅な制限をかけた。しかし豪州は屈しなかった。 豪州の輸出は中国による制限で短期間苦しんだ後、その後は増えた。5月18日に両国の貿易大臣は会い、中国は豪州産材木の禁輸を解除した。1月以降、中国は豪州の石炭を静かに買い始めた。豪州は綿花と銅の対中輸出も再開した。大麦については、中国は関税を見直しており、豪州は世界貿易機関(WTO)への提訴を中断した。中国いじめの後、豪州の逃げ切りは重要な勝利と理解されている。 幸運なことに、豪州の大麦に中国が80%の関税をかけた後、生産者は東南アジアに売るか、また別の作

    中国の経済的威圧をはねのけた豪州から学ぶべきこと
  • 福島の当事者の声を軽視するグリーンピースの反対運動

    今春から、東京電力福島第一原子力発電所では汚染水を無害化処理したALPS処理水(以下処理水)の海洋放出が格化する。そうした中で、国際環境NGOを称するグリーンピースが2月22日に『今さら聞けない「汚染水」のホントとウソ、まとめました』と称する記事を出した。 しかし、この記事には重大な事実誤認が多々含まれる。以下に大きく6点、問題を具体的に指摘していこう。 1.量の概念無き不安煽動 「あらゆるものは毒であり、毒なきものなど存在しない。 あるものを無毒とするのは、その服用量のみによってなのだ」 16世紀に活躍した「医化学の祖」と呼ばれる医師パラケルススの名言は、リスク考慮に不可欠の「量の概念」を説く。あらゆる「毒」は量によって決まるものであり、それは当然放射線や放射性物質にも当てはまる。 ところが、グリーンピースの主張には一貫して「量の概念」が欠けている。たとえば、グリーンピースは記事で『汚

    福島の当事者の声を軽視するグリーンピースの反対運動
  • 公開宮廷クーデター 連れ出された胡錦濤も習近平と同罪

    去る10月23日に開催された中国共産党(以下、中共)第20回党大会閉幕式の場で、習近平氏の隣に座っていた前任の党総書記・胡錦濤氏が連れ出された光景が瞬時に世界的な注目の的となり、国営新華社通信は慌てて、健康状態を慮った云々という火消しに入った。 しかし、半ば狼狽しながら抵抗した胡錦濤氏の老い切った表情といい、習近平氏のにやけた表情といい、立たされる胡錦濤氏を支えようとする動作をした栗戦書氏の左隣に座る王滬寧氏が「止めとけ」と言わんばかりに栗氏の背広を引っ張った(または叩いた)ことといい、これは公開宮廷クーデターのようなものである。 聖人君子の統治の偉大な復活 今回の党大会はそもそも、以下のことを中国の内外に示すためにあった。 (1) 過去10年(あるいはそれ以上、ことによると百数十年)かけて中国が願ってきた、外部の助けを借りず、外部の圧迫なく、真に中国自身の力と知恵のみによって国家建設と「

    公開宮廷クーデター 連れ出された胡錦濤も習近平と同罪
  • 利用される日本の科学報道(後編)

    3月16日夜に放送されたTBSのニュース23で、信州大学の池田修一副学長は、「国の研究班の代表 信州大学 池田修一医学部長」のテロップつきでこう語った。根拠にしたのはマウスを用いた実験結果である。 「子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけ、脳の海馬・記憶の中枢に異常な抗体が沈着。海馬の機能を障害してそうだ」(ニュース23) 池田教授のコメントを正しく修正すると次のようになる。 「子宮頸がんワクチンを打ったマウスの脳にワクチンによる異常が発生したという科学的事実はなく、そもそも、このマウス実験はワクチン接種後に症状を訴えている患者とは何ら結びつけることができない実験だった」 厚生労働省は、国費を使って、池田修一・信州大学第三内科(脳神経内科)教授(兼副学長、兼医学部長)を班長とする通称「池田班」と、牛田享宏・愛知医科大学医学部学際的痛みセンター教授を班長とする通称「牛田班」に、子宮頸がんワクチ

    利用される日本の科学報道(後編)
  • 子宮頸がんワクチン「脳障害」に根拠なし 誤報の震源は医学部長

    ※前篇記事「子宮頸がんワクチンと遺伝子 池田班のミスリード」はこちら 「鹿児島大学が脳症状を訴える患者さんのHLA型を調べたところ、19人中16人でDPB1*05:01という型が非常に多く、84%だった。日人の頻度は40.7%ですから、日人の平均頻度に比べて倍以上ということが言えます。私が信州大学で14例で調べてみると、やっぱり71%の方がDPB1*05:01を持っていました。これが何を意味しているかというと、日人の通常の頻度の倍以上ということ」 3月16日の午後、池田修一・信州大学副学長兼医学部長(脳神経内科教授)を班長とする「子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確立と情報提供についての研究」(通称:池田班)と、牛田享宏・愛知医科大学医学部学際的痛みセンター教授を班長とする「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究」(通称:牛田班)の2つの子宮頸がんワ

    子宮頸がんワクチン「脳障害」に根拠なし 誤報の震源は医学部長
  • 子宮頸がんワクチンと遺伝子 池田班のミスリード

    「子宮頸がんワクチン副反応 白血球型影響か」(日テレビ、2016年3月16日22:18日テレNEWS24) 「子宮頸がんワクチン副反応『脳に障害』 国研究班発表」(TBS、2016年3月16日NEWS23) 「健康障害 患者8割、同じ遺伝子」(毎日新聞、2016年3月17日朝刊) 「子宮頸がんワクチン 脳障害発症の8割で共通の白血球型」(朝日新聞、2016年3月17日朝刊) 「接種副作用で脳障害 8割が同型の遺伝子 子宮頸がんワクチン」(読売新聞、2016年3月20日朝刊) 「記憶障害や学習障害など脳の働きに関する症状を訴えた患者の7~8割は特定の白血球の型を持っていることが分かった」(中日新聞<共同通信配信>、2016年3月17日朝刊) 3月16日以降、こんな報道が続いた。 16日の午後、池田修一・信州大学脳神経内科教授を班長とする「子宮頸がんワクチン接種後の神経障害に関する治療法の確

    子宮頸がんワクチンと遺伝子 池田班のミスリード
  • 安倍晋三元首相の国際的評価から学ぶべきこと

    7月9日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)が、社説で、安倍晋三は日を再び世界の舞台に押し上げ、長期政権の総理は経済と外交において並外れたレガシーを残したと称賛している。 このFTの社説は、 ①安倍は長年の経済、外交の停滞から日を国際舞台に引き戻した。 ②そのレガシーは政策にあり、安倍の名前は常に「アベノミクス」との関連で記憶されるだろう。 ③ナショナリスト的な、時には修正主義的な歴史の理解は特に韓国との間で問題となった。 ④自己主張を強める中国への懸念と相俟って、安倍の安保政策は「先見の明があった」。 ⑤安倍の名前は日を超えて世界に生き続けるだろう。 と述べる。社説は、アベノミクスを前向きに評価する。道半ばでコロナ禍に遭遇し、「安倍の大胆な政策をもっと続ける必要があったが、それが齎(もたら)した成果は日の利益になった」という。 安倍晋三論の議論は他でも続いている。7月8日付の

    安倍晋三元首相の国際的評価から学ぶべきこと
  • 安倍元首相がインドにこれだけ愛された3つの理由

    安倍晋三元首相が選挙の応援演説の最中、凶弾に倒れ、暗殺されてしまった。かけがえのない指導者を失ったのは間違いないところである。日だけでなく、世界各国でも大きく報じられ、各国の指導者も時間を割いて日大使館などを訪問し、記帳している。ただ、その中でも、インドの対応は異例だ。 インドは、他の国に先駆けて、暗殺の翌日を、国全体が「喪に服する日」にした。印ナレンドラ・モディ首相はホームページに声明「わが友、安倍さん」を掲載、日語版もだし、喪に服している。さらに、米豪と連携し3か国の指導者の共同声明も出した。 インドのテレビは安倍元首相の特集番組を一日中放送し、筆者も呼ばれた。公共放送のDDIndiaだけでなく、NDTV、Times Now, Mirror Now, CNN News18, Republic TV, NewsX, India Aheadなどのテレビで、安倍元首相の功績について、実

    安倍元首相がインドにこれだけ愛された3つの理由
  • 高まる憲法改正論議 懸念すべき外国の影響力工作

  • 福島第一原発処理水の海洋放出を阻む「不安の正体」

    東京電力福島第一原子力発電所で処理水を海洋放出する計画について、原子力規制委員会が審査書案を了承した。意見募集(パブリックコメント)を実施した後、正式に認可する見通しだが、地元の漁業関係者の反対は強い。 背景には、放射性物質は「危険」という風評被害と、東電・政府への不信感がある。なぜ人々の不安が消えないのか紐解いていく。 日常的に浴びている量よりはるかに低い数値 福島第一原発では核燃料が溶解したデブリの発熱が続き、冷却している。そこに1日100トンを超える雨水や地下水が流れ込み、高濃度の放射性物質で汚染した水が増えている。これを汲みだして、多核種除去設備(ALPS)で処理してほとんどの放射性物質を除去している。 汚染水をALPSで処理するとルテニウムやヨウ素などほとんどの放射性物質を基準値以下に減らすことができるが、トリチウムだけは除去できない。トリチウムは放射性の水素で、大気成分と宇宙線

    福島第一原発処理水の海洋放出を阻む「不安の正体」
  • 欠陥多い日本の「国民保護」 ウクライナ侵攻からの教訓

    手元に「キエフ 危機と平穏」という見出しが付けられた2月15日の読売新聞朝刊の記事がある。連日、北京冬季五輪で熱戦が繰り広げられる一方で、ロシア軍の侵攻が懸念されていたウクライナの首都キエフ(キーウに呼称変更)をルポした記事で、バレンタインデーを前に多くの市民で賑わうショッピングモールの様子が紹介されていた。そこにはテーブルを挟んで笑顔で語り合う親子や若者たちの姿があった。 だが、そのわずか10日後、世界はロシア軍の空爆で負傷した血まみれの女性や黒煙を噴き上げる建物の様子を報じることになる。2月24日、ロシア軍はキーウや北東部のハリコフ、南東部のマリウポリなど複数の都市をミサイル攻撃し、記事にあったキーウのショッピングモールも焼け落ちてしまった。 記事の中で、生後半年の乳児を抱え、「緊急時は地下の避難所に駆け込むことをたたき込まれている」と気丈に語っていた女性(26歳)は無事だろうか。そし

    欠陥多い日本の「国民保護」 ウクライナ侵攻からの教訓
  • 岸田首相が尊敬する池田勇人内閣は何を成し遂げたのか

  • 中国が世界でばらまく「広告」の正体

    「China Watch(チャイナ・ウォッチ)」 さて、これが何かをご存知だろうか? 「チャイナ・ウォッチ」は、ワシントン・ポストやウォール・ストリート・ジャーナル等、米国を中心に、世界中の有力新聞の中で、目にする機会が増えたと感じるようになった。そこで取り上げられている内容は政治・経済・社会・文化といった時事ネタが中心で、紙面の構成まで、普通の新聞と何ら変わりない。 しかし、これは前述の大手新聞社が発行している新聞ではない。中国のプロパガンダなのである。中国政府が発行するもので、米国等の有力新聞社に資金を投じることで、彼らが発行する新聞の中に紛れ込ませて購読者の手に渡るよう、計算されて作られている。「チャイナ・ウォッチ」は、各国からプロパガンダ・キャンペーンと批判されている、中国のパブリック・ディプロマシー(PD)の一戦術なのである。 今回は、前編と後編の2回に渡って、「チャイナ・ウォッ

    中国が世界でばらまく「広告」の正体
  •  学術会議は思考停止に終止符を

    学術会議が推薦した新会員候補105人のうち、政府が法学者ら6人の任命を拒否したことが大きな問題となっている。同会議は「学問の自由を脅かす重大な事態だ」と批判、野党と一部メディアも強く反発している。政府には、任命拒否の理由をつまびらかにしてほしいが、同会議が「学問の自由」を標榜するのであれば、国民の安全に直結する安全保障分野の研究を忌避する姿勢についても、改めて説明が必要だろう。 10月1日に開かれた日学術会議総会。推薦した会員候補者6名が任命されないまま、新たな会期を迎えた (THE MAINICHI NEWSPAPERS/AFLO) 「改めて」と記したのは、防衛省が、2015年に軍事技術の基礎研究に資金提供する「安全保障技術研究推進制度」をスタートさせたことに対し、学術会議は17年、「学術と軍事が接近しつつある」との懸念を示し、同制度に反対の声明を出しているからだ。同会議は下表に示

     学術会議は思考停止に終止符を
  • 先進国唯一の異常事態 「安値思考」から抜け出せない日本

    われわれの身の回りの商品の多くは、大きく値上がりすることがない。低価格で多様な商品が販売され、消費者は良いものをいかに安く買うかを考えがちだ。だがこうした日人の消費の傾向は先進国では異例だという。その課題について、物価研究の第一人者に聞いた。 聞き手/構成・編集部(濱崎陽平) 編集部(以下、──)日は先進国の中でも特に物価が安いといわれる。なぜ日はそのような状況になったのか。 渡辺 過去30年以上にわたって消費者が「物価は上がらない」という観念に縛られているため、企業が値上げに踏み出せないのが理由だろう。かつて1980年代の日の物価は他国に比べ高く、海外旅行に行けばそれが実感できた。当時はプラザ合意などの影響もあって円高基調だったが、国内物価は下がらなかった。 ところがバブルが崩壊し、平成の長い不況に入る。この間、日の物価は安くなり消費者の物価に対する目は厳しくなっていった。20

    先進国唯一の異常事態 「安値思考」から抜け出せない日本
  • 高所得者への所得税拡大は財政健全化につながらない

    新型コロナウイルス感染拡大による歳出拡大への対策として、高所得者に増税すれば十分な税収を上げられると考える人がいるかもしれない。しかし、これは大きな誤解である。お金持ちの数は少ないし、お金持ちの所得すべての国民全体所得に占める比率も小さいからだ。特に日はそうである。 これは、一律10万円のようなバラマキを止めれば少ない予算で効果的な支援ができるという誤解にもつながる。お金持ちは少ないので、お金持ちに配らなければ巨額の予算が節約できると考えるのは誤りである(「経済の常識 VS 政策の非常識 所得制限は机上の空論、緊急時は一律給付が最善策」)。稿では、税金の観点からお金持ちは少ないということを見た上で、そうした層への所得税の増税は税収にどれだけ効果があるのかを考えてみよう。税金には、通常の所得税以外にも、キャピタルゲイン課税、金融資産や不動産に対する財産税、相続税といったものもあるが、ここ

    高所得者への所得税拡大は財政健全化につながらない
  • 米中対立の新たな火種、「最恵国待遇」見直しの動き