目次 1.確率と亡霊(本記事) 2.可能性と単独性 3.唯一者と絶対性 4.政治と未来 1.確率と亡霊 例えば今、此処が爆心地になったとしよう。「敵」は近くに潜んでいた。肉片になった私の名は、石か何かに刻まれる。それは「止むを得ない犠牲necessary cost」であったと、皆が言う。しかし、何が「止むを得な」かったと言うのか? 「止むを得ない」のは、それが私でなくとも、誰かが死なざるを得ないからだ 。つまり、そのコストは、確率的に要請されている。無論、1つしかない「この命」の献上を強いられる者にとって、そのような「止むを得なさnecessity」は、全く馬鹿げたナンセンスでしかない。しかし、大変遺憾ながら、命は既に勘定に入っている。私たちを統治すべき統計=算術は、遺漏なく私たちを頭数に入れてくれている――生かすにせよ、死ぬに任せるにせよ。避けられず必要な――necessary――数値が