古来、鉄は文明の隆盛を左右し、国力の源泉ともなってきた。「製鉄は紀元前15世紀ごろ、現在のトルコ中部・アナトリア地方で栄えたヒッタイト王国で始まった」というのが定説だ。しかし、同地方で調査を続けてきた日本の研究チームが近年、この説を揺るがす成果を得ている。発掘の最前線を訪ねた。【栗原俊雄】 日本の中近東文化センター(東京都三鷹市)は1985年から、トルコの首都アンカラの南東約100キロのカマン・カレホユック遺跡で発掘調査を続けてきた。直径280メートル、高さ16メートルの丘状遺跡だ。オスマン帝国時代(1500~1700年)から前期青銅器時代(紀元前3000~同2000年)まで、長期にわたる変遷がすでに調べられている。記者は今年7月に現地を訪れ、同センターの付属機関・アナトリア考古学研究所(大村幸弘所長)の松村公仁研究員に案内してもらった。 ◇ 遺跡は深く掘り下げられ、場所によっては、はしご