高山裕二著 『トクヴィルの憂鬱 フランス・ロマン主義と<世代>の誕生』 思想家としてのトクヴィルの一般的なイメージとしては穏健派というところであろうか。トクヴィルといえばなんといっても『アメリカのデモクラシー』で名高いのだが、ここでトクヴィルは手放しにアメリカを礼賛するのでもなく、またアメリカを未熟な国として蔑んでいるのでもない。若い民主主義国家の大いなる可能性と共に、その危うさも見つめている。 一時は忘れられた存在となっていたが、1950年代には「トクヴィル・ルネサンス」と言われるほど注目を集めるようになったそうだ。これは主として『デモクラシー』の第一巻に依拠した、「リベラル・デモクラシーの旗手」としてであった。しかし70年代から80年代にかけて「資本主義経済の矛盾が顕在化すると、『デモクラシー』第二巻のブルジョワ社会の病理分析のほうが注目されるようになる」。 このような穏健というイメー