ブックマーク / kanetaku.hatenadiary.org (19)

  • 新・読前読後:駅前食堂の思想

    三郎さんの新著『東京暮らし』*1(潮出版社)を読み終えた。 同じ版元から出た『旅先でビール』*2(2005/11/13条)とつくりが似て(カバーイラスト小林愛美、装幀鈴木成一デザイン室)、内容的にも似た感じの文章が収められているから、姉妹編的なエッセイ集となっている。 しばらく前新刊案内サイトで書の刊行を知ったはずで、それから時々版元潮出版社のサイトにアクセスしては出ていないかチェックしていたものの、何の音沙汰もなかった。それではあの新刊情報は幻だったのかしらんとそのまま忘れかけていたところ、たまたま帰途自宅最寄駅前の新刊書店に立ち寄ったら書を見つけ、即購入したのである。以前ここでは『映画を見ればわかること2』も購っている(→2007/10/25条)。この屋で川さんのを買う人間は、ひょっとしたら私だけかもしれない。 書でも、散歩、書物、映画、ビール、銭湯、温泉など、川ファ

    新・読前読後:駅前食堂の思想
    lovelovedog
    lovelovedog 2008/03/05
    「駅前の大衆食堂で飲む一本のビール」という川本三郎の思想。
  • 手に入れた喜びと読む喜び - 新・読前読後

    戸板康二『中村雅楽探偵全集1 團十郎切腹事件』*1(日下三蔵編、創元推理文庫)を読み終えた。 思えば2004年に『BOOKISH』で戸板康二特集*2を組んで以来(いや、それ以前からだ)待ち望んでいたこの全集、昨年あたりから延期に延期を重ね、とうとう2月末には当に出るらしいと知って、久しぶりに屋に並ぶのが待ち遠しい思いにさせられただった。 ちょうど2月末日から出張に出る予定が入っていたため、何とかそれ以前に手に入れて出張のお供にしたいと考えていたが、なかなか並ばず焦っていた。ちょうど出張前日、仕事帰り神保町に出る用事がある。並んでいるだろうか。いつも立ち寄る東京堂書店ではなく、ふだんはあまり利用しない三省堂書店にまず行ってみる。大書店なら…という期待からだ。でも残念ながら並んでいなかった。 がっくり肩を落とし、出張には別のを携えるしかないかなと諦めかけた瞬間、頭にひらめくものがあった

    手に入れた喜びと読む喜び - 新・読前読後
    lovelovedog
    lovelovedog 2007/04/02
    戸板康二『中村雅楽探偵全集1 團十郎切腹事件』の紹介。ちょっと読んでみたくなりました。
  • 2006-08-01

    映画をよく観るようになると(といっても古い日映画ばかりだが)、自然に映画を観る空間のことについて考えを及ぼすことにもなった。簡単に言えば、“自宅で観るか、映画館で観るか”というテーマだ。 自宅といっても、ケーブルテレビとHDD/DVDレコーダーによりソフトを蓄積する環境はだいぶ充実した反面、肝心の観る装置自体はいまだブラウン管だから、いわゆる「ホームシアター」という環境にはほど遠い。 鹿島茂さんは映画映画館で観るべきと主張するが、これは肯ける意見である。同じ映画を観ている人たちで形成される共同体のなかに身を置き、ともに笑い、泣くことは快感ですらある。とはいえわたしは、「うる星やつら」面堂終太郎の「暗いよ狭いよ怖いよ〜」という暗所閉所恐怖症とまではいかないものの、それに近い精神的持病に苦しんでいるため*1、映画館という空間は基的に苦手である。このところ頻繁に映画館に通うようになったおか

    2006-08-01
    lovelovedog
    lovelovedog 2007/03/30
    「海の情事に賭けろ」という日活アクション映画の感想。赤木圭一郎が双子の兄弟を演じるそうです。
  • 湯島天神舗石の割れ方 - 新・読前読後

    ホームページを始めたばかりの頃は、がむしゃらに新刊情報を集めほかより先に紹介することで話題提供し、それをきっかけにして、好きの人びとと掲示板で情報交換しあうことが楽しみだった。 ネットを介して読書サイトを多く知るにつけ、あちこちで似たような新刊情報提供がなされているのを見ると、途端に意欲を失い、自分が躍起になる必要もないかと情報提供をやめてしまった。情報収集力の低下により、いち早く情報提供することでコメントを交わす楽しみが薄まりつつあったし、そもそも新刊情報を収集することが億劫になってきたのだった。 とはいえ出版社のサイトをこまめにチェックすることは怠っておらず、新刊情報もしかるべきサイトで見ているはずだった。ただやはり収集力の低下は否定しがたく、新刊書店で初めて刊行を知ったなどという体験が少しずつ増えはじめている。 もっとも刊行を知らなかったことにショックを受けるというのではなく、逆に

    湯島天神舗石の割れ方 - 新・読前読後
    lovelovedog
    lovelovedog 2007/03/25
    川本三郎『名作写真と歩く、昭和の東京』(平凡社)の感想と、湯島天神舗石の確認。
  • 戦後30年と60年の時差 - 新・読前読後

    没後十年名優渥美清特集 もう一人の渥美清part1@衛星劇場(録画HDD) 「あゝ声なき友」(1972年、松竹・渥美プロ) 監督今井正/原作有馬頼義/脚鈴木尚之/音楽小室等/渥美清/小川真由美/森次浩司/北村和夫/加藤嘉/倍賞千恵子/新克利/松村達雄/吉田日出子/長門裕之/志垣太郎/大滝秀治/市原悦子/長山藍子/江原真二郎/香山美子/金井大/春川ますみ/織順吉/田武謙三/北林谷栄/悠木千帆/田中邦衛/財津一郎 この作品はすでに「男はつらいよ」が一定の人気を得たあとに作られている。小林信彦『おかしな男 渥美清』(新潮文庫)には、寅さんと違うイメージの作品で自分の可能性を試したいという意気込みで、渥美が自らプロダクションを作って製作に乗り出したとある。 この映画の存在を知る以前から、有馬頼義の原作(『遺書配達人』光文社文庫)が気になり、持っていた(ただしいまどこにあるか、見つけられないでい

    戦後30年と60年の時差 - 新・読前読後
    lovelovedog
    lovelovedog 2006/11/27
    渥美清の映画『あゝ声なき友』の感想を、小林信彦『おかしな男 渥美清』の意見と併せて語る。
  • 貶さないことの徳 - 新・読前読後

    購入以来机辺の目に入る場所に積み、時々めくるたび「ああ、早く読もう」と意を新たにするのだけれど、面白そうなのでもったいないという矛盾した理由と、映画関係のは続けて読むまいという、よくわからぬ頑なな決め事のせいで、手つかずのままのがあった。和田誠さんによる映画談義『シネマ今昔問答・望郷篇』*1(新書館)である。 このたびようやく意を決して読むことにした。たまに手に取り、開いたページの目についた部分だけ拾い読みしていたときには、すこぶる刺激的なのでひと息に読み通せそうな気がしていたのだが、いざ読んでみるとけっこう停滞する。 これはつまらないということではない。情報量がきわめて豊富なうえに、わたしの知らない外国映画を中心として語られているため、これらを無理に頭の中に入れようともがいた結果、読書スピードが停滞したとおぼしい。巻末に索引もあることだし、あとから振りかえることだって可能なのに、読ん

    貶さないことの徳 - 新・読前読後
    lovelovedog
    lovelovedog 2006/11/27
    和田誠の映画談義『シネマ今昔問答・望郷篇』に関する感想。
  • 2006-09-23

    坪内祐三さんの新著『考える人』*1(新潮社)を読み終えた。 新潮社の新雑誌『考える人』創刊号から始まった、雑誌のタイトルを冠した連載。「あとがき」によれば編集者の側からタイトルを提示されたという。 取り上げられているのは、小林秀雄・田中小実昌・中野重治・武田百合子・唐木順三・神谷美恵子・長谷川四郎・森有正・深代惇郎・幸田文・植草甚一・吉田健一・色川武大・吉行淳之介・須賀敦子・福田恆存の16人。書の意図は、吉行淳之介の章にて説明されている。 この「考える人」は単なる作家論や人物論ではありません。 「考える人」としてのその人を考える論考です。 そのための作業として、私は、それらの人の作品を読み返して、彼(彼女)らのキー・コンセプトをつかみます。上にあげた16人を「考える人」という視点で見直してみる。上の引用文の直後で、「「考える人」というメガネをかけて」テキストを再読するとある。 そうすると

    2006-09-23
    lovelovedog
    lovelovedog 2006/11/16
    黒澤明の映画『用心棒』の感想。
  • 2006-09-24

    田沢竜次さんの『東京名画座グラフィティ』*1(平凡社新書)を読み終えた。渋谷、池袋、新宿、銀座・日比谷にあった名画座(二番館・三番館など)の存在を、個人的記憶を中心に跡づけてゆく、強力な意志を感じるだった。 著者の田沢さんは1953年生まれ。“黄金時代”から衰勢に向かいつつあった60年代から70年代、しかしながら映画というメディアがいまだ人々の娯楽の大きな部分を占めていた時代、東京のあちこちにあった二番館・三番館のたたずまいが、その町の雰囲気と複雑にからみながらなまなましく再現されている。 各映画館の思い出話を読むと、父親に連れられて二番館・三番館に行ったというものがけっこう多く、やはりこうした記憶の形成にあたっては、親の存在の大きさが思い知らされる。 東京の名画座たちが輝いていた時代の映画を取り巻く環境と現在のそれでは大きく違うことがわかる。観客や、観方という点に絞ってみるだけでも、ク

    2006-09-24
    lovelovedog
    lovelovedog 2006/11/16
    田沢竜次『東京名画座グラフィティ』(平凡社新書)という本の感想。
  • 二人のバカな男 - 新・読前読後

    名画 the NIPPON@チャンネルNECO(録画DVD) 「白と黒」(1963年、東京映画) 監督堀川弘通/脚忍/小林桂樹/仲代達矢/井川比佐志/千田是也/西村晃/小沢栄太郎/淡島千景/乙羽信子/大空真弓/浜村純/東野英治郎/山茶花究/岩崎加根子/菅井きん/三島雅夫/稲葉義男/大宅壮一(特別出演)/松清張(特別出演) 伏線が巧妙に張られ、ストーリーがどう転がっていくのか、登場人物一人一人にとりうる選択肢が複数あるという複雑な構造をもち、展開も切れ味鋭い。さすが橋忍さんの脚という佳品だった。 千田是也は死刑廃止論者として名高い弁護士。彼には三十代後半で「女ざかり」の淡島千景がいる。千田の事務所には新進気鋭の若い弁護士仲代達矢が所属している。淡島と仲代は密通していた。仲代に結婚話が出てくると淡島が横槍を出し、ことごとく台無しにしてしまう。資産家令嬢の大空真弓との結婚話が具体化

    二人のバカな男 - 新・読前読後
    lovelovedog
    lovelovedog 2006/09/11
    橋本忍さんの脚本による秀作日本映画『白と黒』(1963年、東京映画)の紹介。サスペンス・ミステリー。
  • 江戸っ子の食卓 - 新・読前読後

    池部良さんの文庫新刊『風のいもの』*1(文春文庫)を読み終えた。『百味』誌に連載された初出から単行を経ず文庫化された、いわゆる文庫オリジナル・エッセイ集である。 陸軍に召集され、兵営でべた飯の話、南方に展開したさいに味わった南国のべ物、米軍に糧が爆破されたあとやってきた極端な窮乏生活、復員後映画界に復帰してからさまざまな機会に体験した珍味などなど、ひとくちで言えば“味エッセイ”と呼ぶべき内容のだ。しかしながら味エッセイと断じるのも憚られる。 グルメでもなく、べ物の美味しさを称揚しているわけでもない。にまつわる人生の場面場面が池部さん特有のまなざしで切りとられ、独特の文章表現でわたしたちの前に提供されているのである。 「特有のまなざし」「独特の文章表現」とは何かと言えば、「江戸っ子」ということだ。先日読んだ『21人の僕―映画の中の自画像』*2(文化出版局、→8/2条)でも

    江戸っ子の食卓 - 新・読前読後
    lovelovedog
    lovelovedog 2006/09/11
    江戸っ子気質で語られる池部良さんの文庫新刊『風の食いもの』(文春文庫)について。
  • テラヤマ病になり損ねる - 新・読前読後

    高取英さんの『寺山修司―過激なる疾走』*1(平凡社新書)を読み終えた。寺山修司の晩年に出版関係のスタッフを務めていたという高取さんによる寺山の評伝である。「出版関係のスタッフ」というのは、出版の窓口であったり、競馬関係のエッセイの取材を行なったりしていたことを指す。 書の目的は「常に〈既成の秩序〉に〈反発〉するところがあった」(87頁)という寺山の思想がいかにして形成されていったのかを探る点に置かれている。エリートが嫌いで、左翼や学生運動に同情的であるが政治的人間ではなく、彼ら以上にアナーキーな考え方を持ち、「〈価値紊乱の時代〉の煽動者」(第九章の章タイトル)たらんとした寺山修司。 晩年身近にいた人ゆえか、おおむね寺山の行動には肯定的で、学生時代の短歌剽窃をめぐるスキャンダルや、逮捕されるに至った晩年の「のぞき疑惑事件」に対しても、寺山を擁護する側に立つ。説得力云々より、わたしも高取さん

    lovelovedog
    lovelovedog 2006/08/21
    高取英『寺山修司―過激なる疾走』(平凡社新書)で、テラヤマ病にならない程度にまた考える。
  • 2006-07-31

    松竹に関わった映画人のを読んでいるとかならず目にするのは、大船撮影所の前にあったという松竹映画人御用達の堂「ミカサ」「月ヶ瀬」「松尾」の名前である。先日来読んできた高橋治『人間ぱあてい』『絢爛たる影絵 小津安二郎』にもむろん登場する。このうち「月ヶ瀬」は小津監督が贔屓にした店で、そこの娘益子は佐田啓二夫人となる。中井貴恵・貴一姉弟の母親である。 その小津監督も戦前は「松尾」の常連だったようだ。松尾の看板女将であった山若菜さんの著書『松竹大船撮影所前松尾堂』*1(中公文庫)は、松竹の監督や俳優をはじめとする人びとのエピソードに事欠かない、楽しいだった。 1年半前、雪の中訪れた横手のブックオフで手に入れたで(→2004/12/12条)、同時に購入した道江達夫『昭和芸能秘録―東宝宣伝マンの歩んだ道』(中公文庫)は直後に読んだのに対し(→2004/12/18条)、書は長らく積ん読の山

    2006-07-31
    lovelovedog
    lovelovedog 2006/08/07
    『松竹大船撮影所前松尾食堂』(中公文庫)という本の中で語られる映画人たちについて。
  • 2006-07-05

    杉浦日向子さんの掌編小説集『ごくらくちんみ』*1(新潮文庫)を読み終えた。解説の松田哲夫さんによれば、書は杉浦さん最後のにあたるという。 そもそもこの(の元版)の存在を知ったのも松田哲夫さん経由である。「王様のブランチ」ののコーナーで書を絶賛していたのを憶えている。杉浦さん没後のこと(亡くなったのは昨年7月)かと思っていたら、出た直後、2004年10月のことだという。わずか2年足らずで文庫に入ったわけだ。 書は「ちんみ」(珍味)にまつわる掌編小説68篇が収められている。一篇1300字だそうで、文庫版で3頁。珍味を賞味する人たちの風景をほんの一瞬切り取ったという風情だから、長々しい状況説明はなく、いきなりその場面が提示される。珍味を味わう人同士の会話や挙措動作を読みながら、3頁のうちに状況を理解しなければならない。もっともそう無理して理解する必要もないかもしれない。珍味を肴にうま

    2006-07-05
    lovelovedog
    lovelovedog 2006/07/10
    杉浦日向子さんの掌編小説集『ごくらくちんみ』(新潮文庫)を読んで何かを食べたくなる。
  • 2005-06-06

    「監督 岡喜八の世界」@日映画専門チャンネル(録画DVD) 「殺人狂時代」(1967年、東宝) 監督岡喜八/原作都筑道夫/仲代達矢/団玲子/砂塚秀夫/天英世 ようやく、都筑道夫『なめくじに聞いてみろ』を原作にしたこの映画を観ることが叶った。 『なめくじに聞いてみろ』講談社文庫版の解説(扶桑社文庫版にも収録)が岡喜八監督で、このなかで岡監督は映画化の経緯について書いている。 それによれば、書を読んで映画化を思い立ち、申し入れたところ、すでに日活が権利を取得したあとだった。日活では宍戸錠主演を予定していたという。ところがいかなる事情か取りやめになり、その脚が岡監督に回ってくる。 喜び勇んでその脚に手を入れ、仲代達矢主演で撮ったものの、東宝上層部の意向でなかなか公開されないという憂き目をみた。この映画を高く買い、試写のあと公開されないことを批判した唯一の人が小林信彦さんだった

    2005-06-06
    lovelovedog
    lovelovedog 2005/06/08
    1960年代に作られたハイセンス映画「殺人狂時代」の紹介。これはいい映画でした。
  • 2005-05-31

    昨日坪内祐三さんの新著『古的』*1(毎日新聞社)を購い、帰宅後そのまま読み始めたら止まらなくなって、即日読み終えてしまった。思わず夜ふかししてしまったのだけれど、朝早く起きることができたので、あの興奮を忘れないうちにと、異例ながら朝のうちに感想をまとめておくことにした。 買ったを即日読み終えるなんて、最近の経験をふりかえってみても、坪内さんのくらいしか思いだせない。たとえば『三茶日記』(の雑誌社、旧読前読後2001/10/25条)や『雑読系』(晶文社、同2003/2/24条)が浮かんでくるが、これらの感想を見てみると、「すぐ読み終えた」とはあっても、即日とは書いていない。どうだったろうか。 書は『毎日グラフ・アミューズ』連載の「古的」と、ミステリ専門誌『ジャーロ』連載の「ミステリは嫌いだが古は好きだからミステリも読んでみた」(原題「ミステリ嫌いのミステリ読書録」)の二部構成と

    2005-05-31
    lovelovedog
    lovelovedog 2005/06/08
    最近の読書の傾向と少しシンクロするところがあるそうです。
  • 2005-06-04

    矢口純さんの『酒を愛する男の酒』*1(新潮文庫、→5/24条)を水源に発した小さな「読書川」が、たくさんの支流を合わせ滔々たる流れとなり、そこからまた幾重にも支流を生み出していくような大河になりつつあるとは、想像だにしなかった。 矢口さんのを読んだとき、収められている池島信平のポルトレに感銘を受け、「次に読むのは池島信平関係のにしようと決めた」と書いた。 思えば池島さんほどいつもご機嫌な人はいなかった。しょぼくれたことや泣きごとをおよそ聞いたことがなかった。せいぜい、 「イヤだねェ、いい加減にしてもらいてえよ」 くらいしか言わなかった。しかしその心底には、厳しい批判精神と闘志が燃えているようであった。(前掲書、221頁)それから10日が過ぎてしまったが、ようやく「池島読書」の流れをつなげることができた。“大坂の陣的読書法”実践者たる身としては、池島自身の著作より先に、その評伝、塩澤実信

    2005-06-04
    lovelovedog
    lovelovedog 2005/06/06
    池島信平と文芸春秋をめぐるエピソードを本で読む。
  • 石田波郷ふたたび - 新・読前読後

    俳句の世界から少し遠ざかってしまっているが、決して絶縁を決め込んだわけではない。とくに石田波郷を介しての興味は細々ながらつづいている。 旧読前読後を検索してみると、石田波郷に夢中になっていたのは、いまから4年前の2001年だったことがわかる。講談社文芸文庫に入った『清瀬村(抄)/江東歳時記』*1を読んだり、波郷が一時住んでいた砂町にある石田波郷記念館(江東区砂町文化センター)を訪れたのは、ちょうど4年前の5月である。懐かしい。 いまあげた『江東歳時記』は、東京東部地域(江東区・足立区・墨田区・葛飾区・江戸川区)を歩いてまとめた俳句写真文集で、書については約1年半前にも再読の記を書いている(→2003/11/22条)。 その後も写真も収められた東京美術選書版(元版の新装版)のほうをときおり眺め、昭和40年前後の江東、葛飾、足立区域の写真に見入ったり、波郷の句を味読することがあった。 そんな

    石田波郷ふたたび - 新・読前読後
    lovelovedog
    lovelovedog 2005/06/06
    俳人・石田波郷について。
  • 役者が語る成瀬巳喜男 - 新・読前読後

    村川英編『成瀬巳喜男演出術―役者が語る演技の現場』*1(ワイズ出版)を読み終えた。先日読んだ中古智・蓮實重彦『成瀬巳喜男の設計―美術監督は回想する』*2(筑摩書房、→4/27条)同様、成瀬映画を観てゆくうえで恰好の副読となるものである。 サブタイトルにあるように、書は、編者の映画評論家村川英さんが、成瀬映画でおなじみの俳優にインタビューした内容がメインになっている。登場するのは順に、高峰秀子、香川京子、岡田茉莉子、杉葉子、杉村春子、丹阿弥谷津子、山村聰、小林桂樹、司葉子の9名。 これに、最初のである女優千葉早智子、助監督を勤めた石井輝男、脚を多く手がけた井出俊郎、二番目のである成瀬恒子4名に対するインタビューも加わり、さらに「同時代文献」として成瀬監督の談話記事や、成瀬監督が加わっている座談会記録などが収められている。 書で語られている内容の細かな部分については、いずれ成瀬映画

    役者が語る成瀬巳喜男 - 新・読前読後
  • 2005-05-03

    県立神奈川近代文学館で開催中の「生誕80年・没後35年記念展 三島由紀夫 ドラマティックヒストリー」を見に行った。 同文学館は横浜山手の港の見える丘公園に隣接してある。横浜はめったに訪れることのない町だ。桜木町から神奈川県立歴史博物館に行ったり、伊勢佐木町裏のシネマジャックに映画を見るため何度か訪れ、伊勢佐木町界隈の古屋を冷やかしたり、せいぜい関内に足を伸ばしたりする程度。今回初めて元町・山手方面に足を踏み入れた。 地下鉄みなとみらい線ができて、元町・中華街が利用しやすくなったというけれど、今日歩いてみて思ったのは、断然京浜東北線石川町駅からまっすぐ元町の商店街を抜け港の見える丘公園に出るルートを歩くのが楽しいということ。元町歩きこそ散策者の楽しみの最たるものだろう。 ゴールデンウィークのさなかということもあり、元町の繁華街(元町ショッピングストリート)はたくさんの人で大賑わいだった。バ

    2005-05-03
  • 1