「仮面浪人」は現代ではそれほど珍しくない行為かもしれないが、今から百年以上前、著名人を巻き込む大騒動となった仮面浪人事件があった 第一志望の大学に合格できなかった学生が、別の大学に通いながら受験勉強を続け、再び志望校を受け直すことを「仮面浪人」という。現代ではそれほど珍しくない行為かもしれないが、今から100年以上前、著名人を巻き込む大騒動となった仮面浪人事件があった。日本思想史研究者・尾原宏之さんの新刊『「反・東大」の思想史』(新潮選書)から、その興味深い顛末を紹介しよう。 *** 大正の「仮面浪人」事件 1921(大正10)年の春、京大法学部の1年生、杉之原舜一が東大法学部を受験し、見事合格した。現代風にいえば「仮面浪人」に成功したことになる。 今日では、さまざまな理由から「仮面浪人」となる大学生は大勢いるので、珍しい話に聞こえないかもしれない。だが杉之原の合格は、東大と京大、そして願