不完全なホットライン 日本の芸能界最大の性暴力スキャンダルが明るみに出た1ヵ月後の2023年4月、問題の芸能事務所は遅ればせながら、被害者が訴え出るための内部告発ホットラインを設置した。 だが、このホットラインには大きな欠陥があった。その利用対象者は旧ジャニーズ事務所(現スマイルアップ)の従業員だけ、つまり、創業者の故ジャニー喜多川から虐待を受けていた可能性のある何百人もの旧ジャニーズ事務所に所属した男性芸能人には、その新たな仕組みを利用して被害を申し出る資格がなかったのだ。 スマイルアップが委任した外部専門家から成る調査委員会によれば、このホットラインの運用上の瑕疵は、同事務所の内部統制における数多くの重大な欠陥の一つに過ぎない。同事務所の内部統制の不備は、2019年に亡くなった喜多川が、1950年代に初めて疑惑が浮上して以来、性的虐待を重ねる事態を招いた。