「(米女優の)シャーリー・マクレーンが何度もアカデミー賞にノミネートされた末に取ったとき、『もらって当然』と言い放ったが、私もそういう感じです」。5度目でつかんだ芥川賞。会見の冒頭ではこう心境を切り出し、会場をどっと沸かせた。 しかし、本人に喜びの笑みはなく、なぜか不機嫌そう。「人の前で話すのは嫌い?」との問いには「こんな場所で話すのが好きな人はいないでしょう。政治家じゃないんだから」。当意即妙な受け答えと、クールでシニカルな姿勢で、会見は笑いに包まれた。 受賞作では、17歳の息子が父と対峙(たいじ)する様子を描いた。父の奔放な女性関係、そして暴力…。特殊な家庭事情を織り込むことで、親子の切っても切れない血のつながりが浮かび上がる。