事案は微妙に異なるが、基本的な判断は263号等事件と242号事件とで共通している。 判示事項を私なりに整理すると、以下のようにまとめられる。 (1) 卒業式の国歌斉唱において、起立せよという職務命令は憲法19条に違反しない。 (2) 公務員に対する懲戒処分は懲戒権者に裁量権があり、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、またはこれを濫用したと認められる場合に、違法となる。 (3) 本件不起立行為は職務命令違反であり、式典の秩序や雰囲気を一定程度損ない、生徒にも影響がある。 (4) 他方不起立行為は個人の歴史観や世界観に基づくもので、積極的妨害ではなく式の進行を妨げるものでもない。 (5) 本件職務命令の遵守を確保する必要はあり、重きに失しない範囲での懲戒処分は裁量の範囲内である。 (6) 不起立行為に戒告を超えて、より重い減給以上の処分を選択することは慎重な考慮が必要である