夏場の電力ひっ迫による節電の呼びかけも今は昔。むしろ、猛暑が続くなかで熱中症予防として適切なエアコンの使用を呼びかける声のほうが大きいが、需給のひっ迫が完全に解消されたわけではない。原発の再稼働が一向に進まないなか、足りない電力を補うため電力会社は天然ガス・石炭火力発電の増設を続けてきた。原発事故前までは電力供給で火力の占める割合は6割ほどだったのが、今や8割までに増えている。気候変動(地球温暖化)の議論はどこかに追いやられ、日本の社会は化石燃料に、というより中東に依存して、大きな地政学的リスクを抱え込んでいる。 そんななかで2016年8月に発刊された1冊の書がある。タイトルは『水力発電が日本を救う 今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる』(東洋経済新報社)。著者の竹村公太郎氏は、元国交省河川局長で、川治ダム、大川ダム、宮ヶ瀬ダムの3つのダム建設事業を担当したという。竹村氏は、水力発電の