中国語の中の日本語(Chinese Borrowings from the Japanese Language) 陳 生保(Chen Sheng Bao) 上海外国語大学教授 はじめに 「共産党 幹部 指導 社会主義 市場 経済」 という文は、すべて日本製漢語語彙でできているといったら、こ れらの語彙をさかんに使っている普通の中国人は信じかねるだろうし、これらの語彙の原産地の日本人も、たぶん半信半疑だろうが、しかし、それは事実である。私が十年前にこれまでの先行研究をふまえてまとめた「中国語の中の日本語」 は、その間の消息を伝えている。 現在、日本語は毎年一万語(その多くは音訳による外来語だろうが) のペースで新語が増えているそうである。ところが、二千年の長きにわたって中国語の中に入った外来語は、たったの一万語にすぎない。そして、そのほぼ一割に当たる千語の外来語は、日本製漢語語彙なのである。