コロナの影響を受けず、予定通り昨年東京オリンピックが開催されていたら、どんな読書になったのだろう。物語は2020年、オリンピックの開会式まで10日を切った東京で、ある新聞社に1本の電話が入ることから始まる。 電話の声は、「開会式の日、都内を走るトラックの荷台で青酸ガスを発生させるから、その日走るトラックには注意しといて」と告げる。タチの悪いいたずらかと思われたが、やがて一人の宅配便ドライバーがシアン化化合物による中毒症状で配達中に倒れる。積み荷の中の一つの段ボール箱に、化合物を発生させる装置が仕掛けられていた。 その事件を皮切りに、やがて鉄道の線路が破壊され、高速道路ではトンネル火災が起こされる。あちこちで交通が分断され、首都圏に食料品は届かず、コンビニやスーパーの食料品の棚はカラになり、倉庫の在庫も尽きる。一人の男が警察に自首するものの、事態はどんどん悪化し、ゴミは回収されないまま溜まり