丸・竹・夷・二・押・御池と通りを歌う童歌にある二条通に面し、烏丸通から東に歩いて3分、路地の奥に「まる伊」がある。離れ屋の町家を改築した「まる伊」は京都のど真ん中にありながら、表通りの喧燥は全く聞こえてこない。 ここの料理は、夏は「鱧」づくし、冬は「ふぐ」づくしだけである。しかも鱧やふぐが本格的に市場に出回る時だけ、店を開く。つまり鱧とふぐの端境期には店は開かない。「旬の味だけにこだわりつづけ、旬のおいしさだけをお届けしたい」という主人の真の心意気からだ。 それもそのはず、主人の伊藤氏の本業は、錦市場で「鱧」「ふぐ」専門の魚屋である。鱧もふぐも最高級品しか取り扱わない主義で、京都の高級料理店に卸している。しかし、実際その選別された素材があまりにも料理に生かされてない事、高価な値段で提供されている事に疑問を感じたのをきっかけに、奥様と二人三脚で専門店を開くことを決意する。平成5年10月15日