第18回開高健ノンフィクション賞は『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』が受賞した。著者はかつて栗城史多のドキュメンタリー番組を制作したこともある、北海道放送のディレクター・河野啓。 『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』表紙 本書の主人公である栗城史多は、私にとって同郷の3学年上の先輩にあたり、地元の体育館の武道場でよく顔を合わせていた。その様な関係性もあり、序盤はここに書かれている“栗城史多”と、自分の知っている“栗城くん”のギャップに驚き、そして本人が反論できないのをいいことに、あまりにひどく書きすぎではないかとも思った。 しかし、読み進めていくうちにその感情は徐々に変化していく。 本作は、河野啓自身が「栗城史多を担ぎ上げてしまったのは自分でないか?」という自責の念と葛藤しながら、正面から栗城史多と向き合った(あくまで「河野啓からの視点」ではあるが)、“ノンフィクション”作品