George A. Reisch, How the Cold War Transformed Philosophy of Science: To the Icy Slopes of Logic 本書は「分析哲学の黒歴史」と呼ぶのにふさわしい内容を扱っている。黒歴史という語はネットスラングだが、ここでは、〈多くの人が忘れたがっており、実際に半ば忘れられてしまった過去〉という程度の意味で使っている。 本書によれば、論理実証主義*1という潮流を殺したのは、クワインやトマス・クーンといった批判者達ではない。30年代までは、左翼的な政治運動・文化運動の側面をもっていた論理実証主義の運動(統一科学運動)は、その政治性ゆえに、「共産主義的」と見なされ、冷戦とマッカーシズムの時代にアカデミズムからパージされたというのだ。 もちろん、ある意味では、論理実証主義は排除されてなどいない。現代の分析哲学は、テクニ