『シビル・ウォー』、リーが崩れ落ちる場面の私はここまでやったんでこの呪いお前にくれてやるわ感怖すぎたな〜
グレン・パウエル演じるゲイリーが登場する大学の講義にて後ろの席の男子学生の「あいつの車、シビックだぜ」からの、White & NerdyのMVでのアルかと思うような姿勢で運転して帰る姿からの、猫達との夕食にかぶるナレーションの「特技を活かして…」で射撃の練習をしている辺りから何だかおかしなことになってきて、リンクレイターの映画独特の空気が劇場内に満ちて麻痺させられるように設定に慣れていく。殺し屋の男に惚れる女も受け入れられるようになる。同じ書き手による記事を元にした『バーニー みんなが愛した殺人者』(2011)の焼き直し版とも言える。 ゲイリーのおとり捜査によって逮捕された人々のマグショットが必ず、更にはそのうちの幾人かが裁かれるシーンが挿入されるのが奇妙に心に残る。自分のことを憎んでいるだろう、もう相手のことは忘れたいなんて気持ちは微塵もないようで、最後まで責任持って見届ける人間なんであ
「お前らなんていつ難民に認定されるか分からないんだから、金を貯めとけよ」(=「自助」しろよ)。こう焚き付けて人を使い捨てする奴の「助け合ってたら死ぬぞ」とのアドバイスに、「半島」仲間の一人が「この二人(カン・ドンウォン演じるジョンソクとキム・ドゥユン演じるその義兄チョルミン)は家族だから心配だ」と口にする。一瞬分からなかったけれど、その意味するところは、助け合いとは家族に類するものを持つ特権階級の内で行われるものであり、あぶれた者は割を食うということなのである。 この歪んだ、と言うのは適切じゃないか、文明化を目指すなら見直さねばならない類の助け合いの肥大したものが631部隊である。自死しようとしているソ大尉(ク・ギョファン)と傷を負ったキム兵士は生き延びるために所属しているアウトサイダーだと言える。キム兵士が大尉を慕っているのは、外に出て活動しない彼を自分と同類と信じているからだろうか。初
「アンネ・フランクの家」で特別展示中の「アンネの日記」を見るための大行列の誰一人として脇でテント生活をしている人のことを気にもかけないという、1分で言いたいことが伝わってくるオープニング。まずは1930年代にユダヤ系ドイツ人の多くがオランダへ移住したのは難民を広く受け入れていた態度を信頼してのことだったと思い出したい。それなのに、そして今、という話である。受け継がなきゃならないのは本や名前じゃないだろう、というので日記から「キティー」(声・ルビー・ストークス)が出現する。勿論この映画を見たりその感想を書いたりする者もその向かうところだ。 「アンネ・フランクはどこ?」というタイトルのこの映画における「アンネの日記はどこ?」という皮肉は、いつの時代にも存在する、お話の流通・消費に伴う危険性を表している。「アンネの日記」がアメリカで映画化されたことでベストセラーとなったように、映画にはよくも悪く
1940年代、第2次世界大戦下の激動の時代を舞台にしたスパイの暗躍を、トニー・レオン、ワン・イーボーという中華圏の新旧スターの共演で描く『無名』(公開中)。物語が繰り広げられる上海といえば、歴史的背景から多様な文化が入り乱れる“魔都”と呼ばれる都市。当時の上海でも様々な勢力がしのぎを削っており、背景を知らないと飲み込みづらい部分も多いので、ここで簡単に説明していきたい。 裏切り者は誰…?陰謀が絡み合うスパイ合戦を描く『無名』【写真を見る】数々のスパイ映画の舞台となった魅惑の“魔都”上海(『無名』)Copyright2023[c] Bona Film Group Company Limited All Rights Reserved 上海を舞台に約8年間にわたるスパイたちの活動が、過去と現在を行き来するトリッキーな時系列で描かれる本作。中華民国・汪兆銘政権の政治保衛部に勤めるフー(トニー・レ
映画雑誌、キネマ旬報が発表する毎年のベスト・テンは、2023年度で第97回。日本の映画界では日本アカデミー賞などと並んで、重要な映画賞という位置づけだ。米アカデミー賞も今年で第96回なので、それよりも長い歴史を誇っているというのがスゴい。2023年度のキネマ旬報日本映画ベスト・テン第1位、つまり最優秀作品に輝いたのは、阪本順治監督の『せかいのおきく』で、これは同じく映画賞の毎日映画コンクールでの日本映画大賞とも重なっている。ただ、日本アカデミー賞で『せかいのおきく』は優秀作品賞の5本には入っていない(他のどの部門でもスルーされている)。 キネマ旬報ベスト・テンは、映画評論家、ジャーナリストらの投票によって決まる。2023年度、日本映画の部門に投票したのは、59人。そこに編集部の1票が加わるので、計60となっている。外国映画、文化映画のベスト・テンもあるが、もうひとつ、読者選出ベスト・テンと
10月7日にパレスチナ・ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルへの攻撃を開始し、現在もイスラエル人とパレスチナ人の虐殺が行われていることを受け、「ガザ空爆の即時中止、人道回廊の設置、すべての国際機関が要求する物資の提供、人質の解放を訴える」と要求。 また、1967年の第3次中東戦争後にイスラエルのHaaretz紙に掲載され、同国出身の映画作家アヴィ・モグラビが今月フランス・パリで読み上げた「占領は外国による支配をもたらす。外国による支配は抵抗を生む。抵抗は弾圧をもたらす。抑圧はテロリズムと対抗テロリズムにつながる」といった言葉を引用し、「私たちは今日、この言葉のもとに結集する」とつづっている。
オキサイド・パン監督『フラッシュオーバー 炎の消防隊』を試写で見た。 www.youtube.com 灌城(中国の架空の都市)の工業団地で地震による爆発事故が発生する。被害が甚大であるため、近隣の消防隊が全員出動する。消防士たちは余震や有害物質の漏出と必死に戦うが… 火事の描写は大変迫力があるのだが、人間ドラマはあまりたいしたことない…というか無いに等しい。消防士たちのキャラクターはあまり掘り下げられておらず、署長の婚約問題とか、若い通信員である韓凱(杜江飾)と専門家の葉歆(佟麗婭)のかかわりとかは要らないのでは…と思うような蛇足な感じである。とくに専門家の葉はひとりだけとってつけたように出てくる女性で(緊急対応中で多忙なはずの火災の研究者にしてはパリっとしすぎていてあまりリアリティは無い)、この女性を韓が騎士道精神と憧れで助けようとする…みたいな昔ながらの美姫救出的展開で、たぶん無いほう
ケリー・ライカート監督『ファースト・カウ』を見た。 www.youtube.com 1820年代のオレゴンが舞台である。料理人のクッキー(ジョン・マガロ)と、もめ事を起こして逃走中の中国系移民キング・ルー(オリオン・リー)はひょんなことから出会って意気投合する。2人は仲買商(トビー・ジョーンズ)がこの地域に初めて導入した雌牛のミルクをくすね、クッキーが作ったお菓子で一攫千金を狙う。ところがミルクを盗まれている仲買商がそれに気付かないまま、クッキーのお菓子を気に入ってしまう。 開拓地の砦でお菓子を売って儲けようというのはなかなか面白い発想…というか、あんまりそういうことをする人はいないかもしれないが、娯楽の少ない厳しい土地では甘いものが飛ぶように売れてもおかしくないので、いかにもありそうだと思った。ただ、一攫千金のサクセスコメディには全くならず、最後は泥棒がバレ、ケガしたクッキーの脇にキング
このまま遺作になってしまいそうな2021年現在ジョン・カーペンター最後の監督作『ザ・ウォード/監禁病棟』の確かパンフに載っていたのだがカーペンターファンの映画評論家かなんかが対談で「女子高生がカーペンター好きとか言ってたら嫌だもんw」とか言っていて、なにもこれが総意とは思わないが典型的なカーペンターファン男性の心情を見事に代弁しているなと思った。 ジョン・カーペンターといえば「男」の映画監督である。なぜならカーペンターの映画には男ばかり出てくるし男っぽいものばかり出てくるからである。まことに明快であるが果たしてカーペンターはそんなスッキリと筋の通った映画監督であっただろうか。多少色が付いても土産物屋に並ぶ工芸品のような男のB級映画を作り続ける職人監督というのが世に流布する一般的なカーペンター像っていうか映画雑誌とか映画本とかでカーペンターが語られる時の切り口だが、そうした見方からするとどう
・星を継ぐ者 Outer wildsに抜かれた過去の作品。Outer wildsと一緒に挙げるならまだしもこっちを挙げてOuter wildsを挙げない奴はクソ雑魚アンテナ人間かSF好きを自称しながらゲームを食わず嫌いするような雑魚。 ・たったひとつの冴えたやりかた 主人公が美少女だから評価してるだけのルッキズムもしくは自己犠牲エンドを称賛してるだけの中二病。閉鎖空間で吊り橋効果が起きるだけの話なので内容自体はかなりペライ。 ・インターステラー あまりにも唐突でクソ雑な展開。本音を言えばサイエンスをフィクションする気なんてアリマセーンと言わんばかりのオチ。まあエロゲみたいなもんだと割り切ればありなんだろうけど、それならもうシュタゲでええやん。普遍的なノリにした劇場版シュタゲでしかないっていうかさ。それならシュタゲ本編のが上じゃねっていう。 ・PSYCHO-PASS マイノリティ・リポートの
※注意 以下では映画『バービー』に関するいわゆるネタばれ的な情報が含まれる。既に公開日からかなりたっており、個人的にはネタばれを問題視すること自体どうかと思っているが、念のため。 この夏、北米はじめ世界各国で大ヒットを飛ばしている映画『バービー』、日本でも都市部では好調のようだが、全国的にみれば、世界での状況と比べいまひとつという感があるようだ。 『バービー』の興行収入、女性監督作品の史上最高額を更新(2023/8/4) 映画『バービー』全世界興行収入1700億円を最速突破、日本でも週末公開作品で1位の好スタート(2023/8/14) 世界的大ヒットの映画『バービー』、日本では滑り出し低調 それでも見ておくべき2つの理由(2023/8/19) 日本での状況に関しては、日本公開直前に批判を浴びたいわゆる「バーベンハイマー」事件(『バービー』と、同日公開でこれも北米で大ヒットとなっている『オッ
左から、押井守監督、伊藤和典さん、鵜之澤伸さん、真木太郎さん 2019年12月28日に、港区のユナイテッドシネマお台場 1番スクリーンにて、《『機動警察パトレイバー the Movie』30th記念上映会&トークイベント》が開催されました。 今回は、1989年公開のオリジナル版ではなく、1998年のDVD発売に合せて作られたサウンドリニューアル版を上映。上映後に、当時のスタッフによるトークステージが展開されました。 ゲストは本作の監督・押井守さん、脚本の伊藤和典さん、プロデューサーの鵜之澤伸さん(バンダイ※当時)と真木太郎さん(東北新社※当時)という、当時の実情をよく知る4人が集結。 MCは、〈機動警察パトレイバー 広報課〉の鈴木咲さんが、登場人物の1人、香貫花・クランシーのコスチューム姿で務めました。 冒頭の挨拶では、真木さんから「30年経ってみんな記憶が曖昧。かつ、自分が言っていること
ルオーン・マガン監督のドキュメンタリー『ステップス・オブ・フリーダム』を見てきた。アイルランド映画祭2023の一環として上映されたもので、アイリッシュダンスの歴史に関する作品である。 最初にアイルランドのダンスが史料に登場して以降、18世紀のアイリッシュダンス教育からアメリカでのブラックカルチャーとの交錯、90年代の『リバーダンス』まで、いろいろなトピックを扱ったわかりやすいドキュメンタリー映画である。とくに共和国独立以降、アイルランド国内のダンスは子ども向けに競技ダンスとして画一化され、さらにカトリックの抑圧もあって様式的になっていったが、アメリカでアイルランド移民がやっていたアイリッシュダンスのほうがハリウッドミュージカルに入ったり、ブラックカルチャーのダンスと影響しあったりしてより自由に発展した…というような話が面白い。このため、『リバーダンス』を作った時はリードダンサーがマイケル・
ローラ・キヴォロン監督『Rodeo ロデオ』を見てきた。 www.youtube.com 貧しい若い女性ジュリア(ジュリー・ルドリュー)は家族とうまくいっておらず、ネットで見かけたバイク動画に魅せられてバイカーコミュニティに入っていく。大胆な性格でバイクの運転もすぐに上達するが、コミュニティは盗難などの非合法行為に手を染めており、ジュリアも自分の価値を証明するためどんどん犯罪に深入りしていくことになる。さらには男ばかりのコミュニティで嫌がらせもあり、なかなか思い通りにはすすまない。 ジュリアがバイクコミュニティで自分のやることをどんどん発見していく様子は明るさとか爽快さもあるのだが、バイクコミュニティが犯罪ばかりやっていて、しかも男性中心的で危険なことをやるのが価値とされているというところがなかなか複雑だ。運転技術があれば出世できるという点では『ワイルド・スピード』シリーズに似ているところ
[B! ブレードランナー] 『ブレードランナー』デッカードは人間か、レプリカントか ─ ハリソン・フォードが新証言「私はずっと知っていた」 | THE RIVER ブレードランナーとかインセプションとか映画に限らないんだけど 「さあどちらでしょう?答えは皆さんで考えてください」みたいなのが嫌い 想像に委ねます、じゃないんだよ 作者は必ず答えを持って作ってるでしょ だからラストまで時間をかけて観客を引っ張って来たはずなのに、 それを信じてこっちもついて行ったのに最後の最後で答えを明かさないってそんなのナシじゃない? 裏切りじゃない? 問題集を解かされたのに採点しないみたいなものだよ 見た人がああだこうだ議論してるのを神目線で「あ〜答えはちがうんだけどな〜?(ニヤニヤ」とかやってるの? 解釈や議論の余地なんて本当は存在してないじゃん あ、それとも作品内でヒントを描いてるつもりなのに観客がその結
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