著者: 藤田華子 ずっと、お気に入りの小説に出てくる街に住んでみたいと思っていた。 私の場合それは、江國香織の物語。 14歳のころ『きらきらひかる』を読み、彼女の無垢で奔放な世界に居心地の良さを覚えた私は、長らくお話の舞台に憧れていた。彼女の話には、よく世田谷が出てくる。下北沢、梅ヶ丘、豪徳寺、経堂、成城学園などなど。 物語の登場人物にはなれないけれど、あの世界に近づくことはできる。そして18歳で上京して以来、数えてみたらもうかれこれ10年以上、このエリアで転々と引越しを重ねている。 住んでみて分かったことなのだけど、小田急線に友人を呼ぶと、「初めて乗った」とか「降りたことない駅ばかり」とよく言われる。東京に住んでいても、馴染みが薄い人には縁遠い路線らしい。 でも同時に「住みやすそう」「住んでみたい」というお声をいただくことも多々あり、そのたびに私はなぜか「えっへん!」となって、自分の小田