国際会議やセミナーで,日本の科学者が英語で発表する機会が増えている。英語に自信のある人,例えば留学経験のある人などにとっては,それは日本語で発表することとあまり変わらないことである。日本語で上手に発表できるのであれば,英語でも上手にできるはずだ。しかし,英会話が苦手な科学者にとっては,日本語での発表能力がどんなに優れていても,発音やイントネーションなどが違う英語での口頭発表は苦痛そのものである。今回は,そういう英語が得意ではない人はどのようにすれば良い口頭発表を準備できるか考えてみたい。 まず台本の作成から始めるべきだ,と私は思う。これに異議を唱える読者もいるだろう。「日本語でも英語でも,台本を上手に読み上げるのはひじょうに難しいことだ」,「俳優のような演技力がないとうまくできない」,「少し言葉がつかえても自由に台本なしで話したほうがわかりやすい」,などという反論である。私も基本的にこの反