「これらのケーキは、自分が生まれる前から店のショーケースに並んでいるんです」。近江屋洋菓子店の5代目店主、吉田由史明が語った一言にこの店が持つ歴史の重みが詰まっていた。1884年(明治17年)に神田の地で創業した近江屋洋菓子店。3代目が建てたというこのビルも60年間同店を支え続けてきたが、老朽化により一時閉店。約2カ月間の修繕工事ののち、2021年5月24日に晴れてリニューアルオープンを果たした。 Photo: Kisa Toyoshima 真っ青な天井とシックな木壁が印象的な店内は、昭和の時代をそのまま現代に残している。実はこの内装、リニューアル前とほとんど変わっていない。天井や壁面も改装しているのだが、あえて元の印象のままにしているそうだ。 吉田に理由を聞くと、「60年間いろいろなお客さまが来てくださって、中にはこの店の雰囲気が好きだ、と言って通ってくれる方もいます。そうした常連の方々