筆者は現在、中国各地方の大学を講義して回るプロジェクトの渦の中にいる。旅の途中で、大学以外に必ず行く場所がある。書店だ。 書店は社会の縮図。どの国家、社会でも同様であろう。本が並ぶ空間において、どんな本が出版され、売れているかだけでなく、消費者がどのような表情で書店に足を運び、本を手に取っているかにも興味がある。筆者も、中国語で本を書く人間として、読者の動向が気になるところだ。 残念なことに、中国では書店が普及していない。日本の諸都市では、どこへ行っても「本」の文字が目に入る。駅前は特にそうだ。ところが、中国ではそうではない。『新華書店』という国営書店が市場を独占している。民間の書店がそこに入り込む隙は、現段階ではない。かつての社会主義市場体制を彷彿とさせる。 『当当網』や中国版アマゾン『卓越網』などネット経由で本を購入する消費者が激増している。複数の出版関係者に確認すると、「売り上げの半