『週刊ダイヤモンド』2015年1月31日号は、「統計学 自由自在!」。その中から、経営難で杜氏から見放された山口県の酒蔵、旭酒造が、徹底したデータ管理で杜氏抜きの酒造りを成功させた逸話をお送りします。 「目的は杜氏に頼らない酒造り。杜氏に頼っている限り、若い人に技術移転ができないからだ」。旭酒造の桜井博志社長は、酒造りの素人がデータ重視の科学的な酒造りを始めた理由をそう語る。 同社の「獺祭」は純米大吟醸酒のトップブランドとして知られ、品薄が常態化している人気の酒だが、実は1999年に存続の危機にひんしたことがある。 山口県の山奥の小さな酒蔵だった旭酒造が全国で注目を集めるようになったのは、桜井社長が主力商品だった普通酒を捨て、製造コストが5倍も掛かる高品質な純米大吟醸酒一本に絞ることを決断してからだ。90年には酒造米の最高品種である山田錦だけを使った「獺祭」ブランドを誕生させ、大消費地・東