『地域アート 美学/制度/日本』(堀之内出版)が、アート関連本としては異例の反響を呼んでいる。発売即重版が決まり、Twitter上やトークイベントを通じて発売前から現在に至るまで、多数のアート関係者や研究者を巻きこんだ議論が継続中だ。 「地域アート」とは、瀬戸内国際芸術祭や大地の芸術祭をはじめとする、地域密着型のアートプロジェクトのことである。「地方創生」が叫ばれる昨今、ますますさかんになってきているのだが――この本は必ずしも地域アートを称賛する本ではない。 たとえばこの本では、以下のような批判的な主張がなされている。 ・「地域アート」は、村上隆氏が活動のフィールドとしているような、市場原理で動くギラギラとしたワールドワイドなアートマーケットとは別種の、公共機関と日本独自の芸大人脈が結託したガラパゴスなものである。 ・しかし市場原理否定派の芸術家や研究者が関わっているはずの地域アートにおい