能登半島地震で傷ついた珠洲市三崎町寺家地区の被災前の姿を記録しようと、大学生らが同地区の大浜集会所で、町並みのジオラマ(模型)を作っている。毎日20~30人の住民が訪れ、漁業や祭りでにぎわった在りし日の姿を伝えている。 (高橋信) 模型は500分の1の大きさ。縦横1メートルのものを12個用意した大作で、神戸大で建築を学ぶ学生らが、地図や衛星写真などを参考に製作した。10月28日から、集会所で公開。同大のほか、金沢大と早稲田大の学生も参加し、訪れた住民から、かつての姿を聞き取り彩色している。
七尾市大田町の曹洞宗海門寺に伝わる国指定重要文化財(重文)の「木造千手観音坐像」が、同寺で12年ぶりに公開されている。通常は33年に1度の公開だが、能登半島地震や記録的豪雨の犠牲者の追悼と復興を祈るため、厨子(ずし)の扉を開けた。 平安時代の1158年に作られた、高さ74・2センチの観音坐像で、2012年に重文に指定された。たくさんある手には、それぞれ異なる物を持っていることから、「悩みや苦しみに応じて救いの手を差し伸べてくれる」と松本道匡(どうきょう)副住職(34)。写真撮影も可能という。 公開に合わせ、地域住民が緑や赤、ピンク色など彩り豊かな千羽鶴を奉納した。折り鶴には供養の言葉や願い事がしたためられ、観音堂内につるされた。観音坐像の公開期間中は、短冊に願い事を書くことができ、「健やかな日々を願います」や「みんな元気になってね」などのメッセージが集まっている。
傷ついた能登に心を寄せてもらおうと、能登半島広域観光協会は復興応援ステッカーを作った。シールタイプで1枚100円。個人は千円、法人は1万円から善意を募り、被災地のため役立てる。 丸いステッカーの直径は7センチ。石川県の地図を背景に、白い翼を大きく広げるトキをデザインした。「がんばろう能登」の合言葉を全国に発信する新たなアイテムにしたい考えだ。 地震から、まもなく10カ月。協会の多田邦彦理事長は「これまでのたくさんの支援に感謝している。この先も能登のことを忘れることなく、関心を持ち続けてほしい」と願う。用意したステッカーは5万枚。能登の各市町には無料で配るなど、支援の輪を広げていく考えで「復興に向けた一つのシンボルになれば」と話している。(問)同協会0768(26)2020 (前口憲幸) <ユースクが調べます!> 北陸中日新聞「Your Scoop(ユースク)~みんなの取材班」は、無料通信ア
鉄道ファンの落語家、桂しん吉さん(46)が26日、のと鉄道(穴水町)の能登半島地震からの復旧を描いた創作落語「復活、のと鉄道」を、穴水町さわやか交流館プルートで披露した。能登地域では今回が初披露。 しん吉さんは被災前、のと鉄道を訪問したことがなかったが、復旧後の4月13日に沿線を訪問。田鶴浜駅から能登鹿島駅まで5、6時間歩いたり、穴水中心部の被災状況を見て回るなど取材した。 物語は、のと鉄道の運行再開を伝えるニュース番組の中で、主人公の家出中の妻が穴水駅にいるのが映り込んだところから始まる。JR西日本からの協力で、地震発生から3カ月で全線運行にこぎ着けるまでを軽妙に紹介。しん吉さんは住民ら観客約40人を前に、「日本中、(能登を)忘れてませんから。つらいことあると思いますけど、また会いましょう」と呼び掛けた。
「少しでも お役に」 参加費の一部寄付 宗派の異なる僧侶が集まり、「お坊さん」たちと一緒にブラジル音楽のボサノバ鑑賞を楽しめる「坊さんの場でボサノバ」が11月2日午後2時から、金沢市寺町の法華宗承証(じょうしょう)寺で開かれる。演奏の合間に各宗派のしきたりの違いが分かるトークショーがあり、能登半島地震を踏まえて祈りの場も設ける。参加費の一部を能登支援のために寄付する。 (井上靖史)
能登半島地震で被災し臨時休館中の県七尾美術館(七尾市)の所蔵品や寄託品を紹介する特別展「七尾美術館 in れきはく」が金沢市の県立歴史博物館で開かれている。七尾出身の絵師・長谷川等伯(1539~1610年)の作品など計113件を金沢で初めて一堂に展示し、能登の豊かな歴史と文化を伝える。11月17日まで。 県七尾美術館は能登地区唯一の総合美術館だが、地震の影響で大理石の壁がはがれ落ち、浄化槽が隆起するなどの被害が発生。来年秋ごろの再開を目指して復旧に取り組んでいる。特別展は発生後、歴博職員らが能登地区の文化財レスキューに駆けつけたことが縁となり、歴博側の提案がきっかけで実現した。 3章からなる展示は、第1章で七尾市出身の実業家・池田文夫(1907~87年)の「池田コレクション」を紹介。志野、織部、九谷といった焼き物や、紀伊国(現和歌山県)の根来(ねごろ)寺に由来する漆器など、えりすぐりの優品
東京のライブハウス常連客の縁 輪島市門前町の仮設住宅でジャズのライブが開かれた。演奏したのは日本のジャズシーンで人気のギタリスト井上銘(めい)さん(33)。東京都内でライブハウスを営む前田毬子(まりこ)さん(51)が主催した。地震発生前から町内の安本和秋(かずあき)さん(68)と交流があり、その縁で実現。「被災した人たちに音楽で元気になってほしい」と第一線で活躍するミュージシャンを招いた。 (桜井泰) 秋晴れの空の下、仮設住宅に甘く澄んだエレキギターの音が響き渡った。集会所のステップをステージに、井上さんのほか、ドラムの柵木(ませき)雄斗さん、金沢市のベーシスト中山ともさんがトリオで演奏した。 井上さんは都内を中心に国内外で活躍しており、ブルーノート東京など有名ライブハウスでも演奏している。ジャズが好きだった安本さんは、前田さんが営む「Jazz Bar 琥珀(こはく)」(東京都渋谷区)を何
能登半島地震で被災した金沢城石垣の復旧・復興を考えるシンポジウム「能登半島地震と金沢城」が19日、金沢市内であった。全国約30カ所で城跡石垣の保存修理に携わる東北芸術工科大の北野博司教授が講演。「保存と補強のせめぎ合いを、どう行政的に両立させて整理していくかが課題」と述べた。 北野教授は、熊本地震による被害で復旧完成まで35年といわれる熊本城跡など過去に被災した石垣の例を紹介。石垣の修理には歴史的な価値の保存と構造的な安全性の両面を考える難しさがあると指摘した。 石垣を災害から守る措置としてリスクの把握、園路の見直し、災害時の対応の事前想定などを挙げた。「巨大地震に耐える石垣を目指すのではなく、社会全体の防災力を高めることも重要。見学者側も防災意識を持ち、避難行動を取れることが大事だ」と強調した。
高岡市博物館は、能登半島地震で壊れた伏木錦町の蔵にあったふすま4枚の下張りの古文書約350点の寄贈を受けた。江戸時代に加賀藩や本山からの通達を担う触頭(ふれがしら)だった近くの国宝、勝興寺にかかわる文書が多数含まれている。(松村裕子) 江戸から明治期、ふすま下張り ふすまは不要な紙を下張りに使っている。江戸後期から明治初期にかけての文書が見つかった。通常、切られた紙が多いが、今回は完全なものやつなぎ合わせると史料として重要な差出人と宛先、年代が分かる文書が含まれていた。 触頭は藩や本山への要望などを取り次いでおり、管轄する寺から講師を招いて講演会を開いてもよいかとうかがいを立てる文書などが見つかった。江戸後期の文政、天保の年号や伏木地区の寺の名も見える。ほかに寺子屋で使われた教科書もあった。ふすまは長く蔵に保管されていたが、いつ張り直したかは不明という。
被災した文化財を救出する「文化財レスキュー」への関心や理解を高めようと、いしかわ歴史資料保全ネットワーク(いしかわ史料ネット)が、県内の学生と協力し、活動を啓発する漫画の制作に取り組んでいる。 (中尾真菜) いしかわ史料ネットは能登半島地震を機に今年3月、県内外の学芸員や歴史研究者などで設立。被災地における文化財保護への理解を促し、地域の歴史や文化を示す資料の喪失を防ごうと漫画の制作を企画した。 漫画はA4判で1話2ページ、全4話を制作する。寺院や民家から貴重な仏像や古文書を救出した実例を基にシナリオを作り、レスキューの意義や活動内容を紹介。金沢学院大芸術学部が1話分、金城大短期大学部美術学科が3話分の絵を担当する。 金城大笠間キャンパス(白山市笠間町)で2日、同大短期大学部美術学科の学生に向け、講座が開かれた。漫画を描く1年生17人が受講。いしかわ史料ネットのメンバーで能登町教委学芸員の
預かって飼育し、9月にのとじま水族館に戻したコツメカワウソの(左から)レベッカとヨツバ=能美市のいしかわ動物園で(同動物園提供) 避難先のいしかわ動物園から帰還 高齢動物、飼育経験なく/獣医師が試行錯誤 いしかわ動物園(能美市)は、能登半島地震で一時休業したのとじま水族館(七尾市)から預かっていた3種類の動物を順次、無事に返還した。中でもコツメカワウソは園での飼育実績がなく、受け入れた2匹はいずれも高齢。飼育を担当した獣医師は、独自に外部の飼育員とも人脈を築くなどしてノウハウを吸収し、慎重に健康管理に努めた。 (平野誠也) 園は地震直後の1月上旬から順次、ゴマフアザラシとコツメカワウソ各2匹、マゼランペンギン8羽を預かった。ゴマフアザラシとマゼランペンギンは公開したが、コツメカワウソは展示場所がないため、園内の検疫棟で獣医師3人が飼育した。 2匹は雄の「ヨツバ」(当時17歳)と雌の「レベッ
能登半島地震で被災した公益財団法人「石川近代文学館」(金沢市広坂)が各地を巡回しながら展示を続けている。県庁19階の展望ロビーでは「広津里香記念 高校生による創作詩」の入賞作品展を開催中。学芸員は館外で展示する難しさに苦慮しつつ、文学館を多くの人に知ってもらう機会にもなると展示を工夫する。 (井上靖史) 石川近代文学館は国重要文化財の石川四高記念文化交流館に入居する。能登半島地震で壁にひびが入ったといい、修繕工事が必要となった。現在は休館中だ。 それでも地震後は県立歴史博物館や県立図書館を間借りし、企画展示などをしてきた。宮本知穂学芸員は「古い資料の運搬が難しく、資料を配置する距離感も変わるので悩むことが多い」と「ホーム」を離れて展示する難しさに触れる。
「絆舞」 日本の心を一つに 珠洲、穴水など7地域賛同 大地震、豪雨と災禍に見舞われる能登半島。七尾市で被災した書家が不屈の精神で筆を握っている。真宗大谷派「願正(がんしょう)寺」前住職の三藤観映(みつふじかんえい)さん(77)。脳卒中を患い、利き手の右手がまひ。それでも左手で書き続けてきた。そして元日。本堂や鐘楼堂が崩れ落ちた。度重なる苦難にも「負けとられん」。今秋、東日本大震災をはじめ、被災地支援で実績がある日本酒のラベルに揮毫(きごう)する。「あきらめん姿勢を身をもって示す」。再び右手で筆を振るう。 (前口憲幸) その右手で、かつては東大寺仁王尊像修復で記念胎内経を担当。講師として数々のテレビ番組にも出演した。病に倒れたのは2022年6月。右半身不随となったが、4カ月の入院期間中、左手で稽古した。「執念でやった」というリハビリで右手も動くように。「両利きの書家」となった。 揮毫するのは
被災家屋に残る歴史・文化資料などの保護活動を続けている国立文化財機構文化財防災センター(奈良市)の元に、二酸化炭素(CO2)を用いた殺虫機材が届けられた。虫の食害を受けた資料も数多く一時保管施設に搬入しており、対策の強化が期待される。 センターは3月から奥能登4市町を中心に被災文化財の救出を続け、これまでに寺社や民家など計約100軒から掛け軸やびょうぶ、古文書、仏像などを搬出、保管してきた。虫に食われている場合はその都度手で追い払ってきたが、ゼロにするのは難しく、他の資料に被害が広がらないか心配だったという。 そうした中で被災文化財の保護を知った東京都のドライアイスメーカー日本液炭が自社製品の殺虫機材をセンターに贈った。資料を入れた装置に、二酸化炭素(CO2)を充満させると虫を除去できる。美術館や博物館で使われている。
サンリオの人気キャラクター「ハローキティ」と「マイメロディ」が11日、志賀町高浜町のすばる幼稚園に登場した。クイズやダンス、手遊び、記念撮影などで園児ら約200人に笑顔を届けた。 キャラクターとの「心のふれあい」で地震で傷ついた心を癒やす社会貢献活動「Sanrio Nakayoku Project」の一環。ハローキティとマイメロディが現れると会場は大盛り上がり。全員で「幸せなら手をたたこう」の音楽に合わせてダンスをした後、園児たちにキャラクターをかたどったポーチが配られた。
能登を思い、楽曲を発表したメイブリックマムの(左から)タイゾーさん、南出大史さん、Switch ONさん、中野武瑠さん=金沢市駅西本町で ▼街、人思い「光に向かって進むこと表現」 快進撃を続ける県内在住の若手ロックバンド「Maverick Mom(メイブリックマム)」が、能登半島地震の被災地を思って楽曲「夜明けの足跡」を作り、話題を呼んでいる。心の傷に寄り添う温かく力強いメロディーにのせ、能登の人々が明日へと踏み出せるよう歌い上げる。(高橋雪花)
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