「ピーチライナーのラケットがなくなる」――。2月下旬、本社に読者から電話が寄せられた。「ラケット?」と疑問を抱きつつ、愛知県小牧市東部の丘陵地・桃花台ニュータウンへ向かうと、答えはすぐ見つかった。 集合住宅が並ぶ一帯に、クレーンや重機が並び、高さ20メートルほどの巨大構造物の撤去工事が始まっていた。旧桃花台新交通(ピーチライナー)の終着駅の「ループ線」だ。 6本の橋脚が支えて楕円(だえん)を描き、確かにテニスラケットのように見える。 「ニュータウンの見晴らしも良くなっていい」と近所の男性(64)は言う。ニュータウンに住んで35年以上だが、ピーチライナーに乗ったのは2、3回だった、とふり返る。「名古屋に向かうにも、不便だったからね……」 〈高架軌道上を走るゴムタイヤの電車で、騒音と振動が少なく、都市と近郊をむすぶ未来志向の乗り物〉 1991年3月25日、本紙夕刊1面で開業が報じられたピーチラ