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ブックマーク / www.tachibana-akira.com (33)

  • 大麻バッシングは日本の「精神の貧困」の象徴 週刊プレイボーイ連載(266) – 橘玲 公式BLOG

    参議院選挙にも出馬した元女優が大麻取締法違反で逮捕されたことが、ワイドショーなどで連日大きく報じられました。大麻合法化を公約に掲げて選挙に立候補した以上、確信犯なのでしょうが、残念なのは、離島での暮らしや奇矯な言動が大麻(マリファナ)についての主張といっしょくたにされてしまったことです。 元女優が男性4人と暮らすのは自由ですが、「ふつう」ではないかもしれません。しかし大麻の所持や使用は、いまや先進国では違法とするほうが少数派になっています。 オランダでは早くも1970年代に大麻が解禁されましたが、イギリス、ドイツ、フランスなどヨーロッパの主要国でも、法律上は違法とされていても個人による栽培・使用は放任されているのが実情です。アメリカでは州ごとに規制が異なりますが、医療用大麻は多くの州で合法化され、コロラド、ワシントン、オレゴン州では個人使用の嗜好用マリファナも合法化されています。またカナダ

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  • 死刑はほんとうに「極刑」なのか? 週刊プレイボーイ連載(261) – 橘玲 公式BLOG

    弁護士連合会が10月7日の「人権擁護大会」で死刑制度廃止を宣言しました。きっかけは2014年に袴田事件の死刑囚の再審開始決定が出たことで、「冤罪で死刑が執行されれば取り返しがつかない」というのが理由です。これは杞憂というわけではなく、1990年の足利連続幼女誘拐殺人事件では無実の市民が20年なちかく収監されたように、誤認逮捕はいまでも現実に起きています。 ヨーロッパでは英仏独など主要国が死刑を廃止しており、EU(欧州)は毎年10月10日の「死刑廃止デー」を共催し、国連でも「死刑執行停止決議」が117カ国の賛同を得て採択されています。その一方で日では、世論の8割が死刑を容認するなど、世界の潮流からかけ離れているように見えます。 主権者である国民の圧倒的多数が死刑を支持しているのだから、民主的な決定に国際社会が口をはさむ権利はない、という主張はそのとおりでしょう。しかし気になるのは、日

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  • 女は男より競争が得意? 週刊プレイボーイ連載(246) – 橘玲 公式BLOG

    「女性は男性より競争に消極的で、出世争いで不利だ」といわれます。これは根拠のない偏見ではなく、次のような実験で確認されています。 男女2人ずつのグループに計算問題を解いてもらい、正解すると100円の報酬を支払います。5問解けば500円もらえる「出来高払い」の条件では、男女に成績の差はありませんでした。 次に4人を競争させ、もっとも多く問題を解くと賞金の全額を受け取れるという「勝者総取り」にルールを変えてみます。自分が6問解き、残りの3人が5問なら2100円もらえるのですから、みんな必死に問題に取り組みます。この競争によって全体のパフォーマンスは向上しますが、やはり結果に男女差はありませんでした。 最後に研究者は、男性と女性の参加者にどちらのルールが好ましいか訊きます。すると、勝てる確率は同じにもかかわらず、男性の7割強が「勝者総取り」を選び、女性の7割弱は「出来高払い」を望んだのです。 女

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  • 第57回 節税対策 そう甘くない(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG

    すこし前の話だが、タワーマンションの上層階をかなりのお金を出して購入したひとに話を聞いたことがある。彼は子どもがまだ小学生なのに、相続のことを考えて決断したのだという。 私がぽかんとした顔をしていると、彼はそれがどれほど有利な節税法なのか懇切丁寧に教えてくれた。 湾岸などに建てられた超高層マンションは、眺望のいい上層階ほど価格が高い。それに対して低層階は人気がないため、価格は近隣の物件と比べても安めだ。ところが相続税の算定基準となる「評価額」は階層で差をつけず、マンション全体の評価額を各戸の所有者で均等に分割することになる。 「同じ広さで、2階が2000万円で50階が1億円だとするでしょう。でも相続税評価額は、1億2000万円を2等分した6000万円なんです。そうすると、子どもに1億円相当の不動産を相続させても、税金を40%も節約できるじゃないですか」 私は話をうまく理解できず、彼に訊いた

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  • ベーシックインカムはどうですか? – 橘玲 公式BLOG

    ゴンザレスさん 「ベーシック・インカム」(以下BI)制度についてぜひ橘さんのお考えを伺ってみたいと思った次第です。 私にはさまざまな社会問題を解決できるとてもよいしくみのように思えるのですが、一方で、日での実現は難しいかなー…とも感じています。 橘さんはBIには賛成、反対どちらでしょうか? 橘さんの視点から見たBIについての気になる点や提言などを、ブログ等でお聞かせいただければとてもうれしいです。 なかなか難しいテーマかと思いますが、よろしくお願いいたします。 *                   *                   *                   *                   *                   *                   *                   * ベーシックインカム(BI)は(日だけでなく世界

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  • 同性婚に「日本の文化」で反対する自虐的なひとたち 週刊プレイボーイ連載(197) – 橘玲 公式BLOG

    アイルランドで憲法改正の国民投票があり、賛成62%、反対38%の大差で同性愛者の婚姻が認められました。2001年のオランダを皮切りに、イギリス、フランス、北欧諸国など、いまやヨーロッパの多くの国で同性婚が当たり前になっています。 アイスランドでは2010年にシグルザルドッティル首相が女性作家と同性婚し、ルクセンブルクでは今年5月、ベッテル首相が交際中の男性建築士との同性婚を発表しています。 アイルランドは人口の約85%がカトリックという保守的な国で、1993年までは同性愛行為が犯罪とされ、96年までは離婚が認められませんでした。男女共同参画社会の見とされるオランダも、1970年代までは「女は結婚したら家庭を守るのが当然」とされる保守的な社会でした。近年の欧州の“リベラル化”には目を見張るものがあります。 経済学には「パレート最適」という考え方があります。「誰かの効用を犠牲にしなければ他の

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  • 第50回 仙境は上海上場銘柄(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG

    黄山は中国・安徽省にある名山で、伝説の王、黄帝がここで不老不死の霊薬を飲み、仙人になったという。切り立った岩山が雲に浮かぶ様はまさに仙境で、古来、多くの文人が水墨画や漢詩でその姿を称えた。中国ではもっとも有名な山で、世界遺産にも登録されている。 4月末にその黄山に登ったのだが、驚いたのは断崖絶壁が連なる岩山に長大な階段がうがたれていることだった。黄山登山とは、この階段をひたすら昇り降りすることなのだ。 観光用のロープウェイもあるが、せっかくなので徒歩で挑戦してみた。歩数計では目的地にたどり着くまで8000階段ほど昇ったことになる――とうぶん階段は見たくない、という行程だ。 平日だというのに、景勝ポイントはどこも中国人観光客でいっぱいだった。夏のシーズンには、ロープウェイが数時間待ちになるという。 あちこち歩きまわっているうちに日が傾いてきた。下山するときにわかったのだが、じつは距離が長くな

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  • 新卒一括採用という「年齢差別」はもうやめよう 週刊プレイボーイ連載(194) – 橘玲 公式BLOG

    就活中のアルバイト学生から、「スマホを机の上に出しておいていいですか?」と訊かれました。なんのことかと思ったら、人気企業の説明会は参加人数が決まっていて、募集から30分以内に申し込まないと落選してしまうのだそうです。これではまるで、アイドルのコンサートのチケット争奪戦みたいです。 「大学生は学業を優先すべし」との政府の要請により、今年から就活時期が大きく繰り下げられ、採用情報や説明会情報の解禁が学部3年の3月からになりました(採用選考開始は4年生の8月から)。その結果、数少ない説明会に学生が殺到することになり、希望者全員を受け入れることができなくなって「先着順」になったようです。こんなことでは、学生は学業どころではなくなってしまいますから、かえって逆効果でしょう。 厚生労働省のホームページには、「雇用対策法が改正され、平成19年10月から、事業主は労働者の募集及び採用について、年齢に関わり

    新卒一括採用という「年齢差別」はもうやめよう 週刊プレイボーイ連載(194) – 橘玲 公式BLOG
  • 「教育と格差」をいい立てるうさんくさいひとたち 週刊プレイボーイ連載(186) – 橘玲 公式BLOG

    トマ・ピケティの『21世紀の資』が経済書としては異例のベストセラーになったことで、また「格差」をめぐる議論がにぎやかになってきました。 ある大学では、4万人を対象に、親の年収学歴を合成した指標(家庭の社会経済的背景=SES)と子どもの学力の関係を調べました。それによれば、SESが最低で毎日3時間勉強する子どもよりも、SESが最高で学習時間ゼロの子どもの方が、小中学校ともに学力が上だったといいます。 これを報じた記事では、この結果を「衝撃的」として、「親の経済力などが高い子どもほど高学力と高学歴を獲得しやすく、それが次の世代への連鎖を生む」としています。 しかし、この話は明らかにヘンです。SESは親の年収学歴を合成したといいますが、なぜこんなことをしなければならないのでしょう。子どもの学力の決定要因を知りたければ、年収学歴を別々にしてその影響を推計すればいいだけです。 記事では「親の

    「教育と格差」をいい立てるうさんくさいひとたち 週刊プレイボーイ連載(186) – 橘玲 公式BLOG
  • 革命家の理想から「ブラック企業」は生まれた 週刊プレイボーイ連載(169) – 橘玲 公式BLOG

    牛丼店「すき家」を運営するゼンショーが苦境に立たされています。ワンオペと呼ばれる深夜の1人勤務で人件費を圧縮し、他社が敬遠する郊外に大量出店しながら、24時間営業で格安の牛丼を提供する独特のビジネスモデルが、アベノミクス以降の人手不足で崩壊してしまったからです。 同社は7月に労働環境改善への第三者委員会の提言を公表しましたが、そこで明らかになった勤務実態は衝撃的です。 破綻のきっかけは2月に2度にわたって首都圏を襲った大雪で、店舗から帰宅できず交代要員も出勤できなくなったことでワンオペの48時間勤務が多発し、不満を爆発させたバイトが次々と辞めていきます。それによってクルーを管理するマネージャーがシフトを組めなくなり、自分が店に入らざるを得なくなって業務管理の機能を喪失、ついには正社員が無断欠勤のうえ行方をくらますようになります。こうして3月中旬には、全国約2000店のうち138店が一時休業

  • テレビはバカに娯楽を提供するメディア – 橘玲 公式BLOG

    最新刊、『バカが多いのには理由がある』から「はじめに」を掲載します。 *********************************************************************** ずいぶん昔の話ですが、仕事の企画で民放テレビのディレクターに会いにいったことがあります。彼は30代後半で、視聴率の高いワイドショーを担当し、業界ではやり手として知られていました。 「僕の話なんか聞いたって仕方ないですよ」 開口一番、彼はそういいました。 「昼間っからテレビを見ている視聴者って、どういうひとかわかりますか? まともな人間は仕事をしているからテレビの前になんかいません。暇な主婦とか、やることのない老人とか、失業者とか、要するに真っ当じゃないひとたちが僕らのお客さんなんです。彼らをひとことでいうと、バカです。僕らはバカを喜ばせるためにくだらない番組を毎日つくっているんで

  • 「新しい統治」ではなく「正しい統治」があるだけ 週刊プレイボーイ連載(151) – 橘玲 公式BLOG

    維新の会が国政選挙に乗り出した2012年10月、「地方の支店長が社長に命令する組織」というコラムを書きました。維新の会は「日の統治を立て直す」と主張しますが、党首である橋下徹氏が首相を目指さないのでは国政政党として体をなさないのでは、と疑問に思ったのです。 当時、橋下大阪市長はまだTwitterをやっていて、「自分の政党の統治すらできない人物に国家の統治などできるはずはない」という拙文に対し、「(これからやろうとしている)新しい統治がわかっていない」というツイートをもらいました。それからどんな改革があるのかずっと楽しみにしていたのですが、1年半の迷走の末に共同代表だった石原慎太郎氏と袂を分かち、維新の会は元の姿に戻ってしまいました。今後は結いの党と合流するのでしょうが、このままでは誰が代表になるのかという問題がまた出てきそうです。 橋下市長のいちばんの魅力は、ネオリベを前面に押し立て

  • 「夢の海外移住」で失敗しないために(「臆病者のための資産運用入門」特別編) – 橘玲 公式BLOG

    『臆病者のための億万長者入門』の発売に合わせて『週刊文春』(5月22日発売号)に掲載された「「夢の海外移住」で失敗しないために」を、編集部の許可を得て転載します。 *********************************************************************** 「日の若者は外国に行かなくなった」といわれるが、その代わりリタイア後に海外生活をするひとが増えている。 80年代バブルの頃は通産省(現・経産省)がスペインに「日人村」をつくるシルバーコロンビア計画を提唱したが、ヨーロッパは遠すぎて頓挫した。90年代にはカナダが注目されたが、北米との往復は時差がつらい。ハワイはあいかわらず人気だが、9.11後のアメリカは居住ビザの取得が難しい。 そんなこんなで、リタイア層の注目は東南アジアに集まるようになった。ロングステイ財団の調査でも、ここ数年は「住

    「夢の海外移住」で失敗しないために(「臆病者のための資産運用入門」特別編) – 橘玲 公式BLOG
  • 「ゴーストライターのことはみんな知ってる」って本当? 週刊プレイボーイ連載(144) – 橘玲 公式BLOG

    “日のベートーベン”の曲を別人が作曲していた問題で、ゴーストライターの存在が議論を呼びました。出版界では代作者を使ってを出すことが慣行になっていますが、「作曲家のゴーストライターがあれだけ批判されるのなら、出版物も同じではないのか」というのです。 もちろん、芥川賞や直木賞の受賞作を他人が書いていたら社会的な事件です。ゴーストライターを使うのは芸能人やスポーツ選手のような文筆を生業にしているわけではないひとや、多忙な企業経営者など執筆時間のないひとですから、今回の事件と同列に語ることはできません。その意味でゴーストライターが社会的に容認されてきたのは確かでしょうが、「そんなこと(芸能人やスポーツ選手がゴーストライターを使っていること)は誰でも知っている」という擁護論には違和感があります。 こうした主張は、「プロレスが真剣勝負でないことは誰でも知っている」というのに似ています。力道山の時代

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  • 国民年金基金についての私的提言 – 橘玲 公式BLOG

    国民年金基金は、自営業者などが加入する国民年金(平均的な受給額は月5万3000円)と、サラリーマンや公務員の年金(同16万1000円)の格差を是正すべく1991年にスタートした。国民年金加入者のうち、経済的に余裕のあるひとは、別途、国民年金基金にも加入することで、掛金が全額所得控除になるなどの税務上の恩恵を受けつつ長期の積立で老後の年金を増やすことができる。 行動経済学は、ひとは「合理的経済人」として常に正しい判断ができるわけではないという。ここから、「国家がひとびとを経済合理的な選択に誘導することは認められるべきだ」との政治的主張が生まれた。 リバタリアン・パターナリズム(おせっかいな自由主義)と呼ばれるこの立場では、国家が国民に“正しい行動(将来のための積立)”を強制することは否定するが、制度設計(マーケットデザイン)を通して正しい選択にNudgeする(ひじでそっと押す)ことは積極的に

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  • 「自分にやさしく相手に厳しい」の失敗 週刊プレイボーイ連載(92) – 橘玲 公式BLOG

    アベノミクスによる株価の大幅な上昇を追い風に、安倍政権が高い支持率を維持しています。それとは対照的に、かつて政権を担った民主党の惨状は目を覆わんばかりです。 先日も、前復興大臣が7月の参議院選挙を見据えて民主党を離党しました。現職の閣僚が次々と落選した総選挙を見て、このままでは再選は困難だと判断したのでしょう。 参議院は任期が6年で解散もないので、いちど落選するとよくても3年、同じ選挙区に改選期の異なる同僚議員がいれば6年の浪人生活を覚悟しなければなりません。人生の残り時間が有限であることを考えれば、再選のためになりふり構わなくなるのも当たり前です。 私は政治にはさして関心はないのですが、たまたま知り合いが政治家になったので、2009年夏の政権交代直後の民主党のパーティを覗きにいったことがあります。当時、鳩山政権の支持率は70%を超えていて、事業仕分けが国民的な注目を集めていました。次々と

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  • 学校の運動部はすべて廃止したらどうだろう 週刊プレイボーイ連載(86) – 橘玲 公式BLOG

    大阪の市立高校で、バスケットボール部の男子生徒が顧問教諭からの体罰を理由に自殺した事件の余波も収まらないうちに、こんどはロンドン五輪代表を含む柔道女子の選手が代表監督の暴力行為を日オリンピック委員会(JOC)に告発し、代表監督が辞任するという前代未聞の事件が起きました。 一連の体罰問題を受けてマスメディアは「暴力行為は許されない」と大合唱していますが、石原慎太郎日維新の会共同代表を筆頭に、政治家や文化人のなかにも体罰肯定を公言するひとはいくらでもいます。彼らは「体罰は暴力ではない」といっているのですから、いくら暴力を否定しても話はすれ違うばかりです。 街頭インタビューなどでも、「体罰は許されない」との正論が多数派の一方で、「人がきびしい指導を望むなら認めてもいい」という意見も多く、日の社会に体罰容認の文化が深く根づいていることを示しています。 体罰容認派の主張は、「信頼や愛情に裏打

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  • 日本的雇用からブラック企業が生まれた 週刊プレイボーイ連載(85) – 橘玲 公式BLOG

    2008年12月末、東京・日比谷公園の一角に突如、巨大なテント村が姿を現わしました。 世界金融危機に端を発した景気後退で製造業を中心に多くの派遣社員が職を失い、社員寮からも追い出されてしまいました。彼らが路上で年を越すのは政府の責任だとして、NPO法人が厚生労働省の目の前に「年越し派遣村」を開設したのです。 これをきっかけに、マスメディアは派遣社員の過酷な労働環境を連日のように報道し、経済格差が大きな社会問題になっていきます。そこでの論調は、「派遣社員はかわいそうだから正社員にするべきだ」というものばかりでした。こうして、年功序列、終身雇用を理想とする“正社員神話”が蔓延していきます。 解雇がきびしく制限されている日では、新卒で正社員として就職すれば定年までの約40年間「終身雇用」が保証されると考えられています。これは一見すると、労働者にとって法外に有利な契約です。だからこそ企業は派遣な

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  • 体罰は日本型マネジメント 週刊プレイボーイ連載(83) – 橘玲 公式BLOG

    大阪の市立高校で、バスケット部の男子生徒が顧問教諭から体罰を受けて自殺したことが大きな社会問題になっています。 昨年は滋賀県の市立中学でいじめ自殺が起きましたが、日では学校での自殺のほとんどが公立中学を舞台としています。ひとは誰もが生きたいという強烈な欲望を持っていますから、自ら死を選ぶのはどこにも逃げ場がない絶望の深さを示しています。 公立中学の生徒がいじめで自殺するのは、義務教育によって退学の自由がなく、また相手の生徒を退学させることもできず、いじめが未来永劫つづくように感じられるからでしょう。高校になるといじめ自殺が起きない理由は、いじめられた生徒が転校や退学するハードルが下がることと、問題のある生徒を停学・退学処分にしやすいことで説明できます。現状をすこしでも改善できる希望があるのなら、誰も死のうとは思いません。 そう考えると、高校の部活動で自殺が起きるのは不可解です。死を考える

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  • 第24回 庶民の味にグローバル化の波(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG

    アモイの台湾夜市で鶏肉飯をべたら15元だった。 アモイは中国南部・福建省の港町で、台湾海峡を挟んで中華民国(台湾)まではわずかな距離だ。 もともと台湾人(省人)の多くは福建省の出身で、台湾語は閩南語(福建語)とほとんど同じだから、彼らは異なる国の国民というより同郷人だ。国共内戦で台湾は蒋介石の中華民国軍(外省人)に占領され、その後は中台間で軍事的な危機が繰り返されてきたが、90年代からの改革解放経済でアモイ(福建)と台湾は急速に経済的に一体化していく。 いまやアモイの繁華街には、「風台(台湾風)」の看板を掲げた土産物店がずらりと並んでいる。台湾夜市はその近くにある屋台街で、地元の若者たちや中国各地からの旅行者でたいへんな賑わいだ。 鶏肉飯はご飯の上に蒸した鶏肉を載せて甘辛いタレをかけたファストフード(B級グルメ)で、15元は日円に換算すると約200円になる。夜市の屋台で定番の牛肉麺や

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