露光装置とは、写真の技術を応用して、シリコンウエハ上に塗布した感光性樹脂(レジスト)に光を照射することにより回路パタンを形成する装置である。解像度の進展とともに、装置価格が高騰しており、「ArF液浸」と呼ばれる最先端露光装置は1台50億円、次世代のEUV(Extreme Ultra Violet)露光装置は100億円を超えると言われている。 露光装置は、人類が生み出した最も精密で高価なマシンであると言える。東芝の微細加工の責任者である東木達彦部長は、「まさに兵器だ」とすら述べた。半導体の量産工場には、「兵器」のごとき露光装置が数十台並ぶ。この兵器をどのように使うかが、半導体デバイスの性能、品質のみならず、コストにも大きく影響する。 ASMLの装置はスループットと稼働率が高い? ASMLはどのようにしてTSMCやサムスン電子と共進化できる露光装置を開発したのか? 装置メーカーに所属している筆
金融危機でダメージを受けた半導体業界が回復してきた。エルピーダメモリは、DRAM価格の高値安定を受け、3期ぶりの黒字を確保した。東芝も、NAND型フラッシュメモリー(NANDフラッシュ)の価格が高水準で推移したことにより、半導体部門が23億円の黒字に浮上した。 ところが、諸外国ではリーマン・ショック前を飛び越え、過去最高水準の利益を叩き出している。世界シェア1位の米インテルは、1~3月期としては過去最高の売上高102億ドル、史上最高の粗利益率65%を計上し、営業利益率は23.5%であった。 世界シェア2位、メモリーの世界シェア1位の韓国サムスン電子は、売上高6970億円、営業利益1666億円を計上、営業利益率は24%であった。ファンドリー(半導体デバイスの受託生産を行うメーカー)最大手の台湾TSMCは、売上高2763億円、営業利益1023億円となり、37%もの営業利益率を達成した。 日本と
前回は、2000年前後から始まった日本半導体の第1次再編がことごとく失敗したことを説明した。また、NECと日立の合弁会社エルピーダメモリ(以下、エルピーダ)をケーススタディーすることにより、経営統合した場合、どのような混乱と摩擦が生じるかを詳述した。これらは、すべて、再編におけるネガティブな教訓であると言えよう。 では、ポジティブな教訓はないのか? 1つある。図1に、エルピーダのDRAMシェアの推移を示した。エルピーダのDRAMシェアは、設立後から2年で4分の1に減少した。この直接的原因が2社統合の混乱と摩擦にあったことは、前回に論じた通りである。 ところが、2002年11月に社長が交代した後、そのシェアは急速に回復に転じた。社長交代前後の時期に、エルピーダには一体何が起きたのか? この現象を解明することにより、経営統合におけるポジティブな教訓が得られると考えられる。 今回は、社長交代によ
2008年秋の金融恐慌後、日本半導体メーカーはすべて赤字に転落した。これをきっかけとして日本半導体業界に第2次再編が始まった。 まず、産業再生法第1号適用を受けて公的資金が注入されたエルピーダメモリが台湾メモリーとの提携を発表した。また、経営破綻した米SpansionのNAND型フラッシュメモリ(NANDフラッシュ)に関するIP(Intellectual Property:設計資産)を買収した。 さらに今年(2010年)4月1日、ルネサス テクノロジとNECエレクトロニクスが経営統合して、社員数4万7000人の巨大半導体メーカー、ルネサス エレクトロニクスが誕生することになった。 果たして、このような再編の結果は吉と出るのか凶と出るのか? 日本半導体は過剰技術で過剰品質を作っていることを再三述べてきた。だから、日本半導体は高コスト体質である。それゆえ、不況になると大赤字を計上する。 その結
米Apple(アップル)社の「iPad」は、自社開発のプロセッサ「Apple A4」を搭載していることで話題になったが、このプロセッサを開発したチームのメンバーの多くがすでに同社を去っていることが明らかになった。Apple社を後にしたメンバーは、新会社を設立した。 Apple社は2008年4月に、米P.A.Semi社を2億7800万米ドルで買収した。この買収劇は、Apple社の半導体市場への参入の意向をはっきりさせ、世間を驚かせた(参考記事:アップル社が半導体市場に参入、P.A.Semi社を買収)。 P.A.Semi社は2003年に半導体業界のベテランが集まってできた企業だ。同社の共同設立者であり、CEOを務めていたDan Dobberpuhl氏は、米Digital Equipment社(DEC)で「Dec Alpha」や「StrongARM」などのプロセッサ開発に携わったことで有名だ。同
前回は、日本のDRAMがなぜ世界シェアNo.1になれたのか、そして、なぜその座から陥落したのかを説明した。 PC用DRAMを安く大量生産する韓国などにシェアで抜かれた日本半導体産業の言い分は、「経営、戦略、コスト競争力で負けた」「技術では負けていない」という2言に集約された。果たしてその言い分は正しいものだったのだろうか。 「技術では負けていない」という評価は、ある意味では正しい。なぜならば、高品質DRAMを生産する技術では、確かに韓国や米国に負けていなかったからである。つまり、高品質DRAMにおける過去の成功体験が、日本半導体のトップたちが声高に「技術では負けていない」と主張する背景にある。 このようなことが、本連載の第1回で紹介したように、少しでも日本半導体の技術にケチをつけると、「湯之上の言うことは全て間違っている」というような罵倒が飛んでくる原因となったのである。 しかし、この成功
2009年8月に『日本「半導体」敗戦』(光文社)を出版したところ、極めて大きな反響があった。この本で記した日本半導体産業が凋落した原因と、そこから得られる教訓、復活への処方箋などを、より多くの人に知っていただきたい。そこで本コラムでは、『日本「半導体」敗戦』の内容を改めて整理すると同時に、出版時に盛り込めなかった話、最新情報などを加えて皆さんにお伝えする。 前回は、半導体技術者への聞き取り調査などをもとに、日本半導体が「過剰技術で過剰品質を作る病気」にかかっている根拠を具体的に示した。 では、日本半導体は、いつ、どうして、このような病気にかかったのだろうか? 今回は、前篇・後編の2回に分けて、日本半導体(特にDRAM)の栄枯盛衰の歴史を振り返り、「過剰技術で過剰品質を作る病気」の根源を突き止めたい。病気の感染源を特定することにより、最適な治療方法が判明すると思われるからだ。 前篇では、まず
2009年8月に『日本「半導体」敗戦』(光文社)を出版したところ、極めて大きな反響があった。この本で記した日本半導体産業が凋落した原因と、そこから得られる教訓、復活への処方箋などを、より多くの人に知っていただきたい。そこで本コラムでは、『日本「半導体」敗戦』の内容を改めて整理すると同時に、出版時に盛り込めなかった話、最新情報などを加えて皆さんにお伝えする。(前回はこちら) 病気を治療するために必要なことは何か? それは、第1に正しい診断、第2に病気であることの自覚、第3に(これが最も重要だが)治療しようという決意である。 例えば、あなたが、咳が止まらないとする。風邪かもしれない。今はやりの新型インフルエンザかもしれない。肺炎、または結核の可能性もある。ここで、適当な風邪薬を飲んだりして誤魔化していると、治るものも治らない(場合がある)。やはり、治療するためには、咳が出る原因を突き止めた上で
2009年8月末、光文社より『日本「半導体」敗戦』という書籍を出版した。自分で言うのもおこがましいが、極めて大きな反響があった。実際に起きたことを列挙してみる。 (1)全く面識のない数十人の読者の方から、メールで感想などのお便りをいただいた。 拙著には、メールアドレスやホームページのURLを記載していない(記載したくなかったのではなく、編集者が忘れたためである)。にもかかわらず、読者の方がわざわざ検索して連絡をくれたようだ。そして、多くの方から、「共感した」「驚いた」「面白かった」というお褒めの言葉をいただいた。 (2)出版関係者の話によれば、「半導体と名のつく本は売れない」らしい。そのため、光文社に採択されるまで、半年ほど出版社を回ったが、どこからも断られた。しかし、光文社から出版後、わずか3カ月間で、3刷り目の増刷となった。 出版関係者の話によれば、ベストセラー作家ならいざ知らず、無名
AppleがPowerPCアーキテクチャから手を引き、Intelのx86系に切り替えていくことを発表してから、この6月で4年がたった。当時AppleとIBMの間の討議にも加わっていた人物が、なぜこのような事態が起こったかについて見解を語った。 Appleは2005年6月、重大な転機となる発表を行った。それは、IBMおよびMotorolaとの長きにわたる関係に終止符を打つものだった。このときAppleの最高経営責任者(CEO)Steve Jobs氏は、切り替えの要因はIntelの優れたロードマップにあるとしていた。 Jobs氏は当時の声明で次のように語っている。「将来を見越し、Intelのプロセッサロードマップが圧倒的に強力であると判断した。PowerPCへの移行から10年、Intelの技術がこれからの10年も最高のパーソナルコンピュータを作ってゆくことを助けてくれると考えている」 よく挙げ
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