「おかえりなさい」 そう言って出迎えてきたノセットに、フリッツは安らいだ笑顔で応じた。 「ただいま」 家の中に入り、リビングの机に包みを乗せる。 「うん? なんの荷物?」 「料理はできてる?」 ノセットの問いかけを無視してフリッツが言うと、ノセットはなにかを察したのか、 「できてるよ。今温めなおすから、ミュセットと遊んでて」 と、笑顔をつくって言った。 ミュセットが、座っていた椅子から立って走り寄ってくる。 「おとーさん! あのね、今日は抱っこして……」 いつも活発なミュセットにしては、少しおかしな要求だった。 「いいよ。おいで」 フリッツはソファに座って膝を叩いた。 ミュセットは、横から膝に乗り、上目遣いに父親を見ると、 「おとーさん、お仕事ってつらいの?」 と、奇妙な質問をしてきた。 「べつに、つらくないよ。疲れているように見えるかい?」 「なんか、げんきがないから」 「そうか……」
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