「ほほぅ。これはこれは」 目の前の盆を見て、俺は思わず頬を緩めた。 じっくりと舐めるように見つめ、腹の虫がぐぅと鳴る。 「うまそうだなっ!」 「ああ。美味いぞ、こいつは」 リリスの素直な感想に、俺も頷いた。ごくりと唾を飲み込み、盆の上の料理を眺める。 牛タン。淡いピンク色に光り輝く肉の表面が、俺をこれ以上なく誘ってきていた。 「……焼き肉のタンとは全然違うな」 箸で持ち、そのずっしりとした重さにびっくりする。 薄くスライスされた焼き肉向けのタンと違い、見るからに肉厚な固まりだ。推測するに、焼き肉の五枚分程の厚みだろうか。 「どれ」 とりあえず、食べないことには始まらない。俺はどきどきする鼓動を抑えながら、牛タンにかぶりついた。 ぶつりと、歯が肉に食い込む感触が脳を揺らし、噛みきる頃には俺はうなり声を上げていた。 「お、おお。これはっ」 驚いた。しかしまだ確定ではない。俺は審議を確かめるべく
![おひとりさまでした。 ~アラサー男は、悪魔娘と飯を食う~ - 第11話 憂鬱な雨の日に。専門店の牛タン定食 (後編)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/3e2af1d2c6c312a1f00837b1f852229fa0336350/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fsbo.syosetu.com%2Fn3473cm%2Ftwitter.png)