山口直彦 「活字離れ」「出版不況」が叫ばれて久しい書籍業界だが、いま「なろう系」と呼ばれるジャンルが活況を呈している。 縛りが少なく、斬新なアイデアを盛り込めることが大きなメリットだったが、作品が増えるにつれて新たな問題点も見えつつある。 本稿は、とある「なろう系」作家が投稿した、一風変わった短篇作品を取り上げ、「なろう系」が露呈している問題点を議論する。 はじめに――小説書き(アマチュア)が作家になる話 Webサイト「小説家になろう(1)」(以下、「小なろ」と略記)は株式会社ヒナプロジェクトが運営する小説投稿サイトである。作品投稿・閲覧は誰でも無料でおこなうことができ、ジャンルもほぼ問わない(2)。投稿者・読者の双方に使い勝手がよかったことから人気に火がつき、投稿作品数は約79万作品(3)。SimilarWebが分析・公開している日本の上位Webサイトランキングによれば、「小なろ」のアク