昼過ぎ、南南西の風が厚い雨雲を運んで来た。 一瞬にして空を覆うスコール。昔、パダンのホテルの部屋から眺めた景色に似ていた。 程なく大粒の雨が、風に揺れる街路樹の葉を叩き、行き交う車のライトが、濡れたアスファルトに滲んだ。 あの日も、心を閉ざして、嵐が過ぎるのを待つしかなかった。そして僕らが愛した優しい日々は、 いつしか物語に似た過去に変わった。 突然の電話のコールが、7回を数えて沈黙した。 ほんの少し間、鼓動と秒針のシンクロが乱れた。 深く息を吸いゆっくりと吐いた。 冷たいレモネードをひと口飲んだ。 やがて雨雲は走り去り、パールモーブの黄昏が辺りを包んだ。 何処か遠く、同じこの空の下、君は今、移ろう季節を、誰と見ているのだろう。 1986年の眩しい夏は終わろうとしていた。 昔作った歌を基に、洒落たショートストーリーを書いてみようと考えたが、残念なことに訳の分からない散文しか出来なかった。そ