タグ

ブックマーク / booklog.kinokuniya.co.jp (185)

  • 『対人恐怖』内沼幸雄(講談社現代新書) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「羞恥の発掘」 今回の枕の一冊は、”Seeing and Being Seen: Emerging from a Psychic Retreat” (John Steiner, Routledge, 2011) 。防衛の牙城に引き籠る心的事態(Psychic Retreat)の解明に勤しんできたシュタイナーの第二作だ。日でも、『見ることと見られること-「こころの退避」から「恥」の精神分析へ』(岩崎学術出版社、2013)というタイトルで翻訳出版されている。フロイトとメラニー・クラインの血統を示す、著者の存在証明の書という印象を受けた。妄想分裂ポジションと抑うつポジションというクラインの発達シェーマを基盤に、エディプス・コンプレックスをはじめ、同業者内ですら悪名高い「死の欲動」を読み直していることが目新しく、臨床例で肉づけされていて読み易い。精神分析界のキーワー

    『対人恐怖』内沼幸雄(講談社現代新書) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2014/01/08
  • 『シンメトリーの地図帳』 マーカス・デュ・ソートイ (新潮社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 今回、途中で放りだしたのも含めると群論関係のを13冊手にとったが、1冊だけ選べといわれたら、迷わず書を選ぶ。わかりやすいというだけでなく、文章に含蓄があり、天才たちのエピソードの紹介にも人間的な奥行が感じられるのだ。書は数学の啓蒙書を超えて一個の文学作品になっているといっていいだろう。 著者のマーカス・デュ・ソートイは現役の数学者で、群論と整数論を専門にしている。BBCの科学番組にたびたび出演していて(未見であるが、NHKから「オックスフォード白熱教室」として放映されている)、最初の著書『素数の音楽』は世界的なベストセラーになった。 書は数学者の一人語りの体裁をとっていて、40歳の誕生日の2005年8月から翌年7月までの1年間の出来事――家族旅行で訪れたアルハンブラ宮殿に平面で可能な17種類のシンメトリーを探したこと、沖縄で開かれた群論の小さな学会、共

    『シンメトリーの地図帳』 マーカス・デュ・ソートイ (新潮社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2014/01/08
  • 『謎のチェス指し人形「ターク」』 スタンデージ (NTT出版) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 ポオが26歳の時に書いたエッセイに「メルツェルの将棋差し」がある。 メルツェルの将棋差しとはメルツェルという興行師が1826年にアメリカに持ちこんだチェスをさす自動人形(オートマトン)のことで、ニューヨークやボストン、フィラデルフィアなどを巡業して好評を博した。ポオが見たのは10年近くたった1835年のことで、翌年、中に人間がはいっているのだろうと推理した件のエッセイを雑誌に発表した。モールスが電信の公開実験をやった頃のことである。 邦訳は小林秀雄がボードレールの仏語訳から重訳し、大岡昇平が補訂したものが『ポオ小説全集1』にはいっている。後に書かれる「モルグ街の殺人」や「黄金虫」を思わせる水際立った推理で、今読んでも面白い。 メルツェル自身もすぐれたオートマトン製作者だったが、チェス指し人形はメルツェルが作ったものではない。作ったのはヴォルフガング・フォン・ケンペレン

    『謎のチェス指し人形「ターク」』 スタンデージ (NTT出版) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2013/01/21
  • 『会社員とは何者か? ― 会社員小説をめぐって』伊井直行(講談社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「立派にならない評論」 文芸誌に一年以上にわたって連載された「会社員小説をめぐって」がになった。変わった評論である。表題のとおり、とりあげられるのは「会社員」の出てくる作品ばかり。夏目漱石から源氏鶏太、楡周平、庄野潤三、山口瞳、坂上弘。より現代的なところでは池井戸潤、津村記久子、絲山秋子、長嶋有、盛田隆二。カフカやメルヴィルも出てくる。岩崎彌太郎も出てくる。あくまで「会社員」であり、「サラリーマン」ではないところがミソだという。 実は筆者は何度かこの連載をのぞいたことがあったのだが、今ひとつ入り込めなかった。それが今、になってみると、ほとんど同じ内容のはずなのに、以前とちがって何だか足下から吸い込まれるような妙な誘惑性がある。不思議な気分だ。しかも読み進めていっても「このはいったいどこがおもしろいのか?」という疑問がいっこうに消えない。どうやら自分はこの評論をお

    『会社員とは何者か? ― 会社員小説をめぐって』伊井直行(講談社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2012/06/04
  • 『紙と印刷の文化録 — 記憶と書物を担うもの』尾鍋 史彦(印刷学会出版部) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「紙と人間の親和性は永遠か?」 待ちに待っていたが刊行された。『印刷雑誌』連載中から、になるのをずっと待っていたものだ。紙と印刷について、文化歴史、科学技術面からの考察をはじめ、9.11やWikiLeaks問題といった政治経済まで、じつに幅広い話題が採り上げられ、毎回読むのが楽しみな連載だった。 書は、前日印刷学会会長であり東京大学名誉教授(製紙科学)である “紙の専門家” 尾鍋史彦氏が、月刊『印刷雑誌』に1999年から2011年末まで13年間にわたって連載した「わたしの印刷手帳」156編のうち、70編を抜粋し分野別にまとめたものだ。 章立ては「第1章 印刷物の影響力」「第2章 情報と紙の関係」「第3章 産業としての印刷と紙」となっており、各章の終わりには書き下ろしで総括的な文章が掲載されている。 著者が製紙科学の専門家だから、ひたすら紙を礼賛した内容だと思

    『紙と印刷の文化録 — 記憶と書物を担うもの』尾鍋 史彦(印刷学会出版部) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2012/04/04
  • 『安部公房の都市』苅部直(講談社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「安部公房は苦手ですか?」 安部公房が苦手、あるいは手に取ったことがないという人にこそ読んでもらいたいだ。よくできた評論というのはたいていそうなのだが、書もこちらに何かを強制するということがない。「まあ、こんな話もあるわけですよ。別に無理して聞かなくてもいいけどね」というだけで、「是非、公房のファンになれ!」とも言われないし、「しっかり読め!」「わかってないな、バカ!」と叱られることもない。小説の粗筋だって適当に聞き流していればいいようだし、むしろ安部公房なんか忘れてほかのことを考えたっていい。それで油断していると、いつの間にか著者の術中にはまっている。 タイトルにあるように書の切り口は「都市」である。「あ、来た」と警戒する人もいるかもしれない。構造だの資だのといったナンカイな用語が頻出して、偉大なる安部公房の像が立派な文明論的台座に載せられるのではないか、と

    『安部公房の都市』苅部直(講談社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2012/03/13
  • 『これからの日本のために「シェア」の話をしよう』三浦展(NHK出版) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「シェア型消費からシェア型社会へ」 奥付によると、書の発行日は2011年2月25日となっている。つまり東日大震災が起きる2週間前である。「シェア」という消費形態への移行を踏まえつつ書は書かれているが、3・11により、「シェア」せざるを得ない状況が立ち現れ、さらに「シェア」することが生み出す価値がクローズアップされた。図らずも書が提起するものの意味はさらに大きなものになったといえる。 著者の三浦展(みうら・あつし)氏は消費社会研究家、マーケティング・アナリストで、『下流社会』(光文社新書)に代表されるように、社会状況を鋭く分析した書籍や新しいライフスタイルや消費生活を提案する書籍を数多く出版している。 多くのデータや図式を駆使しながらも、著者の主張は至ってシンプルで「私有主義的消費からシェア型消費へ」というものだ。実のところ、著者は「共費」という概念を用いて10

    『これからの日本のために「シェア」の話をしよう』三浦展(NHK出版) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2012/02/09
  • 『石の記憶』田原(思潮社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「《は》の効用」 すごい詩人が現れたものだ。これなら現代詩アレルギーのひとにも自信を持って薦められる。おおらかで、力強くて、土の中から生えだしてきたかのような安定感がある。それでいて実に柔軟。間接がやわらかいのだ。まさに一流の運動選手のような肉体を持った言葉である。 日語による第一詩集『そうして岸が誕生した』から、巻頭の「夢の中の木」を引いてみよう。 その百年の大木は 私の夢の中に生えた 緑色の歯である 深夜、それは風に 容赦なく根こそぎにされた 風は狂った獅子のように 木を摑んで空を飛んでゆく 夢の中で、私は 強引に移植されようとする木の運命を 推測できない 木がないと 私の空は崩れ始める 木がないと 私の世界は空っぽになる こういう自然に憑依されたような言葉で語ることのできる詩人を、筆者はそれほど知らない。近いのは新川和江か。変に頭を使ってはいけないということを

    『石の記憶』田原(思潮社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2012/01/31
  • 『Cooking for Geeks―料理の科学と実践レシピ』ジェフ・ポッター・著/水原文・訳(オライリー・ジャパン) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 温泉卵を作ろうとネットにあたると、沸騰したら火を止めて放置する、あるいはそのお湯に片栗粉を入れて湯の温度を保つという〝裏技〟、そのほか、魔法瓶を使う、電子レンジを使う、カップラーメンの容器を使う、一度卵を凍らせる等々、じつにいろいろな方法があることがわかる。 最も熱に敏感なタンパク質はオボトランスフェリンで、これは約144°F /62°Cで変成をはじめる。卵白アルブミンという別のタンパク質は、176°F /80°C程度で変成する。これらは、卵白に最も多くみられるタンパク質だ。オボトランスフェリンは卵白の14%を、卵白アルブミンは54%を占めている。温泉卵と固ゆで卵の違いもこれで説明できる。卵を十分に長い時間176°F /80°Cに保つと、卵白は硬くなる。しかしこれ未満の温度では、卵白アルブミンは丸まったまま(筆者註・未変成のタンパク質は丸く折りたたまれた形をしており、

    『Cooking for Geeks―料理の科学と実践レシピ』ジェフ・ポッター・著/水原文・訳(オライリー・ジャパン) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2012/01/31
  • 『真珠の耳飾りの少女』トレイシー・シュヴァリエ(白水社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「魅惑の少女の正体は?」 フェルメールの「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」に出会ったのは、1981年の事だった。ようやくパリに行く切掛けをつかみ、アリアンス・フランセーズで3ヶ月間フランス語を学んでいる時だった。フェルメールの絵を見るためにオランダへ旅行し、デン・ハーグのマウリッツハウス美術館の狭い階段を上った小さな部屋にその絵はあった。一緒に行った友人は他の部屋を回っているので、誰もいないその小さな部屋で、近くの窓枠に腰掛けながら小一時間少女の目を見つめていたのを思い出す。至福の時だった。 フェルメールのことを知ったのは、福永武彦の随筆だった。その時から、フェルメールの絵に会いたくて仕方がなかった。パリに惹かれたのはロートレアモンやシュールレアリストたちの作品のせいだが、フェルメールも一因になっている。この絵が夏に日で公開されるらしい。待ち望んでいる人も

    『真珠の耳飾りの少女』トレイシー・シュヴァリエ(白水社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2012/01/31
  • 『柳田国男と今和次郎―災害に向き合う民俗学』畑中章宏(平凡社新書) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「震災と向き合った二人の民俗学者」 震災後、今和次郎(こん・わじろう、1888-1973)をめぐる書籍が相次いで出版された(書の他に、今和次郎『今和次郎採集講義』青幻舎)。今和次郎は主に大正から昭和初期にかけて活躍した民俗学者である。民俗学研究としては民家や服飾の分野で業績を挙げたが、現在でも広く知られているのは、主として今が提唱した「考現学」(モデルノロヂオ)によるものだろう。 今の考現学とその後の系譜についてはここでは触れないが、なぜいま今和次郎なのか。その理由は、彼の災害に対するまなざしと実践にある。 書はⅡ部構成となっており、Ⅰ部で柳田国男(やなぎた・くにお、1875-1962)を、Ⅱ部で今和次郎について論じている。この二人は柳田らが発起人となった研究会「白茅会」(はくぼうかい)を通じて師弟関係にあったといわれる。だが、著者が今和次郎を括弧つきで柳田の「弟

    『柳田国男と今和次郎―災害に向き合う民俗学』畑中章宏(平凡社新書) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2012/01/05
  • 「scripta」紀伊國屋書店出版部の本の書評ブログ : 『ぼくはお金を使わずに生きることにした』マーク・ボイル著/吉田奈緒子訳(紀伊國屋書店)

    molvisp
    molvisp 2012/01/05
  • 『昭和の読書』荒川洋治(幻戯書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「こわい批評家」 もう十年以上前になるが、あるパーティで荒川洋治さんをお見かけしたことがある。「下手に俺に話しかけるな」という風情が漂っていて、いい意味で「こわい人」だなと思った。もちろん、筆者は話しかけなかった。 文章を書く人が「こわい人」であるのはとても大事なことのような気がする。最近は「いい人」でないとなかなか生き延びていけない。多弁で、裏表がなくて、私生活もオープンで、パスタを茹でたり、SUVに乗ってたり、メールの返信も早いような「いい人」。そんな「いい人」の書くものは、わかりやすくて楽しいかもしれないが、一番文章にしてもらいたいような薄暗い部分にはまず到達しない。 書の『昭和の読書』というタイトルの意味は、読み進めていくと少しずつわかってくる。表向きそれは、昭和の作品や作家を語るということ。昭和のの読み方、文章の書き方、さらには生き方を振り返るということ

    『昭和の読書』荒川洋治(幻戯書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2011/11/23
  • 『The Geeks Shall Inherit the Earth』 Alexandra Robbins(Hyperion Book) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    molvisp
    molvisp 2011/11/23
  • 『Unwritten Laws』Hugh Rawson(Castle ) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    molvisp
    molvisp 2011/11/23
  • 『フェルメールのカメラ』ステッドマン・フィリップ著 鈴木光太郎訳(新曜社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 恐るべき実験精神の持主フェルメールの「絵画芸術」が国立西洋美術館に来たとき、半時間ほどその前に立って眺めていたことがある。フェルメールの絵には必ず光源が示されているが、歴史の女神クリオを前に筆を動かす画家を描いたこの絵にも女性の左手奥から光が射し込んでいる。その光が何から出ているかは画面手前にあるカーテンのようなもので遮られて見えないが、私にはそれが窓の明かりではなく人工的なライトのように感じられて仕方がなかった。 もちろん電球は発明されていなかったから、そんなことはあり得ないが、光源のありかが隠されていることでかえって光の強さが際立ち、画家のアトリエというより写真家のスタジオを想像をさせたのだった。フェルメールは「窓辺で手紙を読む女」「地理学者」「牛乳を注ぐ女」「真珠の首飾り」など、窓から差し込む光のなかでひとつの行為に熱中する人の姿を繰り返し描いている。どの絵にも

    『フェルメールのカメラ』ステッドマン・フィリップ著 鈴木光太郎訳(新曜社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2011/02/05
  • http://booklog.kinokuniya.co.jp/hasegawa/archives/2010/08/post_11.html

    molvisp
    molvisp 2010/10/15
  • 『文豪はみんな、うつ』岩波明(幻冬舎) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「〝いやな奴〟を語る」 「文豪はみんな、うつ」と言われたら、「そりゃ、そうでしょう」と間髪おかずに応じてしまいそうな気がする。小説家には精神的な屈のイメージがよく似合う。健康優良児で明朗快活な小説家なんて想像できない。しかし、問題はそこから先だ。そんなステレオタイプそのままのお題を掲げて、この著者はいったいどんな新しい話をしようというのか? そのあたりが気になって手に取った書である。結論から言うと、あまり「新しい話」はなかったのだが、にもかかわらずけっこうおもしろく読んでしまった。 ひと言で言えば、書は近代文学の有名人をネタにしたゴシップである。姦通、病気、家系の秘密、成功と失敗、貧乏、絶望、死。扱われるのも漱石、芥川、中也、藤村、太宰、川端など、いずれもフルネームで言わなくてもすぐ誰のことかわかるような作家である。みな、私生活にちょっと変わったところのあった

    『文豪はみんな、うつ』岩波明(幻冬舎) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2010/10/15
  • 『快傑デカルト―哲学風雲録』 ダヴィデンコ (工作舎) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 フランスのジャーナリスト、ディミトリ・ダヴィデンコが書いたデカルトの伝記小説で、原題を直訳すれば『醜聞の人デカルト』である。 読みはじめて啞然とした。一般に流布しているデカルト像とあまりにも違うのだ。語り口も講談調でまさに快傑デカルト、哲学風雲録である。 一般的なデカルト像というと裕福な法服貴族の次男坊に生まれるが、生来病弱だったために朝寝坊の習慣をつづける。名門校を出てから当時の貴族のならわしで軍隊にはいり、戦闘義務のない無給の将校となって箔をつけ、母親の財産を相続してからはオランダに移住し、孤独のうちに哲学の研究をつづける。スウェーデン女王の招聘で53歳にしてはじめて宮仕えをするが、軍隊時代も含めてずっと朝寝坊をつづけていた身にとって朝5時から宮殿に伺候しなければならない生活がこたえたのか半年で急死する、といったところか。 ところがダヴィデンコの描くデカルトは貴族

    『快傑デカルト―哲学風雲録』 ダヴィデンコ (工作舎) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2010/10/15
  • 『道徳哲学序説』ハチスン(京都大学学術出版会) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「〈リベラリズム〉の教科書」 原著 A Short Introduction to Moral Philosophy は1747年刊。一年前に出た翻訳だが、画期的な邦初訳だし、古典はいつまでも古びないのだから、まだ湯気が立っていると言ってもよかろう。私としては、前々から取り上げたいと思っていたので、一年がかりでやっと課題を果たせてヨカッタと、胸をなでおろしている。 書は、「近代社会思想コレクション」叢書の一つである。第一巻のホッブズ『市民論』といい、書といい、立派な訳業だなあと感服させられる。こういう価値ある出版企画が存続するかぎり、翻訳大国日の将来は明るい。プーヘンドルフやシャフツベリーの著作も、ぜひ日語で読みたいものだ。ついでにホッブズ『物体論』と『人間論』も――、と欲は深くなるばかりである。 フランシス・ハチスンは、十八世紀前半にスコットランドで活躍し

    『道徳哲学序説』ハチスン(京都大学学術出版会) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG
    molvisp
    molvisp 2010/10/15