ブックマーク / realsound.jp (11)

  • 話が飛ぶ人は体内に複数の時間が流れているーーADHD当事者の作家が描くエッセイ『あらゆることは今起こる』

    小学校1年生のときの教室。クラスメイトたちの当たり前を、自分だけがさっぱり理解できず、それを周囲には悟られないように平静を装いながら、内心はげしく動揺している。もしかしたら自分は気づかないうちに、どこかに存在する「並行世界」に迷い込んだのかもしれない。そう思うと、次第に怖くなってくる。 小説家・柴崎友香の『あらゆることは今起こる』は、そんな「小説の始まり」のようなエピソードから始まる。でも、これは「小説」ではない。2021年9月にADHD(「注意欠如多動症」)の診断を受けたという柴崎が書き下ろした、発達障害をめぐるエッセイだ。医学書院の「ケアをひらく」シリーズに収められているのだが、そのコンセプトにたがわず、ひじょうに平易な言葉遣いで、発達障害の特性を知ることができる。著者自身が発達障害についての考えを深める過程と並行して書かれていて、ADHDという言葉を耳にしたことはあっても、充分に考え

    話が飛ぶ人は体内に複数の時間が流れているーーADHD当事者の作家が描くエッセイ『あらゆることは今起こる』
    mom0tomo
    mom0tomo 2024/07/05
  • BLの源流『JUNE』元編集長・佐川俊彦インタビュー「女の子は美少年の着ぐるみを着ると自由になる」

    1978年に『Comic Jun』として創刊され、同名ブランド「JUN」があったことから第3号より『JUNE』と改題されたこの雑誌は、女性向けの男性同性愛をテーマとした点で後のBL(ボーイズラブ)の源流となった。かつて“JUNE”は、このジャンルの総称でもあったのである。マンガ中心の同誌は一時休刊をはさみつつ1980年代に熱心なファンを獲得し、1982年より姉妹誌『小説JUNE』も発行された。だが、BL台頭後はテイストの違いから退潮を余儀なくされ、2013年に『JUNE』ブランドの雑誌は姿を消した。『JUNEの時代 BLの夜明け前』は、アルバイト時代に同誌を企画して編集に携わり、やがて編集長となった佐川俊彦の回顧録である。彼は、時代の推移をどのように見つめていたのか。(円堂都司昭/6月10日取材・構成) 改題前の創刊2号と改題後の3号 ――若い頃からマンガに親しむなかで、『JUNE』という

    BLの源流『JUNE』元編集長・佐川俊彦インタビュー「女の子は美少年の着ぐるみを着ると自由になる」
    mom0tomo
    mom0tomo 2024/07/01
  • 菊地成孔×荘子it『構造と力』対談 「浅田彰さんはスター性と遅効性を併せ持っていた」

    浅田彰『構造と力 記号論を超えて』(中公文庫) 1980年代のニュー・アカデミズムを代表する一冊『構造と力 記号論を超えて』が中公文庫で文庫化され、大きな反響を呼んでいる。批評家の浅田彰がドゥルーズなどのポストモダン・現代思想を明晰に体系化した同書は、1983年の初版刊行当時、社会現象になるほどの大ベストセラーとなった。 40年ものあいだ読み継がれてきた名著の文庫化にあたって、リアルサウンドブックでは、音楽家・文筆家の菊地成孔氏とDos Monosのラッパー・トラックメイカーの荘子it氏が書について語り合う対談を行った。菊地氏は2003年、自身が主催するバンド・DC/PRGで『構造と力』と題するアルバムを発表するなど、浅田氏から影響を受けている。荘子it氏は、学生時代に菊地氏の著作などから遡る形で書『構造と力』を知って、読み耽ったのだという。第一線の音楽家の二人は、書をどのように読ん

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  • 『哀れなるものたち』が映し出す“現在”の問題 奇妙な物語と過激な描写を通して伝えること

    野蛮さと洗練されたセンスという、一見矛盾した要素を併せ持つスタイルが、観る者たちの心をざわつかせ、類まれな知性と才能でアートフィルム界に、その名を刻んできたヨルゴス・ランティモス監督。『ロブスター』(2015年)、『聖なる鹿殺し』(2017年)、『女王陛下のお気に入り』(2018年)と、その手腕はますます冴えを見せ、名だたる映画賞を次々に獲得している。 そして、ついにヴェネチア国際映画祭の最高賞、金獅子賞に輝いたのが、『哀れなるものたち』である。さらにはゴールデングローブ賞でも複数の受賞を果たし、アカデミー賞では、作品賞、監督賞、主演女優賞を含む11部門にノミネートされ、これまで以上の快進撃を見せている。それだけでなく、アメリカでの興行収入も好調で、作は、もはやランティモス監督を、アートフィルムの枠を超えた存在に押し上げることとなった。 それもそのはずで、作『哀れなるものたち』には、“

    『哀れなるものたち』が映し出す“現在”の問題 奇妙な物語と過激な描写を通して伝えること
  • 『バービー』は娯楽大作かつ現代を代表する圧倒的な映画に 作品に込められた強度と信念

    映画『バービー』と『Oppenheimer(原題)』を同日に観るというネットミーム「バーベンハイマー」がアメリカで流行し、国の『バービー』SNS公式アカウントが核兵器が使用されたビジュアルを面白がるような非公式ポスターに賛意を示してしまった件が、日国内で小さくない物議を醸すこととなった。これは唯一の戦争被ばく国である日で作品を楽しみにしていて、核兵器の被害にも心を痛める観客たちにとって、残念なことだったといえるだろう。 作品の製作者たちは宣伝の過失には直接関係がなく、ワーナー・ブラザースが現時点でメディアを通じて謝罪し、幹部が来日して謝罪するという対応をとったとはいえ、この件でストレスを感じたり対応に不信感を覚えた観客が鑑賞しない選択をとることは、もちろん尊重されるべきだ。その上で主張したいのは、作『バービー』が、娯楽大作として公開されながら、現代を代表する圧倒的な映画だったという

    『バービー』は娯楽大作かつ現代を代表する圧倒的な映画に 作品に込められた強度と信念
    mom0tomo
    mom0tomo 2023/08/13
  • 村上春樹による村上春樹のリマスターは成功したのか――『街とその不確かな壁 』評

    私は村上春樹の小説を比較的熱心に読んできたほうだと思うが、特に2010年前後に出た『1Q84』三部作以後の作品には、毎度首をかしげざるを得なかった。なぜこの小説が書かれねばならなかったのか、その動機やコンセプトが判然としないまま、いかにも村上春樹的なキャラクターが村上春樹的な性愛と村上春樹的な壁抜けをひたすら擦り切れるまで反復するばかり――しかも、文体はかつての弾力性やスピード感を失い、キャラクターも総じて精彩を欠く。宇野常寛もnoteの記事(『街とその不確かな壁』と「老い」の問題ーー村上春樹はなぜ「コミット」しなくなったのか(4月17日追記))で同じようなことを書いているが、私も村上のこの低調な自己模倣モードには耐え難いものを感じていた。 むろん、以前の作品と似ていることが一概に悪いわけではない。例えば、小津安二郎の映画は毎回どれも似たようなキャラクターばかり登場するが、それでも十分面白

    村上春樹による村上春樹のリマスターは成功したのか――『街とその不確かな壁 』評
  • 千葉雅也が選ぶ「宮台真司の3冊」 強く生きる弱者ーー宮台社会学について

    社会学者・宮台真司がリアルサウンド映画部にて連載中の『宮台真司の月刊映画時評』などに掲載した映画評に大幅な加筆・再構成を行い、書籍化した映画批評集『崩壊を加速させよ 「社会」が沈んで「世界」が浮上する』が、リアルサウンド運営元のblueprintより刊行中だ。同書では、『寝ても覚めても』、『万引き家族』、『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』、Netflixオリジナルシリーズ『呪怨・呪いの家』など、2011年から2020年に公開・配信された作品を中心に取り上げながら、コロナ禍における「社会の自明性の崩壊」を見通す評論集となっている。 今回、リアルサウンドでは同書の刊行を記念し、識者・著名人が宮台の批評との出会いを語るシリーズを企画。自身に大きな影響を与えた3冊を挙げてもらった。第2回は、哲学者・小説家の千葉雅也による、「弱者の強者性」を説く宮台社会学から学んだことについて

    千葉雅也が選ぶ「宮台真司の3冊」 強く生きる弱者ーー宮台社会学について
    mom0tomo
    mom0tomo 2021/06/04
  • 『エヴァ』×宇多田ヒカルの14年を辿る 「One Last Kiss」が告げる美しい世界の終幕

    そして、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の主題歌「One Last Kiss」は、シリーズ完結作のエンディングを飾るにふさわしい名曲だ。心地よく飛び跳ねるビート、豊かな低音を響かせるベースライン、凛とした強さと今にも壊れそうな脆さを内包したメロディのなかで彼女は、〈誰かを求めることは/即ち傷つくことだった〉〈忘れられない人〉というラインを描き出す。全てのフレーズが『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のストーリーにつながると同時に、自己と他者の関係性の質ーー完全に理解し合えることはなく、常に孤独と向き合わざるを得ないーーを美しく際立たせるこの曲は、“エヴァ×宇多田”のシンクロ率がさらに高まっていることを告げている。 共同プロデューサーにA.G.COOKを迎え、彼がプロデュースを手がけたチャーリー・XCXに象徴される“生々しい手触りエレクトロサウンド”を体現していることにも注目してほしい。特に楽

    『エヴァ』×宇多田ヒカルの14年を辿る 「One Last Kiss」が告げる美しい世界の終幕
  • 宇多田ヒカル『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』主題歌が今胸に響く理由 あらゆる人々の寂しさを受け止める“願いの歌”

    『:序』は内容的にTV版シリーズの序盤の物語をほぼなぞったもので、主人公の碇シンジは、疎遠関係にあった父・碇ゲンドウに突然理不尽とも言える役割(エヴァンゲリオンに搭乗して使徒と戦うこと)を担わされ、そこから逃げ出したい気持ちや自意識との葛藤、家族を含む他者との関係性の軋轢に揉まれながら、悩み、もがき、苦しむことになる。その従来の主人公(ヒーロー)像からかけ離れた不安定な姿は、現代社会を生きる多くの人にとって鏡のように映るかもしれないし、あるいは「トップアーティスト」という孤高の存在だったが故に、どの曲のなかにもある種の「他者とのディスタンス」を内在させていた、(2007年当時の)宇多田ヒカルとも共鳴する部分があったのだと思う(余談だが、宇多田は楽曲を発表する少し前の2007年3月に、映像作家の紀里谷和明との離婚を経験している)。 だからこそ、『:序』のラストを飾るテーマソング「Beaut

    宇多田ヒカル『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』主題歌が今胸に響く理由 あらゆる人々の寂しさを受け止める“願いの歌”
  • 『シン・エヴァ』ラストカットの奇妙さの正体とは 庵野秀明が追い続けた“虚構と現実”の境界

    稿には、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の結末を含む内容への言及があります。 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のラストカットは、とても奇妙な映像だ。しかし、それは嫌な奇妙さではない。 宇部新川駅を空撮で撮影した実景映像がベースなので、実写映像と言えるかもしれない。しかし、その現実を切り取ったはずの実景の映像に現実でないものが交じり合っている。 走り去るシンジとマリは手描きのアニメーションだ。よく見ると道行くモブキャラも大半がおそらくCGで作成された架空の通行人である。しかし、当に撮影時にいたであろう、自転車に乗った生身の人間や通りかかった車も存在している。そして、すでに引退した過去の車両が走っている。現実に存在するものと、存在しないもの、そして、かつて存在したものが同居している。シンジとマリは、CGのように実景と馴染ませるわけでもなく、3コマ打ちのアニメキャラとわかるようにそのまま存

    『シン・エヴァ』ラストカットの奇妙さの正体とは 庵野秀明が追い続けた“虚構と現実”の境界
    mom0tomo
    mom0tomo 2021/04/23
  • 全然知らない変な曲が無限に流れてくる! 韓国発「ポンチャックマシーン」のある暮らし

    唐突だが、ちょっと前にポンチャックマシーンを買った。これで1日24時間、常にポンチャック漬けである。おかげで毎日とても快調、どうだ羨ましいだろう……と自慢したところで、「ポンチャックマシーンって一体なんなんだよ!」という感じだと思う。すいません、今から説明します。 ポンチャックというのは、平たく言うと日でいう歌謡曲と演歌が混ぜ合わさったような韓国音楽ジャンルである。大抵は2拍子で、その上にチープなシンセサイザーなどから成るヘロヘロのメロディが乗り、(歌い手によっては妙にテンションが高い)韓国語のボーカルがさらにその上に乗るという構成だ。日でも90年代に「変な音楽」として紹介されたイ・パクサ(李博士)は、ポンチャックの代表的な歌手である。 韓国にはもうひとつ、トロットというジャンルもある。こちらはちょっとノリが異なり、リズムも3拍子や4拍子。歌い方もこぶしを効かせる感じがよく見られ、さ

    全然知らない変な曲が無限に流れてくる! 韓国発「ポンチャックマシーン」のある暮らし
    mom0tomo
    mom0tomo 2021/02/06
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