1989年、初めて世に送り出されたVTEC(可変バルブタイミング・リフト機構)は、量産自然吸気エンジン初となる排気量1リッター当たり100psを達成。それまでのエンジンでは成し得なかった日常域での使い勝手とスポーツ性を両立し、後のエンジン技術のトレンドに先鞭を付けると同時に、Hondaのコアテクノロジーとなっていった。 エンジンの歴史に改革をもたらしたVTECは、実は焼鳥屋の店頭で発想された。 エンジニアが眺めていたのは目の前で焼かれていた一本の「ねぎま」。店主が串を回すと鶏肉の間に挟まれた1本のねぎが下の炭に引っかかって動かず、鶏肉だけが回転した…エンジニアは閃いた。 それまでのエンジンの吸気メカニズムは、吸気側のカムシャフトの山がロッカーアームを駆動し吸気バルブを開閉する仕組みだった。吸気バルブの開きは常に一定で、バルブタイミングとリフト量は低回転から高回転までを一種類で対応していた。