「責任は俺がとるよ。だから、君たちは好きなようにやってくれ。いや、君たちが自由な発想で取り組まなければ、新しい船はできない」 防衛省技術研究本部の小野洋史がこう言ったとき、構造設計の部下である佐藤幹夫も成行英司も胸が熱くなった。 海上自衛隊が保有して運航する砕氷艦は、およそ25年に一度しか設計・建造されない。初代しらせが発注されたのは1979年。進水は1981年で、就役が始まったのは1982年11月だった。以来、毎年南極観測の支援任務に就くが、21世紀に入りさすがに老朽化が目立つようになっていく。 このため2004年、南極地域観測統合推進本部(本部長・文部科学大臣)輸送問題調査会議において新砕氷艦の基本スペックが作成される。 つまり、二代目しらせをつくることが正式に決まり、首席主任設計官をプロジェクトリーダーとする約10人の設計プロジェクトが2004年に発足した。小野は、このうちの構造設計