進化発生学者 倉谷滋が『ヘッケルと進化の夢』(佐藤恵子著)を読みつつ、毀誉褒貶の人ヘッケルに思いをはせる 2022年12月に『反復幻想──進化と発生とゲノムの階層性』を工作舎から上梓した倉谷滋さん。本のオビには「それでも発生は進化を繰り返す」!? ヘッケルが提唱し、いったんは葬り去られた発生反復説。その歴史をひもとき、進化モデルとしての現代的可能性に取り組んだ700頁超の意欲作です。 執筆に際して倉谷さんは、ヘッケルの生涯と思想の全体像にせまった科学史家 佐藤恵子さんの2015年の著作『ヘッケルと進化の夢』を再読し、さまざまな示唆を受けとったとのこと。 本書へのコメンタリーと、ヘッケルへのあふれんばかりのオマージュを倉谷さんに存分に書いていただきました。 エルンスト・ヘッケル(1834-1919)ヘッケルの人生に見る二面性倉谷滋 ヘッケルとは何者か多くの日本人が知る19世紀ドイツの生物学者
Split Fluorescent Proteins for Studying Protein-Protein Interactions By Mike Lacy Many, many techniques are available to assess protein-protein interactions. One popular approach is to fuse a protein of interest to each part of a split fluorescent protein (FP) and measure the signal produced when the candidate proteins’ interaction brings the pieces of the FP back together (Figure 1). This method
Alphabet傘下の人工知能企業であるDeepMindは、2018年にアミノ酸の配列情報からタンパク質の立体構造を予測するAI「AlphaFold」を開発しました。その後も改良が重ねられ、2021年7月にはオープンソース化もされたAlphaFoldが生物学の世界にもたらした影響について、科学誌のNatureでジャーナリストを務めるEwen Callaway氏が解説しています。 What's next for AlphaFold and the AI protein-folding revolution https://www.nature.com/articles/d41586-022-00997-5 タンパク質は筋肉の収縮・血液の輸送・光の感知・食物のエネルギー変換など、ほぼすべての生物学的プロセスに関連する物質です。そんなタンパク質は20種類のL-アミノ酸が鎖状に多数連結した立体的な
構造生物学界隈のみならず、生命科学研究者やAI研究者の界隈すら超え、一般のニュースにもなっているタンパク質立体構造予測プログラム「AlphaFold2」について、構造生物学を専門としない生命科学研究者を主な対象として、note記事を3回くらいに分けて書いてみたいと思います。 生体高分子の立体構造データベース「Protein Data Bank」に登録されている実験構造は今や18万を超えています(私が15年くらい前にこの分野の研究を始めた際は2万弱でした)。にも関わらず近年急速に増えるゲノム情報に対しては、実験構造の数は圧倒的に不足しているのが実情だと思います。そのような状況の中、AlphaFold2はこの分野における「福音」だと私は感じてます。実際、構造生物学者の私自身も、ここ数日AlphaFold2で遊んでいますが、今までの構造予測と比べて非常にレベルが高く、研究のアイディアがバンバン浮
理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター生体モデル開発チームの清成寛チームリーダー、金子麻里テクニカルスタッフらの研究チームは、有袋類[1]の遺伝子改変に世界で初めて成功しました。 本研究成果は、長く謎である有袋類の発生メカニズムをはじめ、ヒトを含む有胎盤類[1]には見られない有袋類特有の性質を遺伝子機能レベルで解明することを可能とし、有袋類の生物学的基礎研究だけでなく、哺乳類の進化や多様性の理解に大きく貢献すると期待できます。 今回、研究チームは、有袋類の中では比較的飼育の容易なハイイロジネズミオポッサム(以下、オポッサム)を対象に、遺伝子改変動物の作製に必須な一連の基盤技術を開発し、CRISPR/Cas9システム[2]によるゲノム編集技術を用いることで、遺伝子改変有袋類の作製に成功しました。さらに、改変された遺伝子が次世代にも受け継がれることを確認しました。 本研究は、科学雑誌『C
米Alphabet傘下の英DeepMindが、遺伝子配列情報からタンパク質の立体構造を解析するAI「AlphaFold v2.0」(以下、AlphaFold2)をGitHub上で無償公開し、ネット上で注目を集めている。Twitterを利用する生物系の研究者からは「革命的な成果だ」「これからの研究の前提が変わっていく」など、AlphaFold2の予測精度に対して驚きの声が相次いだ。 なぜAlphaFold2はこれほどの驚きや賞賛をもって迎えられているのか。タンパク質構造解析の難しさをひも解く。 未知の部分が多いタンパク質の構造 タンパク質は数十種類のアミノ酸からできており、配列によってさまざまな性質に変化する。例えば筋肉、消化酵素、髪の毛はそれぞれ役割が異なるが、いずれもタンパク質で作られている。タンパク質の構造が分かれば、生体内の化学反応の理解が進む。アルツハイマー型認知症やパーキンソン病
2021年5月下旬、現在展示している群れのハキリアリの女王が死亡しました。昆虫園におけるハキリアリの飼育は20年近く続いていますが、過去飼育していた群れの女王はおおむね5年以内で死亡しています。この群れは2014年に来園したので(お知らせ)、女王は少なくとも6年半以上は生きたことになります。昆虫園としてはもっとも長く生きた女王(※末尾「関連記事」参照)ですが、まだ群れに勢いがあり女王も若かったころを知るものとしては、やはり死亡してしまうのはさびしいものです。 女王がいなくなり、群れもいっしょに消滅してしまったのかというとまったくそんなことはなく、多数の働きアリたちが、現在も展示ケースの中で菌園とともに生き続けています。新たな若い群れもバックヤードで待機していますが、もうしばらくはこの群れの展示を継続していく予定です。 さて、なぜ群れがまだ続いているのかと疑問に感じる方もいるかもしれませんが
本記事は Bert Hubert による [Reverse Engineering the source code of the BioNTech/Pfizer SARS-CoV-2 Vaccine] を許可を得て日本語訳したものです。 はじめにようこそ。この記事では、バイオンテック社・ファイザー社による新型コロナウイルスの mRNA ワクチンのソースコードを、1文字ずつ解読していきます。 本記事を読みやすく、正しいものとするために時間を割いていただいた多くの方々に感謝いたします。間違いはすべて私の責任に属しますが、 bert@hubertnet.nl または @PowerDNS_Bert までお知らせいただけると幸いです。〔訳注:翻訳に関する指摘は柞刈湯葉 @yubais まで。〕 「ワクチンのソースコード」だって? ワクチンは腕に注射する液体だろ、そのソースコードって何だよ? と思われ
私が所属する大学院コースは博士の学位取得にフルペーパーが査読誌に受理されていることが必須条件のため、博士課程の学生が学位取得に必要な論文を投稿する際に、難しい雑誌にチャレンジするか、少し格は落ちるけれど早い受理が叶いそうな雑誌にするか、の二者択一を迫られます。博士課程修了を目指す学生の論文投稿先を検討していた時期に、雑誌の「格」を示す(とされてきた)論文あたりの被引用件数を基にした数値(impact factor, IF)を見ていて違和感があり、現在の状況を調べてみることにしたのが今回のテーマの始まりでした。 まず、雑誌ごとの現在の「格」をどんな数値で比較するか。これについては、今回はEigenFactor(EF)(eigenfactor.org)を使ってみることにします。ある雑誌に掲載された雑誌の、総被引用件数÷総論文数という単純な計算式で求められるIFの問題点を、複雑な計算式により算出
Research AlphaFold: Using AI for scientific discovery Published 15 January 2020 Authors Andrew Senior, John Jumper, Demis Hassabis, Pushmeet Kohli UPDATE: In July 2022, we released AlphaFold protein structure predictions for nearly all catalogued proteins known to science. Read the latest blog here. In our study published in Nature, we demonstrate how artificial intelligence research can drive and
京都大学理学研究科生物科学専攻では、京都大学の伝統であるフィールドワークに重点をおいた個体レベル以上のマクロ的研究と、ラボワークによる細胞の構造や機能、遺伝子の発現、発生、神経伝達、蛋白質の分子構造などを明らかにしようとする細胞レベル以下のミクロ的研究を統合し、地球上の多様な生物が織りなす様々な生命現象を対象とした教育と研究を推進しています(http://www.biol.sci.kyoto-u.ac.jp/)。その過程で、国内外でのフィールドワーク、ラボワークを通じて撮影された膨大な映像(動画)・画像(静止画)が蓄積されてきましたが、その多くは個々の研究室、個々の教員のもとに留まっていました。 生物科学専攻では平成29年度総長裁量経費(事業名『生物学映像・画像アーカイブの構築』)を用いて、これらを体系的に整理し一元的に管理することにより、今後の研究資料としての利便性を高めるだけでなく、イ
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く