──アサド・ハイダーといった理論家たちは、あなたの理論を応用してアメリカにおける人種的分断を考察しています。ハイダーは、あなたが考えるアイデンティティ形成とは、決して落ち着いてしまうことなく、つねに根無し草的であり続けることだと強調します。 一方、右翼陣営はより固定化したアイデンティティ観を人々に押し付けることで、自らに有利に話を進めようとしますよね? 右翼陣営は、これまで正しく異議申し立てがなされてきたはずのアイデンティティ形式をあらためて復興させようと、必死になっています。 同時に彼らは、人種的な社会正義を求める運動を、“アイデンティティ”ポリティクス(特的のアイデンティティにもとづく集団の利益を代弁して行う政治活動)であるとして矮小化したり、性的な自由を求め、性暴力に反対する運動を、単に「アイデンティティ」にのみ関わる運動であるかのように戯画化したりもします。 実のところ、こうした運
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