勝利を告げるホイッスル。「ウォーッ」。長い格闘の末つかんだ栄冠に、普段は冷静な主将のGK楢崎正剛選手(34)が、獣のような雄たけびを上げた。悲願の初優勝を果たした名古屋グランパス。胴上げで三度宙を舞った守護神は、ピッチにしゃがみこみ、顔を両手で覆った。平塚競技場(神奈川県平塚市)のスタンドに、サポーターの地鳴りのような歓声がとどろいた。 喜びを爆発させる選手たち。その輪の中で黒いGKユニフォームに身を包んだ長身がひときわ目を引く。チーム最長の在籍十二年目。低迷期も優勝にあと一歩のシーズンも、ひたむきにゴールを守り続けた。 小学四年でサッカーを始め、奈良育英高校からプロへ。ワールドカップ(W杯)を四度経験した日本の看板選手だが、最初に所属した横浜フリューゲルス(当時)が経営難から消滅したり、下あご骨折といった度重なる大けがなど、浮き沈みを乗り越えてきた。